第71話

香りひとつで四季が溶ける日
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2026/03/22 10:00 更新
羅刹学園の寮。

四季はいつも通りふわふわ歩いていたが、今日だけやけに様子がおかしい。

視線が定まらず、頬がほんのり赤くて、ぼーっとしている。

皇后崎が気づいた。
皇后崎迅
四季、お前……なんかフラついてねえ?
一ノ瀬四季
ん? え、へへ……なんかね……ちょっと……
返事はゆるいし、いつもの冴えがない。

そこへ馨が買い物袋を提げて戻ってくる。
並木度馨
四季くん?どうしたの?熱でもあるの?
近づいた瞬間——


四季の耳がピクッと震えた。
一ノ瀬四季
っ……!
四季が突然、目を細めて馨の服の裾を掴む。
一ノ瀬四季
ん……なんか……馨さんの匂い……
並木度馨
……え?
皇后崎迅
え?なにそれ?
花魁坂も歩いてきて、四季の顔を見るなり、
花魁坂京夜
……ああ、これは完全に“とろけてる”顔だね



四季は馨のシャツに顔を近づけ、ふにゃっとした声で言う。
一ノ瀬四季
この匂い……なんか、好き……
並木度馨
いや、今日特別な匂いなんて……
すると花魁坂が袋を漁り、ひょいと取り出す。
花魁坂京夜
これ。
馨くんが買ってきた柔軟剤、サンプル付いてたでしょ?
それの匂いに四季くんが反応してるんだよ
皇后崎迅
柔軟剤!? そんな可愛い弱点あんのか!?
並木度馨
いや待って、柔軟剤でこんなデレ方する?普通…
四季はタオルケットみたいに馨の袖を掴んで揺れる。
一ノ瀬四季
落ち着く……好き……
皇后崎は笑いをこらえながら鼻を鳴らす。
皇后崎迅
おい。それ、四季専用に買いだめしとけよ
花魁坂が興味津々で言う。
花魁坂京夜
四季くん、試してみる?
と、同じ柔軟剤を染み込ませた布を四季に差し出す。

四季は匂いを嗅いだ瞬間、ぱあぁっと表情が緩み、
一ノ瀬四季
っ……これ……すっごい……好き……
ふらっと花魁坂の胸に倒れかける。
花魁坂京夜
よしよし、ほら見て。完全に溶けてる
皇后崎迅
おい、これ危ねえやつじゃん。
敵に使われたら終わるぞ?
馨は四季を抱きとめながら細かく震える。
並木度馨
……可愛いけど……でもちょっと複雑だな……


布を手放した四季は、ふわふわした足取りで馨に近づき、袖を掴む。
一ノ瀬四季
かおるの……いちばん……すき…
並木度馨
(名前いつもと呼び方違うのも可愛い……)
皇后崎迅
顔赤いぞ。ニヤけてるぞ
花魁坂京夜
これは“馨くんの香りだから”落ち着くのか、“匂いそのもの”が好きなのか……ふふ、気になるね
馨は鼻の下をさすりながら、
並木度馨
……どっちでもいいけど、四季くんが安心するなら、しばらくこれ使うよ
と言って四季の頭を撫でる。

すると四季はさらにとろけた目で、
一ノ瀬四季
……だいすき……
と言いながら馨の胸へすり寄る。

皇后崎と花魁坂、静かに驚愕。
皇后崎迅
……お前だけずるくね?
花魁坂京夜
完全に“匂いで落ちる四季くん”だね
並木度馨
いやいや、別に
と否定しながらも表情は完全にデレデレ。
その日から四季は“その柔軟剤の匂いにだけ異様に弱い”ということが正式に判明した。

そして——


・馨の服 → 反応強
・花魁坂の布 → ゆるゆる
・皇后崎が着ても → なぜか普通
皇后崎迅
おい、なんであいつだけ効き目違うんだよ!
花魁坂京夜
“相性”というやつだね♡
四季は馨の隣でまだとろんとしていて、その顔は誰が見ても幸せそうだった。

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