第4話

人間に飽きた少年 4
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2023/01/29 10:19
中性的な男の人
あぁ、そうだ
中性的な男の人
他のヨリシロの子達にも会いたくはないかい?
少年
他の、?
中性的な男の人
此処には君以外に、五人のヨリシロが居るんだ。
五本、指を立てて微笑む男の人。
五人か……思っていたよりも多いな。
中性的な男の人
一人は、4月4日……桜が綺麗な時期に選ばれた15の青年。
一人は、その次の日に選ばれた13の少女。
一人は、その少女の双子の兄。
一人は、あと5ヶ月で完成する壮年、歳はいくつだったかな。
中性的な男の人
そして残りの一人……あの人は、あと五分で完成する。
完成、ということは、
少年
「森の妖精の器」……?
中性的な男の人
そう。物覚えが良くて助かるよ。
ヨリシロは、一年間この森で過ごす。
じゃあその人は、一年前の今日にここに来たんだ。
そして、ボクも一年後には………
少年
(人間ではないナニカに……)
何故だろう、怖いはずなのに、
わくわくする。
中性的な男の人
どうせなら、見てみると良い。
中性的な男の人
器 が 完 成 す る 瞬 間 を、
にやりと浮かべられた男の人の不気味な笑みさえも、今は輝いて見える。
もしこれが本当に夢なら、なんて素敵なのだろう。
平凡な毎日に終止符を打つことができる、それがどれだけボクの心を高ぶらせ、どれだけボクをそそらせるのか。
少年
うん、見てみたいな。
今日は、人生で一番笑った日だ。
中性的な男の人
君ならそう言うと思ったさ。
中性的な男の人
挨拶ついでに見てみると良い。
そして男の人は、誰も居ないはずの木陰を見た。
中性的な男の人
彼と一緒に、ね。
少年
彼……?
そう、誰も居ないはずの木陰。
 
…そう、居ないはず、居ない……はず?
青年
……なぜ俺まで?
いや、居た。
そこには、少し不機嫌そうな表情を浮かべた青年が立っていた。
中性的な男の人
二人は歳も近いし、きっと友達になれるはずだ。
青年
歳が近いからといって仲良くなれると思わないでください。
中性的な男の人
まぁまぁ、良いじゃないかぁ、クフフフッ!
中性的な男の人
さぁ、時間もおしている。
 
中性的な男の人
いってらっしゃい、ヨリシロ君たち。
 
トン、と背中を押される感覚。
追い風が行け行けとボクに促す。
ボクはそれに便乗するように、走っていった。

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