夜。
館の廊下を満たす静けさを破るように、
あなたの笑い声が響いた。
「あはは……うふふ……あははっ……!」
その笑いはどこか楽しげで、
どこか危うくて、
まるで心がちぎれそうなほど軽くて重い。
Fukaseはすぐにあなたのもとへ駆け寄った。
「あなた! また波が来たんだね。こっち向いて!」
あなたはふらつきながら壁にもたれ、手を震わせて笑っていた。
「ねぇ……Fukase……
心がね……飛んでいきそうなの。
あはは……止まんない……うふふ……」
Fukaseはあなたの肩を掴み、
強すぎず弱すぎず、絶妙な力で抱き寄せた。
「大丈夫。大丈夫だから。
ここにいて、あなた。」
あなたは呼吸が乱れ、胸が上下する。
笑っているのに、涙が滲んでいた。
「……止まんなくて……あは……怖い……」
「怖くない。俺がいる。」
Fukaseはあなたの前髪をよけ、額と額を合わせる。
「あなた、聞こえてる?
深呼吸して。俺の呼吸に合わせて。」
あなたは震えながら、Fukaseの胸に手を置いた。
Fukaseはゆっくり息を吸い込み、
ゆっくり吐く。
「吸って……吐いて……
そう。大丈夫。」
あなたの笑いが次第に弱まり、
肩の震えが静まっていく。
「あは……ぁ……う、ふ……ふ……」
そのまま、あなたの力がふっと抜けた。
膝が折れそうになった瞬間、
Fukaseがしっかりと抱きとめる。
「あなたっ……!」
暖かい胸にすっぽり収まる形で、
あなたはFukaseの腕に沈んだ。
呼吸は落ち着き、
瞳の奥の狂気もすっと消えている。
Fukaseはあなたを抱きしめたまま、
何度も何度も背中を撫でた。
「もう大丈夫……もう平気だから……
怖かったね……本当によく頑張った……」
あなたはゆっくり目を閉じ、
脱力した身体をFukaseに預ける。
「……Fukase……
ここに……いて……」
「いるよ。離さない。」
あなたの呼吸が静かに整い、
Fukaseの胸の中で眠りに落ちていく。
Fukaseはその小さな体をぎゅっと抱きしめ、
その髪に顔をうずめる。
「……壊れてもいい。
壊れそうでもいい。
全部、俺が抱きしめてるから。」
廊下には月の光だけが差し込み、
静かに眠りあなたを抱いたまま、Fukaseは目を閉じた。
その夜、
二人の呼吸だけが、重なる音となって響いていた。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!