第41話

10月 ④
357
2022/03/27 10:54
文化祭当日。

午前中と昼過ぎは、それぞれ文化祭を満喫した。

俺はあなたといろんなところ回って、相変わらず健気な彼女の底なし胃袋を埋めるべく

走り回る結果。

まぁ、可愛いからいいんだけどな。

そしてやってきたミスコンの時間。

いるのはミスコンのステージ裏だ。





「綺麗だね!」

「すごーい!」

「似合ってるねぇ!」

「優勝間違いなしですね!」

『ホントですか?』

「ジャン!見てみなよ!」

「んー?着れたか?」

「見なよ、ほら!」

「ちょっ!」





あなたが衣装をフルセットで着終わったらしく、ユミルに背中を押されて前に出された。

そこには黒のレースを纏い、スタイルの良さを抜群に引き出されているあなたが。

メイクもしていて、髪もふわふわに巻かれていて

可愛いより、綺麗だ。

やっぱりコイツは、綺麗な方が性に合ってる。





「どう?すごく似合ってるでしょ!」

『…///』

「…に、似合ってる…//」

「ジャン、何照れてんだ」

「照れるだろそりゃ!自分の彼女がこんな綺麗な格好して!」

「素直かよ」

「よし!それじゃあスタンバイしようか!」

「ミスコンの開始時間まで20分ある。表で見る人は移動して」

「私は残ります!」

「俺もー!」

「じゃあサシャとコニーお願いね!私達は見に行こう!」

「おー!」

「ほら行くぞジャン!」

「おわっ ⁉︎」

『あっ…』





エレンに無理矢理引っ張られてステージ裏から出かけたところ、あなたに腕を引かれて止められた。





『ちょっと、待ってください…』

「?…」

「わかったよ。じゃ、先行ってるからな。アルミン、ミカサ!」

「うん!」

「うん」





あなたはコニー達の目を盗んで、俺を奥に連れて行った。





「おい、あんまり奥に行くとドレス汚れるぞ」

『黒だから大丈夫です』

「そういう問題か…?」





あなた はこっちを見ずに、俯いて俺の手を握ってる。

気づくとあなたの手は震えていた。





「…」

『…っ』





いくら掃除っていう罰があるからって、一位になれっていうプレッシャーはすごいよな。

1人で背負って今から歩いて行かなきゃいけねぇんだよな。





「…あなた」

『はい……んっ ⁉︎』





赤い唇に唇をつけて、頬に手を添えて

少しずつ啄むようにキスをした。






『なっ…///』

「頑張って歩いてミスコン1位取れたら、もっとイイのしてやっから」

『っ…//』

「行ってこいよ。」

『…全く…ジャンがしたいだけじゃないですか!///』

「バレたか」

『もう…わかりましたよ//』

「…頑張れよ。自信持て。お前は綺麗だ」

『っ…//』

「俺が言ったんだから、嘘はねぇぞ」

『…はい。』





しばらくしてミスコンは開催され、次々と出場者が出て行く。

あなたの番がやってきた。





「おいで。」

『はい』





呼びかけて、ステージ入り口の前まで連れてきた。

あなたの後ろに立って、そっと抱き締めた。





「…」

『…っ』

「……いいな?」





深呼吸をすると、覚悟を決めた顔をして

巻き付けて胸に置いてある俺の手を、トントンと2回叩いた。





「…行ってこい。」

『…』





その瞬間、あなたはステージへ歩いて行った。





「え、すごく綺麗!」

「絶世の美女じゃん!」

「吸血鬼のコスプレかしら!」

「すごく似合ってるー!」

「悪女感やべぇー!」





「あなたー!」

「あなた!」

「エレンもミカサも落ち着いて…」

「いいぞ!流石あなただ!」

「綺麗!」






「……ほんと、綺麗だな」






ステージ裏からでも分かる。

アイツは本当に綺麗だ。

女を強調するようなメイクに、すらっと伸びる手足

正しい姿勢に、真っ直ぐな歩き方

リズムよくヒールの音が聞こえる度に、吸血鬼のドレスのレースが流れる。

正面で見てみたかったけど、ここでも十分綺麗なのは分かる。

観客も大騒ぎだ。

綺麗だと騒ぐヤツや、寧ろ声が出ないヤツ。

審査員までも口を開けていた。

どーだ!俺の女!





『お、終わった…』

「おう、お疲れ。」





ステージから帰ってきて、歩いただけなのにグッタリしていた。

そりゃそーだな。

水の入ったペットボトルをやると、一気に飲んだ。





「そんな勢いよく飲んだら咽せるぞ」

『ぷはっ……はぁ…』

「上出来じゃねぇか。審査員の奴らボケーってしてたぞっ」

『本当ですか?』

「おう」

『ならやれることはやれましたね!』

「あぁ、バッチリだ」

『やった!』





嬉しそうだな。

可愛いやつ。





『お腹空きました』

「もう昼の時間だな。これからは自由行動になってて、明日ミスコンの発表があるんだよな。3位までに選ばれた奴らはステージで挨拶だとよ」

『1位取れなかったら掃除…』

「まぁそう考えずに気楽に待とうぜ」

『気楽になれるか心配です…』

「ま、まずは腹を満たしに行くか」

『はいっ!』





着替えてくると言って更衣室へ。

ステージ出口で待っててくれと言われたな。

なら待ってるか。





「あのー」

「?…」





ステージ出口で待っていたら、声をかけてきた女2人。

んだコイツら…?





「お兄さん何年?」

「…一年っスけど」

「わぁ!一年生なのにこんなにカッコいい人いるなんて!」

「今年の学年はイケメンが多いんだなぁ…」

「はぁ…」





褒めてくれんのはありがたいけど、何しにきたんだ…?





「じゃあ後輩くんだね!」

「後輩くん今暇ー?」

「暇じゃねぇっス」

「誰か待ってるの?」

「彼女を」

「やっぱ彼女持ちかー!」

「じゃあ彼女も入れていいから!遊びにいこーよ!」





あなたとの時間が減るだろうが!

誰がそんなのに行くか!





『…ジャン!』





「!」

「あ、彼女さん?」

『はい』

「あれ?さっきのミスコンに出てた子じゃない?」

「それなりにメイクしてたのに、ナチュラルだとこんなに可愛くなるんだ!」

「いいなぁ教えてほしー!」





面倒くさいタイプのナンパか、また別なのかはっきりしてくれ……

これ以上長引くとあなたが腹減ったって機嫌悪くなるんだから

いい加減にしてくれ…





「あの…」

『先輩の方達がジャンに声をかけようとしていたのは知ってます。』

「え?」

『更衣室に行く時にお2人のこと見ました。ジャンを追いかけて行きましたから』

「まぁそりゃ、カッコいいイケメンがいたら追いかけちゃうよ!」

「ねー!」

『…です…』

「ん、何?」





『ジャンは私の彼氏ですっ!』





「!」

「「!…」」

『…先輩達に取られるの、ヤです…』

「…ふふっ」

「?」

「あっはは!可愛い彼女だなぁ!」

「分かったよ。この高身長イケメン後輩くんは諦めるよ。」

「だってこんなに純粋で可愛い彼女がいるんだもん!」

「寧ろ推したくなる」

「は、はぁ…」

『えっと…』

「大事にね!イケメンくん!」

「あ、ハイ」





そう言って先輩さんらは去っていった。

なんだったんだ?

っていうか…





「…」

『……//』





今更になって恥ずかしがってやがる。

可愛いなぁ本当に。





「そんなに取られたくなかったか?」

『ジャンが気づかないのが悪いんですよ…//』

「気づく?」

『文化祭が始まった時から、ジャンはずっといろんな女性に見られてるんですよ!』





マジか。

コイツに夢中で全く見てなかったぜ…





『……私はジャンの彼女です』

「お?おう、そうだな?」

『ジャンの彼女ですもんっ!』





そう言って出し物のある方へ走っていった。





「…あー、可愛い」





本当に重症だな。

俺は照れ臭くなりながら、アイツの後を追いかけた。








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