羅刹学園の寮。
四季はいつも通りふわふわ歩いていたが、今日だけやけに様子がおかしい。
視線が定まらず、頬がほんのり赤くて、ぼーっとしている。
皇后崎が気づいた。
返事はゆるいし、いつもの冴えがない。
そこへ馨が買い物袋を提げて戻ってくる。
近づいた瞬間——
四季の耳がピクッと震えた。
四季が突然、目を細めて馨の服の裾を掴む。
花魁坂も歩いてきて、四季の顔を見るなり、
四季は馨のシャツに顔を近づけ、ふにゃっとした声で言う。
すると花魁坂が袋を漁り、ひょいと取り出す。
四季はタオルケットみたいに馨の袖を掴んで揺れる。
皇后崎は笑いをこらえながら鼻を鳴らす。
花魁坂が興味津々で言う。
と、同じ柔軟剤を染み込ませた布を四季に差し出す。
四季は匂いを嗅いだ瞬間、ぱあぁっと表情が緩み、
ふらっと花魁坂の胸に倒れかける。
馨は四季を抱きとめながら細かく震える。
布を手放した四季は、ふわふわした足取りで馨に近づき、袖を掴む。
馨は鼻の下をさすりながら、
と言って四季の頭を撫でる。
すると四季はさらにとろけた目で、
と言いながら馨の胸へすり寄る。
皇后崎と花魁坂、静かに驚愕。
と否定しながらも表情は完全にデレデレ。
その日から四季は“その柔軟剤の匂いにだけ異様に弱い”ということが正式に判明した。
そして——
・馨の服 → 反応強
・花魁坂の布 → ゆるゆる
・皇后崎が着ても → なぜか普通
四季は馨の隣でまだとろんとしていて、その顔は誰が見ても幸せそうだった。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。