広末高校入学式─────
あなたの下の名前はとても退屈していた。
いや、むしろ忙しかったのかもしれない。
つまらない大人の話を永遠に聞かされているのだから眠くならない訳がない。
つまり、長ーい先生方の話は耳に入らず睡魔とひたすらに戦っている状態であった。
だが、その長い戦いは新入生総代の誓いの言葉で終わりを告げることになる。
演説台からネギが生えた。
ネギだ。
しかもその人は白衣を着ていると来た。
あなたの下の名前の眠気はそのインパクトに敗れ、どこかに行ってしまった。
おかげで周りのざわめきや司会の先生の あちゃー という表情もはっきりと見えた。
私達の総代は問題児なのか、と私の中で印象づけられたところで総代くんがカンペを演説台に放り投げ口を開いた。
「......ま、どう考えてもイミフだわな。たった一人に全員を代表させて『誓いの言葉』なんて。全員が方位磁針みたいに同じとこ向く必要もねぇってのによ。.....あ゛?んだよ。カンペまで出して。『ちゃんとやれ』?あ゛ー、わかったよ。『誓いの言葉』ね......」
新入生全員の前で喋っているという事を忘れさせるような話し方をしたかと思えば、私たちと同じ歳のその少年は恥じらうこともなく端的に言い切った。
「宇宙に行く」
その姿があなたの下の名前にはとても眩しく見えた。
自分には大勢の人の前で自分の夢や目指しているものをあんな風に堂々と言える自信はない。
彩色の無かったこの体育館の中に急に色が着いたような気がした。
その中心にいた少年の姿はあなたの下の名前の記憶に大きな爪痕を残した。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。