前の話
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幾度となく続く石の上をどのくらい走っただろうか?
分からなくなる程狂ったように走った私の足はボロボロだった。
井垣を掻き分けた先は活気に満ち溢れ、
そこらには無数の水玉模様
容赦なく私に降り注ぐは
人々の視線と心の中を表したような、そんな雨模様だった。
水を弾き生き続ける綺麗な花達の目の前で倒れ込み、今までの生きた記憶を思い出していた
____私の家は何を言われても嫌味を零さない性格だった。
その性格が利用され続けた結果、家族の中でも交友関係が狭い私に回ってきた。不幸を押し付けられてしまった。
皆甘え過ぎた、漬け込み過ぎたのだ。
「すいません、少しお金を貸して頂けませんか。」
そう言って父はやれる限りの命綱を渡した。
「今日家にお邪魔していいかしら?」
そう言われ続け後片付けをする母の顔は疲れ切っていた。
「推薦だぞ!良かったな!」
先生にそう言われあなたの兄弟の名前はプレッシャーに潰された。
簡潔に言うと、皆壊れたのだ。
アクアリウムが割れた時中から水が飛び散るように。
心が割れ、ドロドロになってしまった液体が
私は幸せでいたかっただけなのに。
そう呟いたが最後、今日の私は死んで行った
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。