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第56話

第五章50話「揃わない背中」
50
2026/02/23 13:24 更新
問題 カナの能力技で自然秩序支配は作中で存在する?
前回のクイズの答え 存在する


パト:side




二日目が、始まった。

世界大会──
チーム戦、バトルロワイヤル。

昨日とは、空気が全く違う。
観客の熱も、参加者の視線も、
すべてが一段階鋭くなっていた。
パト
仲間と協力しながらも
理想のリーダーを……
パト
(昨日のままじゃダメだ)
パト
(俺がチームを変える)

昨日のことを考えるパトに、
その思考が自然と体の芯に落ちていく。
カナ
……気をつけてね、パト

隣でカナが小さく言う。
声は抑えているが、その思いは十分伝わった。
パト
……! 俺は大丈夫。
カナも気をつけてよ
 
ファルドラ
視線が強いね、気迫ってやつかな?


2人の視線の先で、
ファルドラが軽く肩をすくめた。

余裕を崩さない笑みを浮かべる敵に
2人は警戒を緩めない。
パト
……
ファルドラ
はぁ、戦うつもりないって言ってるのに
ファルドラ
予選の時も攻撃はしなかったじゃん
パト
……!

──予選の時……?
どこかでファルドラと出会ったか……?
カナ
さっきも言ってたけど、
私達今回会うの初めてじゃないの?
カナ
それともパトが会ったの?
パト
いや、俺も記憶にないよ?

──そもそも何で予選の時、
皆んなバラバラになったんだっけ。



俺は、一回過去の出来事を頭の中で振り返る。
その時、思い当たる出来事が頭によぎった。
パト
まさかっ!
パト
お前がバラバラにした元凶かっ!!!
カナ
……!
ファルドラ
まぁ、そうだね
ファルドラ
自分の意思って訳じゃないけど、
やったのは僕さ
パト
くっ……!

──あの人数をバラバラになんて。
相当な能力特化か、使い方が上手いのか。

パトは集中した目つきで、一歩前に出る。
パト
カナ、無理はしなくていい
パト
──俺が前に出る

それは命令でも、忠告でもなかった。

──配慮だ。

少なくとも、パト自身はそう思っている。



カナ
……うん

カナは即答しなかった。
一拍遅れて、短く頷く。

その瞬間、彼女は"読んでしまっていた"。
カナ
(迷ってる……、それに焦ってる)

でも、それを口に出すことはしなかった。
カナ
(一緒にやるつもり……なんだよね)

カナは、パトの背中を寂しげに見る。

それは・・・




──"並ぶ"つもりは、一切ないものだった。





戦闘が始まる。

パト
……
ファルドラ
(来る)



軽い踏み込みから繰り出されるダッシュ。

それだけでパトは
お互いの距離を詰め、腕を振るう。


ガッ!
パト
……?

確かに当たったはずの一撃が浅い。
パト
(防がれた?)
パト
っ……!

すぐに追撃。
今度は確実に届く。

腕に衝撃が走り、
ファルドラの体が僅かに後ろに流れた。
ファルドラ
(っ……この馬鹿力がっ!)
パト
(今度は通った)
パト
ならっ!
 
パト(神波第一天放【神静】)
神波第一天波【神静】


──スピードで畳み掛けるっ!!
ファルドラ
っ……!

パトの攻撃が、
一つ一つファルドラの動きを制限していく。
カナ
(私もっ!)

そんな肉弾戦の中に金髪の少女も参加し、
戦闘の密度をまたいっそう高めていった。

パト(神波第一天放【神静】)
……っ
ファルドラ
……っ!
カナ
っ……くっ……!


それぞれがオーラを使った物理攻撃を繰り出す。
時に防御、反射などを上手く使いながら・・・



ファルドラ
……

ファルドラが目を細める。
少女の重心が、僅かに前へ寄っているのを感じた。

そのおかげか少女の踏み込みは速い。
だが、ほんの一拍だけ、毎回遅れる。
それでも前へ来る、何回も、何回も。
苦しみを無視して。
ファルドラ
(視線が常にパトを追っている)

ファルドラ
(これは"合わせる"為の動きじゃない)
ファルドラ
("追いつく"ためだ)

"置いていかれたくない"。
その感情が、少女の身体を急かしていたのだ。
ファルドラ
(だが、その感情こそ少し揺らせば)
ファルドラ
(その歩幅は一番崩れやすくなる)


そして、攻防が始まって数分経った後、
状況が少し動き出す。

パト(神波第一天放【神静】)
(ジリ貧だな、賭けに出てみるか?)

パトが一歩踏み込み、拳を走らせる。
確かな手ごたえが腕に返った。
パト(神波第一天放【神静】)
(よし、カナ! 今だ!)
カナ
……!? はぁっ!

だが、カナの追撃がワンテンポ遅れる。

その攻撃は対象に
当たることはなく、空を切った。
ファルドラ
(っ、……やっぱり追撃はまだっ)

カナ
(……今の、絶対に……いけた)

カナ自身がそう思った瞬間、
パトの背中が、ほんの一瞬だけ遠くなる。
カナ
まずい
カナ
(私、この戦いについていけてない)
カナ
(それに、共闘だって……)

カナは横目にパトを見る。
パト(神波第一天放【神静】)
ふぅ……、ふっ……

その様子は、今のカナのミスなど
気にもしてない表情で集中していた。

しかし、その些細な仕草は、カナ本人にとって
様々な事実を思い知ることとなる。
カナ
……っ、
カナ
(これじゃ、仲間に貢献できてない)
カナ
(なんなら……)


カナ
("守られてる"……!)
カナ
(そんなの一番、嫌なのに!)
〜回想〜



パト
メリア〜、今日の訓練内容は?
メリア
はい、なら今から見せる技術を
出来るようになって下さい
メリア
今日は知識とかも使うので、
頭をフル回転させて頑張りましょう!

数分後・・・
カナ
こんな感じかな?
ハク
え、カナちゃんもう分かったの?
四季雪花
頭パンクする〜
パト
さすがにまだ出来てないんじゃ……
メリア
いいですね、カナ
完璧ですよ!
ハク
……!



カナ
私は物覚えが凄く早かった
カナ
周りが出来ないことでも、
自分は挑戦したらすぐにできる
カナ
あの時は"本物の天才"とか、
そんなことまで思えちゃうほどに
カナ
けど、ある日を境に状況が変わった






ネル
今日からメリアと同じ、
コーチとしてやらしてもらうネルだ
ネル
私の技術は少し難しいからな
置いていかれないように注意するんだな
ソフィア
しっかりした訓練、
私は今日からだな〜
カナ
何かあったら手伝うよ、
ソフィアちゃん!
ソフィア
ありがと〜! カナちゃん!

数分後・・・
ソフィア
……ん、出来た!
ネル
ソフィアはさすがだな
ネル
だが、他は「まだ」か
 
カナ
(今回の……難しいな)
カナ
(今まですぐに出来たのに……)




カナ
この日から私は今までのように
上手くいく事が少なくなった
カナ
多分、理由は、ソフィアという
天才の中でも上澄みの存在が
私の前に現れたこと……
カナ
そして、技術の難易度が
跳ね上がったことだ
 
カナ
──もちろんそれだけならよかった
カナ
だが、この日からみんな
何かしらの部分で
みるみるうちに成長していった
パト
 
カナ
パトはオーラ技術が飛躍的に向上
メリア
 
カナ
メリアは止まっていた全知を自力で
埋め合わせ、以前より賢くなった
四季雪花
 
カナ
雪花は戦闘面のセンスが開花した
ハク
 
カナ
そしてハクは……





カナ
はぁ……
カナ
(今日の訓練もダメだったな)
 
カナ
(ん!? 何か音が聞こえる)
カナ
(この音は……こっちからだ)


カナはドアノブを捻り、奥に押した。
カナ
ぇ……!
ハク
っ……!? カナちゃん!?
カナ
ハク!? 何してるの!?
カナ
もうこんな遅い時間だし、
みんなもう寝る準備してるんだよ!?
ハク
うん、分かってる
ハク
けど、私は他の人に比べて、
成長出来てないし、模擬戦ですら
誰にも勝てない"軟弱者"なんだ
ハク
だから、
人よりも何倍も努力しないと
皆と同じ立場になれないんだよっ!!
カナ
……!




カナ
ハクの意志は固かった
カナ
そして、ハクは
私には無いものを持っていた
カナ
──努力出来る才能、そう……
 
カナ
ハクは、『努力の天才』だった

カナ
この日を境に私はより一層、
劣等感を内に秘めるようになった
カナ
ここからの私は天才なんて
自分を思う事すらなくなり、
カナ
何の取り柄もない
『中途半端な天才』だと、
感じるようになってしまっていた
カナ
(私は足手纏いになりたくない)
カナ
(たとえ、実力が"中途半端"でも)
 
カナ
(私は自分だけの取り柄を見つけたい)


カナがそう考えていた時、
相手が突如、手を何もない空間に突き出してきた。
ファルドラ
そろそろ反撃といこうかな

ファルドラはそう言い、
小さなオーラ弾を打ち込む。

ホントに小さな、ごく"普通"のオーラ弾を。
パト(神波第一天放【神静】)
(小さいな、濃縮してるのか?)


パトは過去、自分がしてた戦略を
思い返しながら、反撃の準備を行う。


パト(神波第一天放【神静】)
(一応、かき消しておくのがベストか)
パト(神波第一天放【神静】)
自然法「雷神丸」


バチッバチッ。



パトの放った能力は、音を鳴らしながら突き進む。
その力量は目の前のオーラ弾に対して、
過剰過ぎる程のものであった。



しかし・・・



パト(神波第一天放【神静】)
……!?


その能力は小さなオーラ弾によって、
じわじわと押し返されていった。

パト(神波第一天放【神静】)
足りないっ!? 何でっ!
カナ
自然支配「ニュークリアスレーザー」


そんな様子を見たカナは、
パトの後ろからさらに追撃する。

大きな衝撃波が地面を抉った。
カナ
(私だってっ! やれる!)
パト(神波第一天放【神静】)
(これならっ!)


そう思った瞬間。

光の隙間から見えるファルドラが笑った。
パト(神波第一天放【神静】)
……っ!
カナ
……っ嘘!

2人の能力の力が、一気に押し返される。

そして・・・



パト(神波第一天放【神静】)
あ゛……ッ!
カナ
が、ぁ……!




2人の身体は大きく吹き飛ばされた。





ファルドラ
あーあ
ファルドラ
常識なんて僕の前では
全く変わってしまうって、
予想出来なかったのか?
 
ファルドラ
(虚構はフィクション)
ファルドラ
(嘘を真実に変える強力な能力だ)
ファルドラ
だが……弱点は即座に虚構は貼れない、
だから、【先に貼る】
ファルドラ
展開を予想し、手札のカードを作り、
その場面になれば使う
ファルドラ
さっきのも虚構の効果
 
ファルドラ
【強い攻撃程弱く、弱い攻撃程強い】
ファルドラ
カウンター系の虚構
 
ファルドラ
天野江隊長の【矛盾】を見て、
貼ってたけど強力だな、これ
ファルドラ
……!

霧の向こうから、
動きの揃ってない二つの影が戻ってくる。

ファルドラは口元の血を拭いながら、
それを眺めていた。
ファルドラ
──おかえり!
腕と脚を怪我したのかな?
そこ重要な部分だけど、大丈夫?

パトは右腕を不自然に大きく下げ、
カナは身体の重心が傾いている。

2人の表情はとても暗かった。
パト
まだ、……やれる

この発言は強がりではない、事実だ。
そのことを、ここにいる3人は理解している。

ファルドラは一歩、距離を詰めた。
ファルドラ
(軽傷、だが、均衡は崩れている)
ファルドラ
(事実、パトの髪色が戻ってる)
ファルドラ
(痛みによって制御出来なかったのか)

ファルドラはパトの様子を確認すると、
隣にいるもう1人の状況や表情を凝視する。
ファルドラ
……!
ファルドラ
(いいね、……焦ってる)

その視界に映るのは、
とても静かな少女の表情。

口角も動かず、呼吸も表に出さない。

対面してて違和感が残る顔立ちだった。
ファルドラ
(そろそろ、崩す頃合いかな)







ファルドラの視線がそのままカナへと向けられる。
カナ
……!
ファルドラ
君は、彼より半歩前に出ようと必死だね

カナの足先が止まる。
ファルドラ
だけど、ほんの少しで遅れる

言い逃れはできない。
事実だから。

パトが低く言う。
パト
やめろ

ファルドラは無視しながら、
意地悪な笑みを含み、話を進める。
ファルドラ
君は劣等感を感じてる
ファルドラ
『置いていかれたくない』ってさ

カナの拳が、強く握られる。
カナ
っ……!

図星。

そして、視線はパトへ。
ファルドラ
君がリーダー?
パト
……そうだ
ファルドラ
ふぅん、そっか




ファルドラ
──仲間が可哀想だね

空気が凍る。

そして、パトの呼吸が、一瞬止まった。
ファルドラ
君が"正しい判断"をするたびに、
ファルドラ
彼女は自分が足りないと感じる

カナの視線が揺れ、
パトの胸は強く締めつけられた。
パト
(そんなつもりじゃ)
パト
(俺はカナを守るために)
パト
(負担を背負わないようにって)

パトは視線をカナに移す。
パト
はっ……!

しかし、パトの瞳に映る仲間は
周りから見ても分かるような違和感があった。
パト
(それなのに何で……、何で!)
パト
(……あんな顔をさせたんだ)

カナは、
いつも通りの表情で振る舞おうとしてる。

でも、分かる。


──さっきより、距離がある。
パト
(俺の、せい……?)

そんな思いが頭の中をぐるぐると回る。


ファルドラ
君は強いさ
ファルドラ
だけど、独りで完成してる
ファルドラ
まぁ、"彼女を犠牲にして"だけどね
カナ
はっ……!

カナが叫ぶ。
カナ
──違うっ!!

だが、その声には僅かな揺れが混ざっていた。
ファルドラ
さぁ、どうする? リーダー
ファルドラ
背負うか。 預けるか



ファルドラは選択を突きつける。
パト
っ…………


この空間は静寂に包まれた。
パトは、何も言えなかった。





り。
り。
ホントにお久しぶりです
り。
り。
めちゃくちゃ期間が空きましたが、
やっと用事が済んだので
少しはマシになると思います
り。
り。
(やる気が有れば、ね)
り。
り。
文量も多くなって、ごめんなさい🙏
り。
り。
めちゃくちゃオーバーしてしまいました
り。
り。
それじゃあクイズしますね!

アンケート

カナの専属神の特性は【主の??】か
神経
12%
肉体
0%
88%
0%
投票数: 17票
り。
り。
ここまでの長い文章読んでくれた人、
ホントにありがとうございました!
 
り。
り。
あと、全く関係ないのですが、
ネルのことを「ネルネル」って
言う人って誰かいませんでしたっけ?
り。
り。
分かる人教えてくれませんか?
ずっとモヤモヤしてるんです!
り。
り。
よろしければお願いします……!
 
り。
り。
では、また次の機会に〜




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