縁側で魔導書を読んでいると、気づいたら朝になっていた。
数冊持って行って、全てを読み切るのに日が昇るほどの時間を使ってしまった。
一人呟き、本を腹にのっけたまま仰向けになる。
うっすら月が見える…。
雪ははらはら、少しだけ振っている。
この後吹雪になることは、相当気温が下がって風が強くならない限り大丈夫だろう…。
部屋に戻ろうと体を起こそうとするが、起きてくれない。
そう思っても、体は動かなかった。
眠い、とにかく眠い…。
気づけば俺は目を閉じていた。
意識も徐々に薄れゆく…、
そう一人呟き、そのまま眠りについた。
僕は縁側で寝ているがれきを見つけた。
移転ゲートから布団を取り出し、彼に掛ける。
そして、縁側に座り彼の頭を撫でた。
彼の髪の毛をいじりながら眠っている彼に話しかけ続けた。
自然と、乾いた笑いが口から漏れ出した。
………嗚呼、
僕は彼女の額に顔を近づける…、
唇が触れる瞬間_____
声が聞こえ振り向くと、そこには狐耳の少年がいた。
動揺したような声で彼は何度も連呼する。
思わず、声が出た。
すると顔を真っ赤に染め上げて彼は声を上げた。
初めて他人にツッコんだかもしれない…。
そんな話をしていると、彼は結構真面目そうな声色で僕に言う。
そう聞くと、彼は少し構えながら言う。
僕は彼の言葉を深く追求してみる。
彼は思わず体を跳ねさせる。
僕は少し彼を煽ってみる。
彼に顔を近づけ、目をしっかり合わせて聞く。
焦ったような顔が視界に広がっている。
唾を飲み込む音が聞こえた。
……さすがに、いじめすぎちゃったかな。
僕は彼から顔を離し、再びがれきの隣に座る。
そして、縁側から雪が落ちる外を見ながら話した。
僕は少し悩み、言った。
少しの間声が聞こえなくなり、足音だけが響いた。
多分何処かへ行ってくれたのだろう。
少し安心しながら息を吐き、真横にあったがれきの頭を撫でる。
お互い背中越しのはずなのに、その声は僕の耳にはっきり聞こえ刺さった。
彼は一言、ぽつりとつぶやいた。
その答えに納得がいかなかった。
そう言うと、彼は小さな溜息を吐き、僕の方に振り返る。
さっきまで弱々しい彼からは想像のできない、凛々しい瞳で僕を睨む。
これは彼のただの推測かもしれない、もしくはただの妄想話かもしれない…、
けど、彼の言葉一つ一つが僕の心臓跳ねさせる。
……全て、図星だった。
僕は、彼女のことが「世界で一番嫌い」なはずなのに…、
気持ち悪い…、キモい……、キモいキモいキモいキモいキモい……、
気づけばそう声を荒げていた。
そう言うと、彼はいつものようにおどおどしたような顔に戻り、頭を一回下げた。
そして、後ろを振り返り歩き出すが、
そう言い僕に背中を向けたまま話しかけた。
そう聞く僕を無視して、彼は話し出す。
すると彼は再び振り返り、僕に言う。
一人呟く。
そう言われ、僕は笑いを漏らす。
そう言うと、彼は振り返ろうとする。
「ちなみに……、」と僕が言うと、彼は横顔のまま、視線だけを僕に向けた。
そう聞くと、彼は少し顔を赤らめ、目をそらし呟いた。
顔を外に向きなおすと、背後から聞こえる足音が速くなり数秒で消えた。
立ち上がろうとすると、彼の寝顔が目に入った。
………確かに僕は彼から、ミサキしか見えてない。
正直、がれきという人物は、僕に取ったらただの遊び道具か…、
_____敵だ。
それは分かっている…。わかっているよ…。
けどやっぱり、彼が愛おしくてたまらない…。
僕が見ているのが彼女だとしても、
愛おしいのは変わらない…。
僕は再び彼の顔に自分の顔を近づける。
そして、唇と唇が重ねあおうとした途端、僕の体は硬直した。
体が動かない。
ここで彼にキスを交わしてしまったら、自分が壊れてしまう予感がした。
だめだ…、壊れたらだめだ…。
僕はクズだ。どうしようもない程クズだ。
他人をゴミのようにしか見ていない。他人に対しての好き嫌いが激しい。
いじめられっ子のような弱くて何もできない人が好き。自分に自信を持っている強い人は嫌い。
自分のためだったら平気で人を殺す。平気で人を陥れる。平気で噓をつく。平気で絶望に漬け込む。
これが、僕の隠す気のない本性だ。
けど...、なんで…、なんでだ…?
彼の前では、前までミサキに向けていた恋心が芽生える。
ミサキは、いじめられっ子だったから好きだった。
って、ずっと思っていた。
どす黒いグチャグチャした愛に、純粋な恋が奥底に隠れていた。
それに気づいてしまった…。
だめだ…、
今自分の恋心を彼にぶつけてしまったら、僕は壊れてしまう…。
彼に甘えてしまう、彼を好きになってしまう…。
それを彼が知ってしまったらどうなる…?
もし、もしも彼が僕に同情して手を差し伸べてしまったら…?
僕の事をクズだとわかっている状況でも、彼は僕の傷を治してくれた…、
けど彼が僕に優しくしてしまったら、彼は……、
だから僕は彼を好きになってはいけない…。
____あぁ、今目の前にいる彼に抱き着きたい。泣き出したい。
自分の本音を、好きっていう言葉を叫びたい。
初めてだ…、こんなに胸を打たれたのは初めてだ…。
だめだ、苦しい…、
心臓がドクドクはねる。
いっそのこと死んでしまいたい…、けど死んだら彼の顔を見ることができない。
誰かに取れらる前に僕の手で殺したい…、けど、彼の声を聞くことができなくなってしまう。
あぁ、最悪だ______。
彼の中からミサキなんて感じなければ…、
意識することはなかった、こんな苦しい思いすることなんてなかったのに…。
あぁ、愛しい…、
もう僕が誰を見ているかなんてどうでもいい。
ただただ愛しい。
でも、そうだよね。
僕がミサキを突き放した。
僕が彼女のことを思って苦しむなんて、自分勝手にも程がある。
ごめんね、ごめんね、
突き放しといて…、痛めつけといて…、殺しといていえたことじゃない。
そんなこと分かっている。
だから、だからこそ…、
愛して痛いんだ…。
僕の今の本音は、
彼のそばにいたい、
彼の頭をずっと撫でていたい…、
キスはしなくていいから、キスができそうな距離で彼を見ていたい……、
あぁ、
涙腺が緩むような感覚がした。
顔を上げ涙を瞳に戻し、無理やり笑顔を作って一人呟いた。
そして帰ろうと体を彼から話した時、
彼が目を覚ました。
あぁ待って…、今目を覚まさないで…、
折角…、折角今無理やり帰ろうとしたのに…、
やめて、その瞳で僕を見ないで。
じゃないと…、僕…、
あぁ、ほら、だから言ったのに…。
折角涙をこらえて、笑顔で去ろうとしたのに…、
全部、君のせいだ…。
涙をごまかすように、僕は彼の向かって言った。
____あぁ、やっぱり……、

『君みたいなやつが…、世界で一番嫌いだよ…。』



















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。