橙side
あれから数日後
俺たちはころんの家の玄関の前に、俺となーくんは突っ立っていた
理由は一つ
"あの作戦"を実行するためである
ただ……
いざ対面、となると、数日前まで『ボコしてくるわ』精神でいた自分が内側に引っ込んでしまった
なら俺とは最高に相性が合わない
『やればできる』という迷言が一時期流行したが、俺はどうしてもその波に乗ることができなかったのである
つまり俺の場合は、思い込みというものは意味がないものに近いのである
何考えてんだ俺
一様、ころんは今外出しているに
"レジェンドランクの友達と遊んでくる"というテイで。
突然、なーくんが右手を伸ばした
その先には……インターホンのボタンが。
ピンポーン
人生で一度は聞いたことがあるであろう音が流れる
それと同時に俺の心は絶望へと押し入った
ガチャッ
なんか、すごく愛想が悪そう
初対面の人間に、敬語を使わない時点でこいつの人間性が見えてしまう
よし、
回想
「ジェルくんのほうが上なんだ」ってことは絶対に証明して
※nomen…「眠るライリー」の信者そう言って俺は、左胸のポケットにしまっておいたブロンズランク(上段)を示すバッジをどり出した
おそらく、なーくんはこのバッジを間近で見たことがなかったのだろう
俺のバッジを見るなり目がびっくりしたように見開いた
そういってペコペコと頭を下げてきた
なんやこいつ、急に態度変えてきた
いや、俺が立場を名乗ったからだろう
急にころんの親が態度を変えてきたからか、なーくんはころんの親の様子を見てドン引きしている
正道会のランク制度がこんなに厳しいものとは思ってなかったのだろう
俺と正道会との関係は、「仮所属」である
仮所属、というのは、ランクや身分制度は継続されるものの、信仰の内容……まぁ、俺やったら眠るライリーやから「寝る」ことやな
その内容を一切行わないこと信者のことを「仮所属」という
莉犬の場合、不満はあるだろうがちゃんと年に1回行われる「laraの集合」にはちゃんと足を運んでいるし、歌うライリーの方もちゃんと信仰しているらしい
俺には到底できないが。
俺が脱会ではなく仮所属を選んだ理由
それは、"こういう宗教関係のことで役にたつから"である
現に今、俺はころんの親を従わせることができている
こういう時、俺のランクは役に立ったりするからな
さぁ、
ここからが戦いだよ
桃side
現在、俺と黄瀬は影で待機中
ジェルとなーくんがころんの親と話をしている最中、ふと疑問が浮かんだ
俺がずっと話しかけている間も、黄瀬はジェルたちの方をじっと見つめて目を離さなかった
……なんだコイツ、俺より慣れてるじゃねぇか
こうして半分茶番になりつつある俺たちの会話が進んでいる最中にも、ジェルとなーくんは真剣にころんの親と向かっている
ジェルが左胸ポケットから何かを取り出す仕草をする
ブロンズランクのバッジか……
多分、ころんの親に自己紹介でもしているのだろう
そうか、こいつはまだ仲間になってから日が浅い
ライリーのことだってほとんど知らないだろうし、ランク制度やかんざしのこととなると以ての外だ
……めんどくせぇ
さすが黄瀬、とでも言ってやろうか
飲み込みが早くて、こちらからしたらだいぶ助かる
そう言って顎に手を当てる黄瀬
多分、今俺から聞いた情報を自分なりにまとめているのだろう
きっと、ジェルの自己紹介が終わったのだろう
ころんの親はオドオドして、ジェルに何でも従うかのような態度をとっている
……それを見てなーくんはドン引きしているが。
まぁ、今言ったことは全部ジェル情報だけどな
青side
僕たちは今、ジェルさんとなーくんを観察するさとみさんと黄瀬さんを観察している。(?)
本当は、僕は適当に家から抜け出して、莉犬さんは家で待機という予定だった
でも、僕がその予定の通りに家を出たら、莉犬さんが出待ちしてて、「スパイごっこしよ」という謎発言から今に至る
正直ジェルさんたちに任せっきりにするのも気にはかけたが、それで僕が変に作戦に関与して良からぬことが起きたらいけないだろうと思い静かにしようと思っていたのに。
これじゃ、元の子もないじゃないか
さとみさんと黄瀬さんをじっと観察しているのと同時進行で、莉犬さ……莉犬くんから敬語禁止令を命じられた
一言で言えばすごく「不便」、二言で言ったら「気持ち悪いからやめてほしい」
あだ名で呼んでいた友達を急に名字呼びするような気分だ。
僕のタメ口に慣れていない口ぶりに思わず笑みがこぼれている莉犬くん
なんかすっごく腹が立ってきた
親が人殺しライリーの信者だからだろうか
いや、誰だって同じ屋根の下に人殺しがいたらいい気分はしないだろう
そういって、あはは…と頭をかく莉犬くん
さとみさんに正道会の知識をある程度身に着けさせておいてよかったな、と思う反面、黄瀬さんに説明できるほど詳しくなってしまったのか、と少し怖くもある
いつか興味を持ってしまわないだろうか、と。
いや、そんな心配することはないか
だって、

そう言ってくれたのだから
紫side
先ほどから、ジェルくんの顔を伺うように話をするころんの親
年上が年下に敬語、社会に出たら仕事などで稀に見る光景ではあるだろうが、あまり慣れない。
ころちゃんの親には聞こえないように話しかけてきたジェルくん
何かと思えば、「かっこいい話の切り出し方」を身に着けたいらしい
俺の制止を遮ってころちゃんの親に話し出すジェルくん
待って、半分ノリで言ったセリフだったのに……!!
言ってしまった……
そういってジェルくんに掴みかかろうとするころちゃんの親
ただ、そのジェルくんの手には今もブロンズランクのバッジが握られている
ジェルくんより階級がしたのころちゃんの親は、それに気がついたようだ。
ころちゃんの親は急に顔を真っ赤に変え、ジェルくんに反抗した
突如現れたころちゃんは、じっと、自分の親を見つめた
いや、" 睨んだ"といったほうが正しいだろうか
『縁を切ろう、母さん』
そう言って殴りかかろうとするころちゃんの親
でも……
物陰からでてきたさとちゃんと黄瀬さん
その黄瀬さんの手に持つスマホには、110 と書かれている
※singis…「歌うライリー」の信者莉犬くんの名前を聞くと、ころちゃんの親は驚いたように目を見開いて莉犬くんを見た
そういってころちゃんの親は涙を浮かべた
こうして、長い長い作戦は幕を閉じた
はっぴーにゅーいやー
長くなってしまってすんません、スクロールお疲れ様です



















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。