noside
そして翌日、いつもの彼らはそれぞれ選抜試験に向けて準備を始めていた
しかし、302号室には3枚の金のコインと険しい表情でにらめっこしているフィンが
こうなった理由は…
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そして一人3枚ずつ金のコインが配られたのだが、そこが問題になった理由である
今回の選抜試験は前倒しになったのもあって金のコイン3枚以上所持している生徒が参加することになった
…つまり、金のコイン3枚である彼も参加しなくてはならないのだ
参加するつもりもなかった彼はギャン泣きである
ひたすらにどうしようと頭を抱えていると、部屋のドアが開く
相も変わらずシュークリームの乗った皿を持って、そう話しかけるあなた
フィンの向かい側の椅子に座ってパクリとシュークリームを頬張りながら答える
そんな彼女に彼は少々ディスりの入ったツッコミをしてしまう
かと思いきや、あなたは唇にクリームを付けながら真っ直ぐ彼を見て言い放つ
無表情ながらも安心感のあるその言葉に、思わず彼は少し感動する
二言目でゴリゴリにフィンの精神を削っていく
かなりの強さを誇る彼女に全力で来る。などと言われたら、彼にとっては大ダメージだ
そんなことにも気付かず、あなたはシュークリームを頬張り続けていたが
あなた・あなたの名字side
夕焼け空が広がる時間帯
…少し声が聞きたくなってとある人達に電話をかけた
すぐさま出る音がして声をかける
お母さんは伝言ウサギ持ってないから必然的にお父さんにかけることになるんだよな
相変わらずせわしない人だ
私から連絡ってしないことが殆どだけどさ…
言い切ると、お父さんの声が少し遠くなる
奥から聞こえる高い声…お母さんかな
気持ちをハッキリと伝える
私の、心からやりたいこと
ちょっとズレてるところもあるけど、お父さんのこういうところ嫌いじゃない
数秒間の沈黙が続く
聞き慣れた高めの声
呑気なお父さんに比べてハキハキしているお母さんのこの感じが懐かしい
昔から友達なんていなかった私を多分心配しているんだろう
人付き合いといえば常連のお客さんぐらいだったし
簡単な言葉かもしれないけど、私にとっては充分勇気づけられる言葉
この優しさに、昔から触れてきたから
それから少しだけ普段のことを話して、電話を切った
…よし、頑張るか
選抜試験、絶対勝たないと
ゆっくり深呼吸をして、気を引き締めた
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!