それから、3年後…
待ち合わせのカフェに入ってくるなり、トゥバのことを
話し出すふうちゃん。
私が笑ってそう言えば、
目をきらきらさせて、うっとりした顔をするふうちゃん。
私たちは、あっという間に大学1年生になった。
ふうちゃんは、スタイリストの専門学校に通っていて、
いずれは、まやさんの下で働く予定なんだそう。
私は、文学部で韓国語と中国語を主に勉強している。
ふうちゃんとカフェでお茶した後、
私にご飯の誘いをしてくれるふうちゃん。
ふうちゃん、学校初日に「MOA友見つけた!」って
そういえば騒いでたっけな…。
私が手を合わせて「ごめん」と言うと、
と、笑顔で言ってくれた。
私の目の前を、風に乗って通り過ぎていった桜の花びらは、
近くの川にヒラヒラと舞い落ちる。
私は、ふうちゃんと別れた後、
ボムギュさんとデートの待ち合わせをした、
須賀神社に来ていた。
ボムギュさんとは、あの日以来、会っていない。
トゥバは、私が出会った時にはもう既に凄かったけれど、
この3年間でどんどん大きなグループになっていった。
あの5人とものビジュアルの高さから、日本でも
本当に話題になっていて、
去年には、韓国アイドル史上最速で日本4大ドームツアーを
成功させたり、紅白歌合戦に出場したりと、
トゥバの勢いは止まることを知らない。
トゥバのCDを買ったり、MVを見たりはしているけど、
コンサートやミーグリ、ペンサなどの直接会う機会は、
ふうちゃんに誘われたりしても、
いつだって行くことはなかった。
万が一、ばったり会ったりしてしまったら、
今度こそ、本当に、後戻りはできないと思ったから…。
だけど、どうしてもボムギュさんとの思い出の場所…、
この須賀神社だけは、暇さえあればいつも来ていた。
ここにいると、心が落ち着いて、何でもできちゃうような…
そんな、私にとってたくさん力を貰える場所だったから…。
それなのに…
何で…何で、いるの…?
私は、もうあなたには会わないって…
そう、決めてたのに…。
どうして、あなたは…
橋の上で、静かに流れる川を眺めていた彼は、
私の存在に気づく。
時が止まったみたいに、私の周りの音が、
一瞬で聞こえなくなる。
まるで、この世界に私とあなたしかいないみたいに…。
彼と、目が合う。
まるで、あなたのその瞳に囚われたかのように、
私は身動きすらとれなくなる。
ずっと…ずっと、
私の名前を呼んで欲しかった人に、
今やっと、名前を呼んでもらえた…。
ボムギュさんは、3年経った私の姿を見て、
本当に合ってるかどうか不安そうな顔をしてる。
だめ…。このままあなたを見てたら、泣いてしまいそう…。
私は、もうこれ以上彼と
目を合わせていられなくて、俯いてしまう。
ボムギュさんのその声の後、
彼の足音が近づいてくるのが分かる。
だめ…だめ…。
泣いちゃ…だめなのに…
私のそう思う気持ちとは裏腹に、
私の目からぼろぼろと涙がこぼれ落ちる。
アスファルトに、私の落ちた涙が染み込んでいく。
お願い…、涙、止まって…。
あなたに見せるのは、笑顔だけだって…
あの時、そう決めたのに…。
彼は、私の顔を両手で優しく包み込んで
自分と目線を合わせるように、そっと持ち上げる。
ボムギュさんは、3年前と変わらない優しいあの笑顔で
私にそう言った。
ねえボムギュさん、知ってる…?
今あなたは、
私があなたが何を言ってるのか分かってない、って
きっと思ってるんだろうけど、
私、分かるよ?
私、ただあなたに近づきたくて、
あなたと、ちゃんと自分の言葉で話したくて、
韓国語をたくさん勉強したんだ。
やっぱり、まだまだイントネーションとか違うところだって
沢山あるし、分からない単語もたくさんあるけど、
でも…、
ボムギュさんと話ができるようになりたかった…。
ただ、それだけだった…。
私は、気づけばそう言っていた。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。