「あの子さっきのミスコンの子じゃない ⁉︎」
「ほんとだ!私服でも可愛い!」
「スッゴイ美人だなぁ」
「彼氏いんのかな?」
「隣にいる背高いヤツそれっぽいぞ?」
こんなに人の声が聞こえてくることってそうそうないよな。
あなたは全く気付いてねぇし。
彼氏いるっつーの。
「あなた」
『はい?あっち!』
焼きたてのたこ焼きを頬張りながら、頭にハテナを掲げるあなた。
俺はあなたの腰に腕を回して、自分の方にグッと引き寄せた。
『えっ…//』
「お前、結構目立ってるぞ」
『へ…?』
「男も女もお前のこと見てんだよ」
『全く気付きませんでした…』
「この文化祭の間はなるべく俺から離れるな。いいな?」
『…』
「なんだ?」
『…嫉妬してます?』
は、はぁぁぁぁぁああ ⁉︎⁉︎
なんでそうなるんだよ!
「は、いや!//」
『?』
「お前が変なヤツに拐われたらしたら大変だろ ⁉︎」
『そうですか?少林寺拳法使いますけど…』
「お前を守るためだっつーの!嫉妬じゃねぇし!周りの奴の目が気になるなんて思ってねぇし!///」
『私そこまで言ってませんけど?』
「なっ…//」
『図星ですねぇ』
「お前覚えてろ…///」
『な、何する気ですか…』
「言わねー」
『もう…//』
たこ焼きを食べ終わって、次の屋台へ行く。
どんなけ食うんだよ…
『あ!クレープ!』
「あ、おい!」
さっきまで離れるなと話してたのに、また離れて行こうとした。
咄嗟に腕を捕まえて、手を繋いだ。
『!』
「これで逸れたりしないな。」
『ですねっ』
・
・
・
「なんでこーなったんだよ!」
「うるせぇなぁ」
「焼きそば美味しいです!」
夜の部。
寒くなってきてそれなりに空も澄み、星が輝いていた時。
夜空に見惚れていると、隣にあなたがいなかった…
いたのはコニーとサシャ…
「ちゃんと手繋いでたのに…」
「あなたならミスコンの控え室に行ったぞ?」
「は?なんで?」
「私達は女子のグループに声をかけられてジャンと話してきてほしいと言われたので来ました!」
……嫌な予感がする。
「そういや、その女の1人があなたのこと呼び出してたよな」
「そうでしたね」
「…」
「ミスコンの控え室だよな?」
「そーだ」
「…行ってくる」
「行ってらっしゃーい!」
女子のグループ…
ミスコンの舞台まで思いっきり走って、着くと
控え室の入り口から女子のグループが出てくるのが見えた。
「チッ…!」
控え室に駆け込むと
「!」
『…』
髪や服もぐちゃぐちゃ、腕に少しの切り傷
そしてミスコンのステージに出るために俺らが作った、吸血鬼をモチーフにしたドレスを
胸に抱えて腕に閉じ込めて
小さくしゃがみ込んでいるあなたがいた。
「…あなた…」
『っ…』
顔を上げて、俺を見ると立ち上がって走り出した。
「あ、おい!」
『っ…』
舞台の別の入り口まで逃げて行った。
ドレスを握りしめて、涙を堪えているのが見える。
俺はあなたを追いかけた。
やっぱりアイツ足速いな…
追いつけないほどじゃねぇけど!
「あなた!」
『っ…』
咄嗟に掴んだ腕が、切り傷を受けているところで
あなたは痛がって、俺は瞬時に腕を離した。
「あ、悪りぃ…大丈夫か?」
『…』
足を止めさせたのはいいものの、ここは文化祭の広い通り。
場所を変えるため、あなたの手を引いて空いている教棟に向かった。
「…誰もいない、な」
『…』
「…入ってこいよ。」
なかなか教棟に入ろうとしないあなた。
「……何があったか、言えるか?」
『…言いたくない…です』
「…その腕の傷は、自分で付けたのか?」
『…いえ…』
「…」
今にも泣き出しそうな顔。
目にはもう涙が溜まってる。
声も絞り出してる。
「…」
『っ…!』
身体を引き寄せて、ドレスもそのまま抱き締めた。
『あ、ダメ…』
「…いいから」
『ドレス皺になっちゃいます…』
「いいから」
『っ…』
最初は抵抗していたが、力を抜いて俺に身を預けた。
「…何があっても、俺はお前のこと信じてるからよ」
『っ…』
「お前も俺を信じろ。」
『…う…っ…』
とうとう泣き出した。
嗚咽を繰り返して、俺の顔を埋め込んで
「…大丈夫」
『…ふ…ぅ…』
「…」
『…さっき…』
「おう」
『四年生の…先輩の方達が…』
「さっき出てきた女達だな」
『…ミスコン…今すぐ辞退しろって…』
「は?」
『っ…』
・
・
・
数分前。
「綺麗だなぁ…」
『ですねぇ』
ジャンが夜空を見上げていて、それがすごくカッコよくて……
思わず横顔に見惚れてしまって…
その時
「…あなた、あなた・レントア?」
『え…』
背後から声をかけてきた、綺麗な女の人2人。
四年生の方…ですかね
『そうですけど…』
「隣の彼、あなたの彼氏?」
『はい』
「ふーん…」
すると私を一気に引っ張って、ジャンから引き離した。
ミスコンのステージに引き連れて、私を控え室に付き投げた。
『っ…!』
「意外と筋肉あるのね」
「まぁいいわ。そろそろ他も来るんじゃない?」
「そうね」
何の事…?
「お待たせぇ!」
「どうだった?」
「その子の彼氏の足止めは、彼と仲の良いお友達を騙して止めてもらってる」
「なら時間稼ぎはできるわね」
『…』
「…ムカつくわね、その目。怯えていない、勇気ある目」
先輩の1人が私の顔を掴んで、叩いた
『…え…』
「私は四年生の先輩。私は3年連続ミスコンで一位を取ってるの。今年だって絶対ミスコン一位に選ばれる自信があった。なのに…」
『…』
「どうしてアンタみたいなのが周りにキャーキャー言われるのよ!」
「ミアよりもブサイクなのにねぇ」
「今すぐ辞退しなさいよ。私がミスコン一位を取るために」
『…』
「自分の美しさの度合いをちゃんと確認してからミスコンに出なさい?」
『……私は、簡単に引けるほどの度胸でミスコンに出てるわけじゃないんです』
「は?」
『皆が私にお願いしてきて…私のためにドレスを作ってくれて…皆の思いが込められた命懸けのミスコンなんです!』
「…」
『引きません。私は自分がこの大学1の美人だとは微塵も思ってません。けど、私のことが気に食わないのなら正々堂々勝負してください!』
「……ほんと、ムカつく」
そう言って先輩は、私のドレスを掴んだ。
『!』
「……汚いわね」
そう言って、先輩はポケットからカッターナイフを取り出して
ドレスの肩紐を、切って裂いた。
『やめてくださいッ!』
やめさせるために、先輩の腕を掴むと
先輩は痛がって私の腕にカッターナイフを振った。
『イッ"…』
「あ…」
「やばいよミア…ミスコンの候補に傷つけたなんて言ったら…」
「っ…い、行くわよ!」
先輩達は、その場から去って行った。
私はドレスを取って、守った。
また戻ってきたら、またドレスを裂かれるかもしれない。
『腕が…痛い…』
耐えられる痛みだけど、傷口から血が少し流れる。
そろそろ止まったかな…
『!』
「…っ」
ジャンが入ってきた。
私を見つけてくれた。
けど、もしこの事を言ったらジャンはなんて言うんだろ……
かなり問題になるかもしれない。
逃げなきゃ…!
・
・
・
「…だから、逃げ出したのか」
『…はい…』
「……ドレス、なんでそんなに守ったんだよ…?」
『だって…皆が頑張って作ってくれたから…』
「!…」
このドレスは、エレンとアルミンが生地を買ってきて
ユミルとミカサが生地を裁って、クリスタとサシャがデザインをして
俺が塗って仕上げた物。
「…」
『…でも、ごめんなさい……肩の辺りが…』
「見せてみろ」
ドレスを見ると、肩のレースが外れて消えていた。
あと裾も少し切れている。
『ごめんなさい…』
「お前のせいじゃねぇよ。裾は10分あれば直せるな。」
そう。裾"は"だ。
問題は肩。
肩のレースの素材は黒シルクで、肩に付ける分で使い切った。
つまり換えはない。
「……」
『…探せば、ありますかね…?』
「どうだろーな……控え室にまだ残ってたらいいけど…」
『…』
ドレスを持って教棟を出て、控え室に行った。
「あるか?」
『…』
無さそうだな…
「……明日、上位3位までに選ばれたらこのドレスを着てステージに出る事になってる…」
『…』
「…明日の結果次第だな」
『……ごめんなさい…』
「もう謝るな。」
『っ…』
「大丈夫だから。」
黒のシルクのレースなら、調達できないこともない。
が、ミスコンの結果は今日が終わってから。
「今何時だ?」
『9時です』
じゃあもう終わるな…
ていうことは完璧に直すにはまずレースを見つけて……
「うーん…」
『…』
・
・
・
「じゃあな。」
『…はい』
とりあえず1日目の文化祭が終わって、あなたを家に送った。
ドアを閉めると、大急ぎでクリスタ達に連絡した。
全員代用できそうなレースを持って俺の家に来るらしい。
「で。」
「「「…」」」
「何だよこれッ!」
黒なのに白を持ってきたり、長さが足りなかったり
さすがに代用はできない。
どうすっかなぁ……
「右の肩紐だけなら、左だけの肩紐のデザインを作り直すというのは?」
「良い名案だ!」
「けど、あなたはそれで納得するのかな…?」
「「「…」」」
「私のことを思って、自分を傷つけてまでこのドレスを守ってくれたんだから。」
「やっぱり、悲しむかもしれない…」
「ごめんねジャン…」
「ん…?」
「……私達があなたをミスコンに誘ったから…あなたに悲しい思いをさせちゃった…」
「いや、それは…」
「ごめんなさい」
「……いや、それはねぇよ。」
「「?…」」
「…アイツ、楽しそうだったからよ。」
「「「!…」」」
「悔いはなかっただろ。」
それから全員の反省会を繰り広げた。
俺の部屋で全員雑魚寝。
何してんだっての……
んで。
「結局どうするか決まってねぇじゃねぇかー!」
「レースなんかでこんなにも悩むなんてな…」
「どうしよう…」
クソ…
もう9時だ…
10時にはステージ入場が始まっちまう…!
「あ、あなたから…」
顔を洗ったり、準備をしだすヤツらを他所にあなたからの電話に出る。
「おう。おはよう」
《…おはようございます》
「ちゃんと寝れたか?」
《…いえ…》
「…腕の傷は?」
《そこまで深くはなかったので、大丈夫です》
「そうか」
《……ドレス、どうなりました?》
「あ ⁉︎ いや、えっと…」
《……ジャン。》
「なんだ…?」
《…ミスコンは、辞退します》
「は…?」
《皆さんには迷惑をかけてしまいますが、リヴァイ先生には私から言います》
「おい!」
《ありがとうございます。皆も、私のために…》
「…」
このまま諦めさせてたまるかよ!
「…あなた」
《…》
「大丈夫だ。俺を信じろ」
《っ…》
「必ず、お前がステージに出れるようにするから。」
《…ジャン…》
「任せとけ。なっ?」
《……はいっ…》
あと1時間…
「あら、すごい人数だねぇ」
「あ、おはようございます」
「おはよう。ジャン坊、お友達かい?」
「あ、あぁ…」
「ジャン坊って久々に聞いたな」
「やめろ!」
「ふふっ」
「お風呂も使って良いからね。ゆっくりして行くんだよ」
「「「ありがとうございます」」」
「……あ!」
「ジャン?」
「母ちゃん!」
「ん?」
「母ちゃん…確か、よく服作るよな?」
「「「!」」」
「えぇ。だから不器用なお前さんが唯一できるのが裁縫なんだろう?」
「母ちゃん!」
「な、なんだい?」
「レースに代用できるような、黒のシルクの生地ねぇか ⁉︎」
・
・
・
『…』
ジャンに言われて、ミスコンに控え室に来たけど……
「ミスコンの結果発表だって!」
「3位が二年のレイン・ルイズさん。2位がミア・トレグアさん!」
「トレグアさんって3年連続ミスコン1位だった人よね?」
「今年は2位だったんだ…」
「ってことは1位は!」
「一年のあなた・レントアさん!」
「やっぱりねぇー!」
「この人はダントツ綺麗だったよね!」
「この人しか1位に相応しい人はいなかったもん!」
『…』
……ごめんなさい…
一応、控え室に行く。
出場者それぞれに控え室がある。
私は私の控え室にいる。
ダメだ、申し訳なさで挫けそう…
「あら、まだいたの?」
『…』
「1位おめでとう」
『…』
「で?辞退する決心は着いた?」
『…』
「でも大丈夫。決心なんていらないわ。あなたに拒否権なんてないんだから」
『…』
「今すぐに辞退してちょうだい。」
『……言いましたよね、今日。正々堂々勝負してくださいって。カッコ悪いですよ』
「っ…」
『…』
「ふん!切られたドレスでどうやってステージに出るのかしらね!」
……出て行った…
ステージの方で、何やら賑やかな声が聞こえる。
現在時刻は、10時。
ミスコンの発表イベントが、始まった……
もう…無理かもしれない……











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。