障子の向こうから錆兎の声が聞こえる
そう返しながら、あなたは鏡の前で最後の確認をした
淡い瑠璃色のワンピース
祝言祝いで貰った洋服だ
髪を整え、いつもの瑠璃色の簪を挿す
頷いて障子を開けた
錆兎が振り返る
そして固まった
あなたは眉をひそめる
返事が早い
あなたは少し安心した
錆兎は一度視線を逸らした
あなたが嬉しそうに笑う
錆兎は咳払いをした
祝言を挙げた後の初のお出かけの始まり
街へ着くと、あなたはきょろきょろと辺りを見回した
あなたが笑う
錆兎も少しだけ口元を緩めた
しばらく歩いていると、小物屋が目に入った
錆兎は近くの店へ用事があり、一旦別れる
あなたは店先の商品を眺めていた
すると
声を掛けられる
振り返ると見知らぬ男だった
あなたは首を振る
だが男は気にしない
なかなか引いてくれない
あなたは困ったように笑った
あなたは小さくため息を吐いた
男が瞬く
その時だった
聞き慣れた声
あなたが振り返る
ぱっと表情が明るくなる
錆兎はあなたの隣へ来た
そして男へ視線を向ける
あなたが即答する
錆兎はそれ以上何も言わない
ただ男を見ていた
だが男は何故か居心地が悪そうだった
男は苦笑する
そのまま足早に去っていった
歩き出そうとした時
あなたが荷物へ手を伸ばした
錆兎が避ける
あなたが少し目を丸くした
あなたが呆れたように笑う
錆兎はあなたの背中を軽く手を当てた
まるで
『俺の女だ』
とでも言っているようだった
しばらく歩いていると
錆兎が不意に口を開いた
あなたの足が止まる
錆兎を見る
錆兎は真面目な顔だった
あなたの顔がじわじわ赤くなる
錆兎は少しだけ笑った
あなたは顔を押さえる
錆兎の方は妙に機嫌が良かった
あなたが睨む
すると錆兎は肩をすくめた
そう言って自然にあなたの手を取る
あなたは目を瞬いた
そう言いながら離す気はないらしい
あなたは頬を赤くしながらも、小さく笑った
春の風が吹く
二人は並んで歩きながら、賑やかな街の中へ消えていった











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。