累達が話している間、私は強い何かに怯えていた。
強い鬼の匂いがした。
怖くて私、何も言えなかった。
お父さんとお母さんが、外へ行ってすぐに、お母さんの悲鳴が聞こえた。
累もそれを聞いて外へ出て行ってしまった。
私は怖かった...。
でも、大切な家族の為、私も縁側の方へ急いだ。
──────両親の姿はもうどこにも無かった。
洋服を着た男の鬼が、縁側に立っている。
その鬼は私を見て、一瞬静かな笑みを浮かべ、そのまま姿を消した。
目線を下に向けると、累が畳の上に倒れていた。
私は累に駆け寄った。
累の苦しむ声が痛々しく部屋に響く。
昔、おばあちゃんが言ってた。
鬼は人を喰って強くなる。
それによって生きてるんだって。
累は匂いからして鬼になってる。
綝は自分の強い力を持つ血を累に分けてあげた。
少しでも累が、楽になるように。
突然、累が綝に襲いかかった。
私は累共々、畳の上に倒れてしまった。
累は私に覆いかぶさっていて、肩を強く掴まれ、逃げられない。
累はもう人間の姿ではなかった。
鬼となり累の髪は白くなり、口には牙が生えていた。
変わり果てた累の姿に、綝は絶望こそしていたが、まだ累のことは信じていたかった。
一緒にいたかった。
たとえ鬼になろうとも、綝は累を見捨てたりしたくなかったのだ。
もうダメだ。
そう思い、一瞬目を閉じたその時。
ぽたぽたと上から何かが落ちてきた。
目を開けると、累が大粒の涙を流し、震えていた。
かろうじて聞き取れるほど、小さな声で累は言った。
累は泣き崩れてそのまま綝の上に倒れた。
そして強く綝を抱きしめた。
綝は優しく累の頭を撫でた。
悲しかった。
辛かった。
後悔しても、もう遅い。
累は鬼に変わった。
自分には何が出来る...?
その時、累が苦しそうに体を強ばらせた。
累はまた、理性を失いそうになり、綝を傷つけないように、家を飛び出した。
そしてそのまま、走り続けた。
どこまでも、暗い、夜の中を...。
そして累が辿り着いた先が、那田蜘蛛山だった。















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。