❤️🐤side
足音響く廊下
背には玄関から聞こえる楽しそうな声が
刺すような感覚を覚える
まあ、もう慣れてしまったけれど
白杖から伝わる情報を頼りに
職員室の扉の前に行く
少し暖かくて低い音、
これは先生の声だ
俺は先生に挨拶をして、
先生に先導してもらいながら特別支援学級の教室へと
向かった
老朽化が進み、改築すればいいのにと思うほどの
音を立てながら、開くドア
その先からは少しの光と、友達の声
俺はなつくんの話を聞き流しながら
手探りで椅子を探し
荷物を横に置いて
ゆっくりと椅子に腰をかけた
なつくんは、ADHDという病気らしい
それでちょっとだけ会話のキャッチボールが難しいけど
俺は話すのが苦手だから
なつくんが一方的に話しかけてくれた方が
嬉しいしありがたいなと思っている
だから基本的に俺たちの会話は
なつくんがキャッチボールを一方的に投げかけているように
第三者からは見えてしまうことがあるけれど
俺が納得しているから、他の人が
俺たちの会話に対して口を出す時は
なるべく気にしないで欲しいなって思う
まあ、大抵俺たちの会話を注意する人は
自分が気持ちよくなりたい偽善者なんだろうけど
俺は荷物の中に入った点字の本を
取り出し
本の上部を撫で
手探りで栞を探す
なつくんは俺の手を掴み
栞に触れさせる
声がした方を向いて言葉を伝える
多分、なつくんは笑顔を浮かべた
りうらは、その素敵な笑顔を見ることができない
りうらは、そんなこともできない
なにか、俺は悪いことをしたのだろうか
胸が苦しくなって拳を握りしめる
手に暖かいものが触れて
俺の手を包み込む
その瞬間、初めて それ がなつくんの手だと
認識する
別に、俺は見た目なんて気にしないのに
捻くれた思考を持つ俺は
その心配を上手く噛み砕いて飲み込むことは出来なかった
『多分悪いことをした俺』にとって、
優しさは、きっと眩しすぎるから













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。