第2話

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2025/10/14 15:00 更新


律希
律希
着きましたよ、
透
んん…、ありがとうね、、

不意にふわっと微笑まれて、何だかドキドキした。
頭が痛いのか、一人で歩こうとするとふらふらしていて心配だったから、一緒にいてあげることにした。

透
ね…
律希
律希
透
名前、なんて言うの
律希
律希
えっと、、羽白律希って言います
透
律希か…名前、可愛いね
律希
律希
…え、

こういうタイプか。
イケメンで、サラッと口説ける…
さっきはドキドキしちゃったけど、この様子なら奥さんが居そう。
結婚済みの人を狙う趣味は無いので、さっきのドキドキは無かったことにして考えるのをやめた。
言い忘れていたが、僕はゲイだ。
恋愛対象が男性。だから、この人の言動にドキドキしてしまう。

律希
律希
あ、貴方は、?
透
俺?
透
一之瀬透。

いちのせ、とおる…
綺麗な響きだなぁ、なんて。

律希
律希
……あ、一之瀬さんって呼んでもいいですか
透
はは、一之瀬さん、ね……いいよ、好きに呼んで
透
じゃあ俺は……律希くんって呼ぼうかな
律希
律希
り、律希……
透
嫌だった?
律希
律希
ああいや、…大丈夫です。

「律希くん」呼びに思わず驚く。
今までそう呼ばれたことが無かったから。
固まっていると、一之瀬さんに顔を覗かれて、目が合うと、彼はこてんと首を傾げた。
いつもの大人な姿とは一変して、仕草が少し可愛らしい。

透
ふふ、…律希くんってさ、、、

看護師「一之瀬さーん、一之瀬透さーん」

透
…呼ばれたみたい…またね、ばいばい

なんて言おうとしていたんだろう…?
続きが気になるまま、一之瀬さんと別れを告げた。






看護師「羽白さーん、羽白律希さーん」

律希
律希
ぁ、はい

看護師「2番診察室までどうぞー」

一之瀬さんと別れてから数十分経って、やっと名前を呼ばれた。
今日は、定期検診と抑制剤の処方をしてもらう事になっている。
大分時間がかかるので、他に何かしていいならしたい所だけれど、そうもいかないのでいつも大人しく椅子に座っている。
……そういや、今日は違う先生だと聞いた。
誰なのか分からないけれど…ちゃんと処方してくれればそれでいい。

律希
律希
失礼します…
「はーい、どうぞー」

ガラガラ…と扉を開く。
どんな先生かな、と顔を上げ……

律希
律希
……お、、お兄、ちゃん…
実希
実希
律希…?

目の前の椅子に座っていたのは、実の兄だった。
家族関係は思い出したくもない。
なのになんで、ここに、目の前に家族がいるのか…自分の運の悪さを恨む。

実希
実希
元気にしてたんだな、生きてなくても良かったのに。
律希
律希
……お父様とお母様は、お元気ですか
実希
実希
はは、そんな畏まるなよ、
実希
実希
そうだな……お前が居なくなってから、みんな元気になったよ。
律希
律希
そうですか、それはよかったです…。

この様子から、分かってしまっただろうか。
僕の家は、代々domの家系としてやってきた。
なのに、そんな中で突然生まれたsubの僕は、「出来損ない」として、家族から嫌われて。
母の不倫も疑われたが、血液検査で父と母の血を継いでいたことが分かり、ただの失敗作だったとして、普段から地下に閉じ込められていた。
殴られ、蹴られ、罵倒され…思い返せば目も当てられないような状態だったが、それでも僕はその中で小さな幸せを見つけて楽しんでいた。
よく生きてこれたな…なんて時々思う。
…そんな感じだから、僕は家族が嫌いだ。見たくもない。
なのに、この病院で「sub」として診てもらわなければならない状況で、実兄と再会してしまうのは気まずい。

出来ることなら、今すぐに診察室を出ていきたい。

律希
律希
あ、の…診察、して、ください……
実希
実希
あー、そうでしたね、どうぞ、こちらに

恐らく一般の患者にはしないであろう態度で、ぶっきらぼうにそう言われる。
素直に従い、僕は椅子に腰をかける。

実希
実希
今日は、…定期検診と、…抑制剤?
実希
実希
へぇ、……お前、partner作ってないんだ。
律希
律希
…そういうことはいわな
実希
実希
そりゃそうだよな、お前なんかに惚れるやつの方がおかしいわ
律希
律希
……

こんなんで医師になれたことに心底驚く。
いくら血の繋がりがあるとはいえ、患者に対してこんな酷い扱いをしていいのだろうか。
言いたいことはいくつもあったが、口に出さずに堪えて、そのまま治療を受けた。








実希
実希
…はい、診察終わり。薬は…
律希
律希
1番強いやつ。
実希
実希
お前、何馬鹿なこと…
律希
律希
早くしてください。先生・・
実希
実希
……また来月…今度は俺じゃねぇから。
律希
律希
…さようなら

冷たくピリついた空気が流れて、段々息苦しくなってきて、僕は逃げるように診察室を出た。
診察をする前の、あの穏やかな心持ちを返して欲しい。
薬を早く貰って、今すぐに家に帰って、心を落ち着かせたい。
そんな切羽詰まった感情を胸に、薬局の椅子に座って、抑制剤を待った。





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