——静かだった。
さっきまで空間を引き裂いていた黒糸の嵐が、嘘みたいに止まっている。
音も、重さも、色さえも薄れて、世界は“縫い目の内側”だけを残して凍りついた。
透は、まだ灯の手を握っていた。
離せば、すべてが終わってしまう気がして。
呼ぶと、灯はゆっくり顔を上げた。
黒糸は彼女の背後で静止している。
まるで——判断を待っているみたいに。
声が震える。
その言葉は、黒糸よりも重く、鋭かった。
灯の瞳が揺れる。
灯は、自分の胸を掴んだ。
黒糸が、微かに脈打つ。
透は、強く首を振った。
灯が、はっとする。
その瞬間、黒糸がプツンときれた。
芽吹の声が、今度は完全に“隣”から聞こえた。
視界の端に、白い光が立ち上がる。
芽吹の姿が、半透明のまま現れる。
小さな破裂音がした。
イヴが舌打ちしたからだ。
イヴの白糸が空間に広がる。
透が叫ぶ。
灯は、唇を噛みしめた。
迷っている。
でも——
その迷いは、もう“黒縫いに与えられたもの”じゃなかった。
黒糸が少しずつほどけていく。
灯は透をまっすぐと見つめる。
イヴの表情が、初めて歪んだ。
その言葉と同時に——
黒糸が、完全に裂けた。
轟音。
縫い目の空間が崩壊し、光が溢れる。
その声と同時に、透は灯を抱き寄せた。
灯は、初めて“妹の顔”で笑った。
次の瞬間——
世界が、真っ白に弾けた。
裂け目が消え、黒糸が霧のように散っていく。
美菜が呆然と呟く。
陽太の声が震える。
ヴォルトは雷針を下ろし、息を吐いた。
市場は、かろうじて崩壊を免れていた。
透は、床に膝をついていた。
腕の中に、眠ってる灯がいる。
呼吸は、穏やかだ。
芽吹の声はすぐそば。
芽吹は、少し笑った。
そのとき——
灯の手首に残っていた黒糸の痕が、
淡い光の縫い目へと変わった。
それは、消えなかった。
“選んだ証”として。
けれど。
誰も気づかなかった。
崩れた縫い目の奥で——
イヴが、静かに別の糸を引いていたことを。
第3章しゅーりょー!!
難しくなってきたので、3章のまとめします!
👇ここまでのまとめ👇
✔︎灯=黒縫い→助けた!
✔︎灯は透の「痛み」などを吸収
→透の記憶がズレるのは殆どこれが理由!
✔︎芽吹復活!
✔︎イヴ=黒幕
疑問あったら、コメント欄でお気軽にお声掛けください!












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。