第16話

お母さん、お父さん
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2021/11/27 12:59
私は、いらない子供なのかもしれない。
そう、どこかで思ってた。
だって、うっすらと覚えてる。
産まなきゃ良かったって言われたこと。
たぶん、5歳くらいかな……。
あんまり記憶力は良くないから。
小さい時の事は特に。
そこから、お母さんに話かけるのが怖くなって、必要最低限しか話さなくなった。
今16歳だから、11年間そんな感じに生活してきた。
私が中学生の時、お父さんがお母さんと話してみたらどうだ?って言って、話し合いがされた。
謝られた。「ごめんなさい」って。お母さん泣いてた。
私は、何も言えなかった。今更?今更そんなこと言ったって、これから、どう接していけばいいの?
その謝罪は受け入れた。
少しずつだけど、お母さんと話すようになった。
今日学校で何があったかとか、お母さんも知ってる友達が、こうやってお母さんと話すようになってくれて、喜んでいたこととか、そんな話。次の話し合いは、私が高校に入ってからだって。
だけど、それは叶わなくなった。
異世界に、飛ばされたから。
ここは楽しい。楽しすぎて、帰りたくない。
だけどそれは、叶わなくなった。
だって、私が異世界に飛ばされてしまったから。
やっと話すようになったお母さんとお父さんに心配かけちゃう。
小さい頃から友達のあの子も。
どうやったら帰れる?
だけどどこかで、帰りたくないと、思ってしまう。
それ程、ここが楽しかったから。
でも、でも……!私は、この世界にいたいけどいたくない。
帰りたい。帰りたくない。
その想いが、グルグル、グルグル、回ってる。
回って、回ってぐちゃぐちゃで。
グリムが、みんなが、優しくて、泣いちゃった。
でも帰らなきゃ。
全部忘れてしまうらしいけど。
大丈夫。思い出させてくれるから。みんながくれるプレゼントで。
「誰から貰ったのか」。それがキーワード。
全部思い出したら、プレゼントのひとつをを媒体に、闇の鏡と繋がる。
便利。
どの寮に行きたいかは、媒体が寮への鍵なんだって。
便利。
心配かけちゃったなあの子に。お母さんとお父さんに。
帰ろう。帰りたい。でも、忘れたくない。大丈夫、思い出せる。
帰るよ。ちゃんと。2人のところに。
だから、もうちょっとだけ、まってて?

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