第31話

二十九話【抗うモノ___。】
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2025/05/05 23:57 更新
縁側で魔導書を読んでいると、気づいたら朝になっていた。
がれき。
がれき。
……え、あ、日が昇ってる…、
数冊持って行って、全てを読み切るのに日が昇るほどの時間を使ってしまった。
がれき。
がれき。
……眠い…、
一人呟き、本を腹にのっけたまま仰向けになる。
うっすら月が見える…。
雪ははらはら、少しだけ振っている。
この後吹雪になることは、相当気温が下がって風が強くならない限り大丈夫だろう…。
部屋に戻ろうと体を起こそうとするが、起きてくれない。
がれき。
がれき。
いやさすがにここで寝たら死ぬ…。
そう思っても、体は動かなかった。
眠い、とにかく眠い…。
気づけば俺は目を閉じていた。
意識も徐々に薄れゆく…、
がれき。
がれき。
……寒い…、
そう一人呟き、そのまま眠りについた。













レイディアンス
レイディアンス
うぅぅぅ…、さむっ…って、
僕は縁側で寝ているがれきを見つけた。
レイディアンス
レイディアンス
……ったく、こんなところで寝てたら風邪ひくだけではすまねーぞ?
移転ゲートから布団を取り出し、彼に掛ける。
そして、縁側に座り彼の頭を撫でた。
レイディアンス
レイディアンス
……なんでだろうね…、
レイディアンス
レイディアンス
僕は基本、他人には不快感しか抱かない。
レイディアンス
レイディアンス
なのに、君の隣にいるときだけは、心地がいい。
彼の髪の毛をいじりながら眠っている彼に話しかけ続けた。
レイディアンス
レイディアンス
君からは、”あの子の魂”を感じる。
レイディアンス
レイディアンス
僕はあの子に「世界で一番嫌い」といったはず…。
レイディアンス
レイディアンス
なのに僕は、その言葉とは裏腹に…、こうやって君を求めている…。
レイディアンス
レイディアンス
……自分にすら嘘をつくなんて…、もう末期だな…、
自然と、乾いた笑いが口から漏れ出した。
………嗚呼、
レイディアンス
レイディアンス
君から、離れたくないよ…、
レイディアンス
レイディアンス
死ぬまで君の傍にいたい…。
レイディアンス
レイディアンス
君が僕の手で死ぬのを望んだように、僕の手で君を殺したい…。
レイディアンス
レイディアンス
……ねぇ…、「ミサキ」…、
僕は彼女の額に顔を近づける…、
唇が触れる瞬間_____
香坂 七尾
香坂 七尾
……なにしてんですか、
声が聞こえ振り向くと、そこには狐耳の少年がいた。
レイディアンス
レイディアンス
……君は昨日の…、
香坂 七尾
香坂 七尾
い、いま…、
香坂 七尾
香坂 七尾
が、がれきさんに…、きっききききききき…!!
動揺したような声で彼は何度も連呼する。
レイディアンス
レイディアンス
……は?
思わず、声が出た。
香坂 七尾
香坂 七尾
だ、だから…!!、そ、その……、
香坂 七尾
香坂 七尾
きっききききっき……、
すると顔を真っ赤に染め上げて彼は声を上げた。
香坂 七尾
香坂 七尾
ちゅーしようとしてたでしょ!!
レイディアンス
レイディアンス
いやそこまで言ったんならキスって言えよ。
初めて他人にツッコんだかもしれない…。
レイディアンス
レイディアンス
......君がどう受け取るかは勝手だけど、僕は決して、唇にするつもりはないからね!!額だから!!
香坂 七尾
香坂 七尾
結局キスはしようとしてるじゃないですか!!
そんな話をしていると、彼は結構真面目そうな声色で僕に言う。
香坂 七尾
香坂 七尾
……貴方、がれきさんに魔法掛けようとしましたよね。
レイディアンス
レイディアンス
……。
レイディアンス
レイディアンス
……なんでわかったの?
そう聞くと、彼は少し構えながら言う。
香坂 七尾
香坂 七尾
……さっきから貴方はがれきさんに依存している…、
香坂 七尾
香坂 七尾
だから、ありえると思っただけです…。
僕は彼の言葉を深く追求してみる。
レイディアンス
レイディアンス
……それはただの憶測?根拠も何もない妄想?
レイディアンス
レイディアンス
それとも、
レイディアンス
レイディアンス
魔法をかける時の”波を受け取った”?
香坂 七尾
香坂 七尾
!!
彼は思わず体を跳ねさせる。
僕は少し彼を煽ってみる。
レイディアンス
レイディアンス
あれ?案外君って、そう言うの読み取れる感じ?
レイディアンス
レイディアンス
僕の魔力の波を受け取れた人は賢者以外誰もいないんだよ。今この瞬間までは、
レイディアンス
レイディアンス
結構の実力者にしかわからないはず…、
彼に顔を近づけ、目をしっかり合わせて聞く。
レイディアンス
レイディアンス
ねぇ、君って一体何者?
レイディアンス
レイディアンス
別世界では、何をやっていたの?
レイディアンス
レイディアンス
もしかして、前世は”神様”だったり___?
香坂 七尾
香坂 七尾
……っ
焦ったような顔が視界に広がっている。
唾を飲み込む音が聞こえた。
……さすがに、いじめすぎちゃったかな。
僕は彼から顔を離し、再びがれきの隣に座る。
そして、縁側から雪が落ちる外を見ながら話した。
レイディアンス
レイディアンス
……そうだよ。僕はこいつに、魔法をかけようとした。
レイディアンス
レイディアンス
めっちゃ昔、魔導書に書いてあってさ。
レイディアンス
レイディアンス
『相手に自分に対しての好意を生み出す魔法』。
レイディアンス
レイディアンス
別名、『フィーリング』とも言われたりするね。
香坂 七尾
香坂 七尾
……どうしてその魔法を彼女に使おうと…?
僕は少し悩み、言った。
レイディアンス
レイディアンス
純粋で健気な子は、何かと利用できるからさ。
レイディアンス
レイディアンス
僕はただ、道具が欲しいだけだよ。
香坂 七尾
香坂 七尾
………そうですか…。
少しの間声が聞こえなくなり、足音だけが響いた。
多分何処かへ行ってくれたのだろう。
少し安心しながら息を吐き、真横にあったがれきの頭を撫でる。
香坂 七尾
香坂 七尾
嘘つきましたね。
お互い背中越しのはずなのに、その声は僕の耳にはっきり聞こえ刺さった。
レイディアンス
レイディアンス
……どうしてそう思うの?
彼は一言、ぽつりとつぶやいた。
香坂 七尾
香坂 七尾
……なんとなく…。
その答えに納得がいかなかった。
レイディアンス
レイディアンス
理由になってないじゃないか。
そう言うと、彼は小さな溜息を吐き、僕の方に振り返る。
さっきまで弱々しい彼からは想像のできない、凛々しい瞳で僕を睨む。
香坂 七尾
香坂 七尾
……失礼ながら、さっきまでの独り言を聞かせてもらいました。
香坂 七尾
香坂 七尾
貴方はがれきさんをミサキと呼び、愛おしそうな顔で寝ている彼女に話しかけていた。
香坂 七尾
香坂 七尾
……貴方がなぜそのミサキさんとがれきさんを重ねているのかは知りませんが、
香坂 七尾
香坂 七尾
それでも、貴方がミサキさんを通してがれきさんに好意を持っているのは分かります。
これは彼のただの推測かもしれない、もしくはただの妄想話かもしれない…、
けど、彼の言葉一つ一つが僕の心臓跳ねさせる。
……全て、図星だった。
僕は、彼女のことが「世界で一番嫌い」なはずなのに…、
気持ち悪い…、キモい……、キモいキモいキモいキモいキモい……、
香坂 七尾
香坂 七尾
そんな貴方が、そんな彼女に道具と称して『フィーリング』を使うわけないと___
レイディアンス
レイディアンス
もういい…!!
気づけばそう声を荒げていた。
レイディアンス
レイディアンス
……理由になってないといった僕がばかだった。君の話を聞いていると吐き気がする…。
レイディアンス
レイディアンス
今すぐここから消えてくれ。
そう言うと、彼はいつものようにおどおどしたような顔に戻り、頭を一回下げた。
そして、後ろを振り返り歩き出すが、
香坂 七尾
香坂 七尾
……最後に忠告を…、
そう言い僕に背中を向けたまま話しかけた。
レイディアンス
レイディアンス
ねぇ、僕の話聞いてた?
そう聞く僕を無視して、彼は話し出す。
香坂 七尾
香坂 七尾
……正直、僕が一番気になっているのは、「僕の手で君を殺したい」という発言です。
すると彼は再び振り返り、僕に言う。
香坂 七尾
香坂 七尾
僕はがれきさんのことが大好きです。
香坂 七尾
香坂 七尾
多分、”こちら側”は彼女のことが大好きだという人がほとんどだと思います。
レイディアンス
レイディアンス
ふーん、セキカ再来か。
一人呟く。
香坂 七尾
香坂 七尾
なのでここではあまり、そう言う欲の話はしないほうが良いかと。
そう言われ、僕は笑いを漏らす。
レイディアンス
レイディアンス
その忠告、素直に受け取っておくよ。
そう言うと、彼は振り返ろうとする。
「ちなみに……、」と僕が言うと、彼は横顔のまま、視線だけを僕に向けた。
レイディアンス
レイディアンス
君のその大好きは、どういう意味で?
そう聞くと、彼は少し顔を赤らめ、目をそらし呟いた。
香坂 七尾
香坂 七尾
……内緒です…。
レイディアンス
レイディアンス
ふーん、そ。
顔を外に向きなおすと、背後から聞こえる足音が速くなり数秒で消えた。









レイディアンス
レイディアンス
さてと、そろそろ帰ろっかな。多分みんな見送りとかしないだろうし。
立ち上がろうとすると、彼の寝顔が目に入った。
………確かに僕は彼から、ミサキしか見えてない。
正直、がれきという人物は、僕に取ったらただの遊び道具か…、
_____敵だ。
それは分かっている…。わかっているよ…。
けどやっぱり、彼が愛おしくてたまらない…。
僕が見ているのが彼女ミサキだとしても、
愛おしいのは変わらない…。
レイディアンス
レイディアンス
……がれき。
僕は再び彼の顔に自分の顔を近づける。
そして、唇と唇が重ねあおうとした途端、僕の体は硬直した。
体が動かない。
ここで彼にキスを交わしてしまったら、自分が壊れてしまう予感がした。
だめだ…、壊れたらだめだ…。
僕はクズだ。どうしようもない程クズだ。
他人をゴミのようにしか見ていない。他人に対しての好き嫌いが激しい。
いじめられっ子のような弱くて何もできない人が好き。自分に自信を持っている強い人は嫌い。
自分のためだったら平気で人を殺す。平気で人を陥れる。平気で噓をつく。平気で絶望に漬け込む。
これが、僕の隠す気のない本性だ。
けど...、なんで…、なんでだ…?
彼の前では、前までミサキに向けていた恋心が芽生える。
ミサキは、いじめられっ子だったから好きだった。
って、ずっと思っていた。
どす黒いグチャグチャした愛に、純粋な恋が奥底に隠れていた。
それに気づいてしまった…。
だめだ…、
今自分の恋心を彼にぶつけてしまったら、僕は壊れてしまう…。
彼に甘えてしまう、彼を好きになってしまう…。
それを彼が知ってしまったらどうなる…?
もし、もしも彼が僕に同情して手を差し伸べてしまったら…?
僕の事をクズだとわかっている状況でも、彼は僕の傷を治してくれた…、
けど彼が僕に優しくしてしまったら、彼は……、
だから僕は彼を好きになってはいけない…。
____あぁ、今目の前にいる彼に抱き着きたい。泣き出したい。
自分の本音を、好きっていう言葉を叫びたい。
初めてだ…、こんなに胸を打たれたのは初めてだ…。
だめだ、苦しい…、
心臓がドクドクはねる。
いっそのこと死んでしまいたい…、けど死んだら彼の顔を見ることができない。
誰かに取れらる前に僕の手で殺したい…、けど、彼の声を聞くことができなくなってしまう。
あぁ、最悪だ______。
彼の中からミサキなんて感じなければ…、
意識することはなかった、こんな苦しい思いすることなんてなかったのに…。
あぁ、愛しい…、
もう僕が誰を見ているかなんてどうでもいい。
ただただ愛しい。




でも、そうだよね。
僕がミサキを突き放した。
僕が彼女のことを思って苦しむなんて、自分勝手にも程がある。
ごめんね、ごめんね、
突き放しといて…、痛めつけといて…、殺しといていえたことじゃない。
そんなこと分かっている。
だから、だからこそ…、
愛して痛いんだ…。
僕の今の本音は、
彼のそばにいたい、
彼の頭をずっと撫でていたい…、
キスはしなくていいから、キスができそうな距離で彼を見ていたい……、
あぁ、
涙腺が緩むような感覚がした。
顔を上げ涙を瞳に戻し、無理やり笑顔を作って一人呟いた。
レイディアンス
レイディアンス
……帰りたくないなぁ…。
そして帰ろうと体を彼から話した時、
がれき。
がれき。
レイディ…さん?
彼が目を覚ました。
あぁ待って…、今目を覚まさないで…、
折角…、折角今無理やり帰ろうとしたのに…、
やめて、その瞳で僕を見ないで。
じゃないと…、僕…、
がれき。
がれき。
ど、どうして…、泣いているんですか…?
あぁ、ほら、だから言ったのに…。
折角涙をこらえて、笑顔で去ろうとしたのに…、
全部、君のせいだ…。
涙をごまかすように、僕は彼の向かって言った。



____あぁ、やっぱり……、





























『君みたいなやつが…、世界で一番嫌いだよ…。』

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