わたしの今の視界はフィルターをかけなくてもレトロだ。
ガビガビとした音、圧迫感のある喉。
えへ、えへへ…フラフラしすぎて…っ!
わたしは近くのベンチに寝っ転がった。
ほんとは〜200錠一気飲み〜をしたかったんだけど、できなくて100錠にしてみた。
今までするときは30とか60だったから…
視界がレトロすぎて、窮策していくことにも気づかないわたしの脳を誰か殴ってくれ。
あたりは暗闇なのに、なにか見える気がした。
何も見えない、
何も見えていない
はずなのに、
世界が広く感じる
不意に、ぬくもりの残る布を掴んだ。
帰り道、またあの公園に差し掛かった。
誰であろうと、
見たくはないだろうこんな姿。
ベンチに座るその子。
だらしなく開けたスカート。
プリーツの形は跡形もなく。
朝はしっかりとしまっていた第1ボタンは空いていて、しなやかな鎖骨が覗いていた。
そして細い手には、大量の薬が入った瓶。
彼女はその瓶の蓋を開けた。
俺は走った。
気づけばリュックは落としてしまっていて、
でもそんなの気にする余裕もなく、
瓶を取り上げると、勢いで周りに錠剤が雨のごとく散る。
走って急に大声を出したせいで、俺は肩で呼吸をしていた。
目の前で行われようとしたことは稲妻が走るような衝撃だったのに、心の中では意外と冷静な自分にも驚いている。
目の前の彼女の顔は真っ赤だ。
肩を震わせ、全身で俺に怒りを表している。
深い、怒りと、絶望の、声。
あたりを見ていれば、空の瓶が何個も転がっている。
「あともうちょっとで…ッ」
と、彼女は嗚咽を漏らす。
顔から落ちる雫はもう涙か涎かわからない。
どうしたらいいか、わからない。
子供のように泣きじゃくるクラスメイトを見下ろしては、感じたことの無いほどの困惑と恐怖が湧き上がってくる。
考えろ、考えろ、考えろ…!
…あれ?
さっきまで、目の前で地べたに座り込んでいた少女はいない。
周りには錠剤の抜け殻の瓶たち。
まるで、彼女だけ瞬間的に消えたような…。
ふと、嫌気がさして振り返る。
"綺麗だった"女の子が、ガラスの破片を振り上げていた。
____ドサッ
人が倒れる音は、思っているより低い音だ。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。