朝。
橘と佐野は一緒に学校へ向かう。
橘
「……」
橘はゆっくり歩いている。
かなりゆっくり。
そして——
歩き方がちょっと変。
佐野は横でそれを見ている。
佐野
「……」
にやにや。
橘
「……なに」
佐野
「いや」
佐野
「歩き方」
橘
「言うな」
佐野
「昨日の——」
橘
「黙って」
橘は小声で言う。
橘
「ほんと黙って」
佐野
「はいはい」
でも佐野は楽しそう。
学校到着。
教室に入る。
クラスメイトA
「おはよー」
橘
「おはよ」
橘は席に向かう。
でも。
やっぱり歩き方が変。
クラスメイトB
「……」
クラスメイトB
「橘」
橘
「ん?」
クラスメイトB
「どうしたのその歩き方」
橘
「……え?」
クラスメイトB
「足痛いの?」
橘
「ち、違う」
クラスメイトC
「確かに変じゃない?」
橘
「変じゃない」
クラスメイトA
「いや変」
橘
「変じゃないって」
橘は必死。
橘
「ちょっと筋肉痛なだけ」
クラスメイトB
「どこの筋肉?」
橘
「……」
橘
「腰」
クラスメイト
「え?」
クラスメイトA
「なにしたの?」
橘
「……」
橘
「運動」
クラスメイトB
「なに運動?」
橘
「……」
橘
「ストレッチ」
クラスメイト
「怪しい」
橘
「怪しくない」
そのとき——
後ろ。
佐野。
ずっと見てる。
そして。
にやにや。
橘
「……」
橘は振り返る。
橘
「はやとくん」
佐野
「ん?」
橘
「笑ってるでしょ」
佐野
「笑ってない」
でも明らかに笑ってる。
橘
「昨日のこと言ったらほんとに怒る」
佐野
「言わないよ」
佐野は小さく言う。
佐野
「でも」
橘
「なに」
佐野
「昨日かわいかった」
橘
「……っ」
橘
「黙って」
橘の顔がまた赤くなる。
クラスメイトC
「橘顔赤くない?」
橘
「赤くない」
クラスメイトA
「絶対なんかある」
橘
「ない」
佐野
「……」
またにやにや。
橘
「……」
橘
「ほんと最低」












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!