第38話

暁くん ①
48
2018/02/18 12:42
暁 陽太 アカツキヨウタ
橘…さん…?
幻聴だろうか。顔をあげると暁くんがいるようにみえる。幻覚か。さすがに幻聴や幻覚まできてしまうとそうとう暁くんに会えなかったことがショックだったのか。
暁 陽太 アカツキヨウタ
大丈夫?何かあった?
暁くんは私の側まで来て背中をさすってくれる。
やばい、触られている感覚まである。相当な重症らしい。
暁 陽太 アカツキヨウタ
席に座ったほうがいい?
橘 優羽 タチバナユウ
暁…くん…。
暁 陽太 アカツキヨウタ
何?
幻聴でも幻覚でもないとそこで初めて気付いた。
橘 優羽 タチバナユウ
なん…で。部活は?
暁 陽太 アカツキヨウタ
部活?今日、放課後の図書当番頼まれてさ。だから俺は図書室にいる。
暁くんはいつもの笑顔で答えてくれたが私はまだ状況を掴めていない。さっきまで幻聴や幻覚だと思っていた相手が、会いたかった相手が、今目の前にいるから。
橘 優羽 タチバナユウ
そう…。
暁 陽太 アカツキヨウタ
大丈夫?さっきまでカウンターの下に落ちた本のしおりを取ろうとしてしゃがんでたんだけど、顔をあげたらドアの前で橘さんが泣いてるからびっくりしたよ。
カウンターの方でしゃがんでいたら私がいるドアの方からその人を見ることは出来ない。それが分からずに私は1人泣いてしまったのだ。
橘 優羽 タチバナユウ
ごめん。ちょっとした勘違いっていうか…なんか…ね。
暁 陽太 アカツキヨウタ
何それー
クスクス笑いながら私に問いかける。
橘 優羽 タチバナユウ
いや…
そこまで話してから、私は近くのパソコンに反射した自分の顔を見た。ブサイクすぎる。私はそこまでおしゃれやメイクに興味があるわけではないが、それでもブサイクすぎた。また下を向いて顔を隠す。
暁 陽太 アカツキヨウタ
まぁいいや。よかった、涙止まって。
私はタオルを出そうと鞄の中に手を入れた。
橘 優羽 タチバナユウ
あっ…
暁くんにあげるために持ってきたガトーショコラが手に当たる。
暁 陽太 アカツキヨウタ
ん?
暁くんは不思議そうな顔をしている。2人きりではある。しかし、こんなおかしな状況で渡してもいいものか。渡そうか、渡すまいか迷っていると…
暁 陽太 アカツキヨウタ
これ、食べる?
橘 優羽 タチバナユウ
えっ…
差し出してくれたのはきっと誰かから貰ったであろうチョコレートだった。
暁 陽太 アカツキヨウタ
俺、甘党だと思われてんのかめっちゃ甘いのが多くてさ。あんまり甘いものは食べられないんだけど、断るのも悪いから毎年全部受け取っちゃって…。橘さん、甘いの好き?
頭を掻きながら暁くんは私に言った。そして驚く。まさか暁くんが甘いものが苦手な人だったとは。
橘 優羽 タチバナユウ
ごめん…私も甘いの苦手で…。
暁 陽太 アカツキヨウタ
そっかー。また妹行きかなー。
橘 優羽 タチバナユウ
妹…いるの?
暁 陽太 アカツキヨウタ
いるよ。今中3。
橘 優羽 タチバナユウ
うちの弟と同い年!
暁 陽太 アカツキヨウタ
そうなの⁉︎橘さん、弟いたんだね。
橘 優羽 タチバナユウ
うん。弟もサッカーやってて。
出来れば弟の話はしたくなかったけど意外な共通点が見つかり話す。
暁 陽太 アカツキヨウタ
もしかして…それって橘 羽音くん?
橘 優羽 タチバナユウ
えっ、そうだけど…なんで知ってるの?
暁 陽太 アカツキヨウタ
一緒にサッカーしたことあるよ。公園で。
どういうこと?

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