――数年前。
「……終わりなわけがない」
そう、小さく呟く少女がいた。
少女の眼前には怪物。常人なら恐怖で何もできない。
しかし、少女は立ち上がり、こう叫んだ。
否、救いを求めた。
「ここで終わるのは…正しくない!!」
彼女の『正義』に。
彼女の正義は、彼女を裏切ることはなく。
彼女の正義は。
彼女の正義は、
『魔法』になった。
――現在。
「ひっ……!あ、あぶないよ…!!」
「危なくても……っ!!僕がっ…君を、守る……!!」
と。
化け物を前に笑い話になりかねないラブコメの如きやり取りをする、まだ幼い男女。そして化け物が腕を振り下ろし、いざ息の根を止めんとし――
「その心意気は正しい――」
「へっ…?」
「ただし、君まで死ぬのは」
「……魔法少女」
「終わるのは…正しくない」
「だから」
「だから、私が救う――【鉄槌】!」
――轟音とともにばらばらと崩れ落ちた。
化け物だった破片はそのまま、少女の降り立つ風により遥か彼方へと飛ばされていく。
化け物がいた場所に悠然と降り立ったのは白い髪をそのままにおろし、片目にモノクルをかけた魔法少女。その手には異質に思えるとても巨大なハンマーが握られている。
「怪我はないか?」
「っ、うん…!」
「ありがとう、エヴィル!」
「礼はいい、私は私の『正義』を遂行しただけだ」
そう、素っ気なく答え踵を返す『正義』の魔法少女、エヴィル。その顔は鉄壁のように無表情で保たれている。しかしこの場にオーディムが居たなら、彼女の些細な表情の緩みに気づき茶々を入れるだろうが、生憎ここにエヴィルの表情の変化に気づけるものは居ない。
※イマジナリーオーディム
イマジナリーも喧しい、とそんな想像を頭を振って振り払うエヴィル。
「…次があるから失礼する」
「あっ…あの、エヴィル…」
「なんだ?手短に頼む」
「うん…!」
「「化け物から守ってくれてありがとう!」」
と、声をそろえて頭を下げる幼い少年少女。それに少し驚いたような顔をしてから――
「…どういたしまして、だな」
薄らと笑みを浮かべてそう返すエヴィル。
そして今度こそその綺麗な羽根を使い飛び去っていく。
彼女の『正義』を遂行するために。
次回更新は3/1です。













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。