七不思議が1番、トイレの花子さんが消滅し、凪呂、翔憂、廻斗の3人は虚空を鋭く見つめた。
想楽と鴎はすがるような気持ちで返事を待つ。
花子さんが消滅したことで忘れていたが、操られていたヒナたちは…?と思いハッと視線を向ける。
気絶しているようだが、苦しんではいない。
大した怪我もしていなかったので、ほっと一息つく。
観念したように呟いてから、姿を現した。
凪呂たちが驚くのも無理はない。
洸の姿はあのときと__、小学6年生のときのままだったからだ。
感情が伝わらない、機械のような声ではなく、少し気まずそうな、人間らしい声で話し始める。
そんな会話をしていると、バッと洸が頭を思い切り下げた。
突然のことに5人が言葉を失っていると、洸が頭を下げたまま、ぽつりぽつりと語り始める。
さっき聞いたことを思い出したように、想楽が声をあげた。
こくっと頷いてから、やっと顔をあげた。
怒りで顔を歪めながら、言葉を並べていった。
『“生”を代償にお前は記憶を取り戻した』
そう煙が話したのだと言う。
1人で素直な気持ちを語る洸の背中はとても小さく見えた。
そして、震えているように見えた。
そんな洸の背中に、翔憂は手を添える。
廻斗も、凪呂も。
想楽も鴎も。
だが、洸はそれを拒んだ。
距離を取る。
想楽と鴎には凪呂や翔憂、廻斗も洸と同じくらいの背丈に見えた。
忘れるわけはないが、思い出すのは辛いという感情が渦巻き、自暴自棄になってしまったのだろう。
洸は涙を溢した。
それを合図に洸の姿が薄れていく。
完全に消えてしまう前に凪呂が抱きついた。
洸は驚くが、笑みを浮かべてぎゅっと抱きしめ返す。
翔憂も廻斗も洸を覆うように抱きしめた。
ニコニコと見守る想楽と鴎を洸は見て、『おいで』と言うように笑った。
2人は少し躊躇ったが、近づいていく。
完全に消えてしまってから、5人で抱き合った。
もう、大切な人を失わないように_____。


















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。