あまりにも直球すぎる"私に相談しなさい"アピールに隠すつもりはないのかと思わず顔を歪めた。
もしかしたら、回りくどい言い方をして俺に考える労力を使わせてはいけないという配慮だったのかもしれないが、どちらにせよ直球すぎる。
そういう"貴方たち子どもは大人を頼ってもいいんですよ"みたいなのが一番イラッとくる。
俺から言わせてみれば大人だって大して変わらない。
我慢も周りを見ることも、ろくにできない大人なんて嫌というほど見てきた。
教師だって、立場的に俺を心配するだけで全く関係のない、例えば横を通りすがった人間には無関心なんだろう。
結局未熟な子どものままだ。
二十歳になって成人して働こうと、中身が子どものままの人間を俺は大人とは思わない。
「そうじゃないよ。大樹さんの行動を改めてほしいわけじゃないの」
切り捨てるような、突き放す口調を意識した。
罪悪感がないわけじゃないけれど、これで諦めてもらえるなら安いものだ。
一礼して鞄を肩にかけながら階段を下る。
ちょうど肩も蹴られていて少し傷んだが、このくらい平気だと自分に言い聞かせた。
「というわけで、カウンセリングを始めます」
翌日、六時限目が終わったと思ったら放送で職員室まで呼び出され、来てみたらかの教師が待ち伏せ。
俺は捕まえられて強制的に心の教室と呼ばれる部屋の椅子に座らせられた。
「嫌ではなく、これは校長先生直々の命令です。私にとって校長先生は上司であり、上司の命令は絶対なのです」
教師にとって一番関わりの深い生徒は何でもネットに上げたがる若者であり、ネット炎上は背中にピッタリとくっついているようなものだ。
油断したら一瞬で学校の信用度は急降下。
最悪、やった側の教師は職を失うことになる。
教師とはプラックで生徒に嫌われれば気を抜いた瞬間、蹴落とされる職……だとしたら恐ろしい。
「大樹さん、そんなことできるの?」
「ええ。私は大樹さんはそういうことをしない人だと思うけど」
俺が受けているのは身体的暴力が主で一応治っていることを目視で確認でき、病院にかかれば治せるものが大抵。
だが、精神的暴力は違う。
治っているか目視でわからないし、本人にしか治せない。
それを俺は知っているから先生に暴力を振るおうとは思わない。
「大樹さん。話せることを少しずつでいいの。どうか私に教えてほしい」
冗談っぽく話していた先生は瞬時に切り替え、俺が口を開くまで目を離さなかった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。