天乃は猿山の声で目が覚めた。
ふわぁっと呑気に欠伸をする。
もどかしさを覚えたのだろう、猿山は少し顔を顰めた。
本格的に覚醒したのだろう。
天乃は、ぱっと体を起こし、そう叫ぶ。
天乃は軽く辺りを見回した。
そう、二人が寝ていたのは図書室だった。
本棚が並ぶ中、二人は読書スペースであろう、椅子とそこそこの大きさの机がある場所に居た。
窓も近く、オレンジ色の夕陽が広いその部屋に差し込んでいた。
そう言いながら猿山は窓を──正確には窓から見える景色を──指さした。
校庭の先に見えるのは、夕焼け空に陽の光を照り返して輝く一面の稲田。
二人の通う零陀小学校は住宅街の中心にある。
そのため、三階にある図書室から見えるのは屋根ばかりのはずだ。
図書室の奥の方へと歩き始めた猿山を追うため、天乃は慌てて窓の側から離れた。
目覚めるなり、ぺん子はそう叫んだ。
そう、二人は今の今までファンである小説の舞台へと赴きその町にあった古い学校にて摩訶不思議な体験をしていた。
一部始終が終わった後、帰るためにバスに乗り込んだのだが……
気持ちが昂っていたのだろう。
本来の落ち着きを取り戻したらだ美はそう告げた。
暫く何か考え込む様子を見せていたぺん子が口を開く。
異世界だなんて突拍子もない話だ。
でもらだ美も薄々感じていた。
その ── 違和感を。
確かに、街灯が有ってやっと前が見える暗い町に居たのに、けして近くない窓から夕陽が差している。
その通りだった。
らだ美は視線をぺん子の奥へと固定して固まった。
ぺん子が後ろを振り返るとそこには
ぺん子とらだ美によく似た顔立ちの少年二人が、
本棚の影からこちらを伺っていた。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。