ちょっと進むたびにニセ札偽装組織の戦闘員が出てくる(そしてカカオに一方的に倒される)ので、救出班一行の歩みは遅い。
人質たちは体を震わせる。
それも当然だ。今まで生きてきて、命の危険がある場所に入ったことなんて一回もないのだから。
暴論を展開するジャスパー。
やっと見えてきた階段を、カカオを先頭に細心の注意を払って登る。
カカオの足が、地上階の床を踏む。
油断なく拳銃を構え、いつでも抜けるよう手榴弾のピンを口に咥え、その優れた聴覚を研ぎ澄ませる。
段々と組織のボスの声が近づいてくる。
靴音の中にズリズリと衣擦れが聞こえるので、足がもつれて転んだりしているのだろう。
ボスの声から考えて、何者かに追われているようだが……。
喚くボスの背後から、カツ、コツ、カツ、……と靴音が響く。
それを聞いた彼は顔を真っ青にし、ジャスパーを突き飛ばして逃げようとした。
ボスの過剰とも取れる怯えっぷりに、レリエルたち人質ーズは訝しい顔をする。
そりゃ確かに、誰だって死ぬのは怖いし嫌だろうが、仮にも自分たちを拐った裏社会のニセ札偽装組織のトップが、こんなに情けない男だったとは……。
感想を言い合う人質たちに呆れるジャスパー。
拷問好きサイコパスに板挟みにされたボスは、恐怖のあまり白目を剥いて失神した。
グレイスとアスランが、エンドに指された方向を見る。
言われてみれば、確かにそちらにチラホラと人が倒れてうめき声をあげているのが見えた。
倒れたニセ札偽装組織の面々を跨ぎ越え、その奥の部屋に足を踏み入れる。
そこには倒した敵を丘のように積み上げ、その上に腰掛けるエセリンダの姿があった。
その横で呆れた顔のロドルフォは、途中で拾って武器にしたのだろう鉄パイプを振り回したりして弄んでいる。
どうやら半グレ寄せ集め程度の実力の組織は、彼らの敵にもならないらしい。
思わず写真を撮るエイミー。その音で気づいたらしく、二人がバッと入り口を見る。
すごいスピード(最早タックルの勢い)で成人男性・女性の二人に抱きつかれ、アスランは危うく吹っ飛ばされかける。
『長姉である』というプライドだけで耐え、何とか尻もちをつくだけで済んだ。
ドン引きエイミー。
軽々と姉二人を背負うロドルフォの怪力に、エイミーは感心する。
……ん?姉二人?
ニセ札偽造組織のメンバーたちが死屍累々と倒れた一階部分から出ると、そこには行きに乗ってきた軍用ジープが。
思わずツッコまずにいられないジャスパー。
そういえばコイツはツッコミ気質だったよなぁ、とエイミーは思い出す。
この件で一番被害を被っているのは、レリエルではなかろうか。その場にいる全員の心の声が一致した。
当のレリエルは、意外にも「久々のシャバだ~」と平然としている。
微かに警察のサイレンが聴こえてくる。
指でマルを作ってお金のジェスチャーをするジャスパー。
そうこうしている間にも、パトカーのサイレンはどんどん近づいてくる。
カカオは慌ててガーナを助手席に放り込み(ガーナからは文句轟々だった)、自分は運転席に飛び乗った。
カーター姉弟とリックたちも後部座席に乗り込んだ後、窓から手を振るエンド。
ジープに乗って撤収していく彼らを見ながら、レリエルは小さく呟く。
険しい顔でパトカーから降りてくる屈強な警官を横目に見ながら、ジャスパーは軽く笑った。
すごいスピード(最早タックルの勢い)で成人男性・女性の二人に抱きつかry。
そこへ更に、エセリンダとロドルフォの二人も加わり、ちょっとした人間団子が完成した。
同じ頃。
カカオとガーナは、ハッキングや透明化といった調査能力を持つ兄姉に連絡していた。
彼女らにかかれば人質の居場所を突き止めることなど、お茶の子さいさいである。早速特定が終了し、ガーナのスマホに一件の住所が送られてきた。
という訳で、カカオたちは今まさに人質が監禁された建物に侵入し、組織メンバーを縛り上げたところである。
レリエルの姉──ラミエルの記憶からスムーズに残りの人質を救出、匿名で警察を呼んでその場を後にする。
何はともあれ、これで世界を騒がせた『HQCM事件』は、ほぼ解決した。
ほぼ、と言ったのは、まだ事件を終わらせる訳にいかないからである。
グダグダ……












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。