莉犬がいなくなって、数日。
やっぱりこいつはいじめてきた。
そして、仲間が増えている。
痛いなー、と思いつつ、これはまだマシだと思う。
前に戻っただけだし。
廊下に誰かが通った。
さとみと呼ばれた男子生徒は走ってどこかへ行ってしまった。
…こんなことをずっとされていると、みんな醜く見える。
同じクラスのやつも。
みんな気づいてないふり。
さっきの人だって。
…みんな化け物。
そうだ。
だからあんな酷いことができるんだ。
それは僕も一緒か…。
莉犬が追い詰められていたなんて知らなかった。
…いや、どこかではわかっていたのかもしれない。
僕がまたいじめられるのが怖かったのか。
家は誰もいない。
僕の両親は仕事が忙しいという。
…でもたぶんこれは嘘だ。
この前学校帰りにお母さんが知らない人と歩いているのを見たから。
たぶん、不倫。
お父さんも同じようなところを見た。
万が一離婚とかになった場合、僕はどっちにもついていきたくない。
だから黙っていることにした。
僕は誰からも愛されていない気がして。
学校には友達もいない。
まあ、人はいつかはタヒぬ。
それなら、これからはタヒぬことを考えて生きよう。
今までは未来はこうしたい、だったけど。
“どうせ終わるんだから”
いつか終わる命だと気付いたからか、少し気持ちが楽になった。
それでも、今の事を考えるとやっぱり心の雨が止まない。
もういっそのことこの雨に飲まれて、溺れてしまいたい。
それで完全に堕ちれば、少しは楽になるだろうか。
それか、莉犬のように庇って…この雨に傘を差し出してくれる人がいれば…
ピンポーン…
不意に玄関のインターホンが鳴った。
今日は荷物を頼んだりしていないはず。
たしかこの人、さっきの…
彼は謝り出した。
この人は何か違うかもしれない。
街も人も歪み出した
化け物だと気付いたんだ
欲動に巣食った愚かさも
全てがこの目に映る
シアトリカルに手の上で
誰も彼も踊らされる
生まれた意味だって知らぬまま
形骸化した夢は錆びついてしまった
「愛をください」
きっとだれもがそう願った
「愛をください」
そっと震えた手を取って
「愛をください」
心を抉る 醜いくらいに美しい愛を
「こんな世界」と嘆くだれかの
生きる理由になれるでしょうか
いつか終わると気付いた日から
死へと秒を読む心臓だ
ねえ このまま雨に溺れて
藍に溶けたって構えわないから
どうかどうかまたあの日のように
傘を差し出し笑ってみせてよ












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。