第3話

二話:重すぎる愛の対価
13
2026/02/25 08:53 更新














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進行を遅らせることができません







その言葉を聞いた瞬間、頭の中が真っ白になった


まるで、ステージの照明がすべて叩き割られたような衝撃


世界で一番守りたかった女の子が、少しずつ、





俺の手の届かない場所へ、消えていく











羽風 薫
羽風 薫
(⋯⋯なんで、なんであなたの下の名前なの?)





神様なんて信じていなかったけれど、この時ばかりは




呪いたかった




自由奔放に生きていた俺への罰なら、俺の声を奪えばいい


俺の足が動かなくなればいい



なのに、どうして彼女から『思い出』を奪うんだ



俺と出会ったあの日も、初めてキスした夜も、全部『なかったこと』にされるなんて、



そんなの





羽風 薫
羽風 薫
(殺されるより残酷なこと、だよ)











残酷、だよ⋯⋯












でも、













羽風 薫
羽風 薫
⋯⋯ねぇ、帰りに美味しいパンケーキでも食べていかない?










気づけば、いつもの『羽風薫』を演じていた


泣き出しそうな彼女を安心させるために、最高の笑顔を作って、軽やかな声を出す


これがアイドルとしての、



俺の技術だ



けれど、握りしめた彼女の肩が、小刻みに震えているのが伝わってきて、


胸が引き裂かれそうになる


病院の長い廊下を歩きながら、




俺は決めていた










羽風 薫
羽風 薫
(たとえ、あなたの下の名前が俺を忘れても。
 俺の名前を呼ばなくなっても。)
羽風 薫
羽風 薫
(俺だけは、君を絶対に忘れない)








大丈夫、大丈夫だよ。あなたの下の名前












羽風 薫
羽風 薫
⋯⋯俺が、君の記憶の『代わり』になってあげるから







サングラスの奥で、熱いものが込み上げるのを必死でこらえる


今日から、俺の『本当の戦い』が始まるんだ



あなたの下の名前が忘れていくスピードがよりも速く、


俺が新しい思い出を作って、愛し続ける






⋯⋯たとえそれが、





















羽風 薫
羽風 薫
(――出口のない迷路だと分かっていても)

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