第90話

ありがとう。そして──
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2024/03/27 09:00 更新
楠若葉くすのきわかば
師匠……勝ったよ……私…
若葉はそう言って微笑んだ。
  乙音澪おとねみお
わか──ッ!?
その瞬間、若葉の体がゆっくりと倒れていく。
  乙音澪おとねみお
……っ!
私はとっさに若葉と地面の間に滑り込む。若葉は私の膝の上に倒れた。
  乙音澪おとねみお
若葉!若葉!
楠若葉くすのきわかば
し、師匠……私…少し、つかれ…
若葉は途切れ途切れにそう呟いて意識を失う。出血が酷い。無理もない、さっきまで命懸けで戦っていたのだから。
  乙音澪おとねみお
はやく治療しないと…
私は若葉を抱きしめながら周りを見渡す。しかし、止血できそうなものは無い。
  乙音澪おとねみお
う゛
少し体をねじると身体に激痛が走った。おそらくヴァイルに斬られた傷のせいだろう。無理に動くと私の命も危ない。
  乙音澪おとねみお
はぁ……おとなしくみんなを待つしかないわね…
私はそう言いながら天井を見上げた。
  乙音澪おとねみお
終わった…のよね…
本当に信じられない。私が何年も何年も必死に追いかけてきた敵が今段々と崩れ去っている。「四面楚歌」を追い続けている間、色々な別れや出会いがあった。「百花繚乱」のみんなと出会えたこともその1つだ。
そっと、若葉の頭を撫でる。
  乙音澪おとねみお
あなたとの出会いにも感謝しないとね。
だんだんと視界がボヤける。私も意識を保てているのが不思議なぐらい出血しているので意識を失いかけているのは当たり前ではある。でも、心配はいらない。
だって──
柊美琴ひいらぎみこと
澪…!若葉…!
九条渚くじょうなぎさ
…っ
如月陽菜きさらぎひな
みんな、あそこに!
蒼乃麗華あおのれいか
いた…ッ!
「百花繚乱」の      信   頼   で   き   るみんなが来たんだから。
戦闘が終わり、静まり返った「四面楚歌」の拠点。月光がスポットライトのようにある男を照らす。
ヴァイル(vile)
許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない…
ヴァイル(vile)
あいつら…この俺を嘲笑うかのように゛…!
ヴァイル(vile)
楠若葉…特にお前だけは…お前だけは!!絶対に殺してやる…絶対だ…殺す…コロス!!!!
ヴァイルはそう言ってふらふらと立ち上がる。
ヴァイル(vile)
あ…?
ふと自分ではない人影を見つけた。
???
あら?気づかれてしまったわね。
ヴァイル(vile)
お前…
???
無様な姿ね、ヴァイル。かつて我々を支配していたとは思えないぐらい。
彼女はそう言ってヴァイルの目の前に姿を現す。
ヴァイル(vile)
暗澹あんたん…ッ
暗澹あんたん
さすが私と彼の娘。あの子ならやってくれると信じていたわ。
暗澹はそう言って娘を思い出すかのように優しく微笑んだ。
暗澹あんたん
夜が明けたら警察がきて貴方たちは逮捕されるでしょうね。
暗澹あんたん
流石の貴方でもたった数時間で証拠を隠滅し、逃亡するなんてできない。
暗澹あんたん
でも10年後だったら?また貴方はどうにかして同じことをするわ。警察に捕まろうが死ぬ寸前まで追い詰められようが貴方が生きてさえいればこの悲劇は終わらない。
暗澹はこれでもかというほどに輝く月を見ながらそう言う。
ヴァイル(vile)
何が言いたい
ヴァイルは目を細めて暗澹にそう問いかける。
暗澹あんたん
私が終わらせるの。
暗澹はそのままヴァイルの右手に手錠をかけ、自分の片腕にも手錠をかけた。
ヴァイル(vile)
なっ…?!なにを゛っっ!!
ヴァイルは焦ったように手錠を手からぬこうとするが自分の腕を傷つけるだけで抜けることは無い。
暗澹あんたん
鍵は私が飲んだわ。だからこの手錠は一生開くことは無い。
ヴァイル(vile)
まさかお前も一緒に…
ヴァイルが目を大きく見開いて暗澹に尋ねる。
暗澹あんたん
えぇ、もちろん。あなたの死を見届けないといけないでしょう?
暗澹はそう言って笑う。
ヴァイル(vile)
ば、バカな真似はやめろ!!…そ、そうだ!お前には娘がいるんだろ!?だ、だから…!!
暗澹あんたん
そう、私には娘がいるわ。それはもう大切な。でもだからこそここでお前を確実にやらないといけない。
この先、娘が「四面楚歌」のことを思い出さず過ごせるように──と。
暗澹には一切の迷いがない。
暗澹あんたん
これはずっと前から決めていたこと。今更お前ごときの言葉で覆ることは無い。
暗澹はそう言い放つと上着を脱いだ。体には沢山の爆薬が巻きついてある。
ヴァイル(vile)
…は…ッ?
暗澹あんたん
これだけの爆薬があれば死ぬわよね?
暗澹あんたん
まぁ、この爆薬で死ななくてもこの建物の全てに爆薬を仕掛けてあるわ。既に重症を負っている状態だろうし、建物の瓦礫の下敷きになって死ぬでしょう。
暗澹は満足そうに笑った。
ヴァイル(vile)
い、嫌だ…、死にたくない…ッ!死にたくない゛!!
ヴァイルは怯えながら下へとつづく階段へといずっていく。しかし、暗澹と手錠で繋がっている状態なので階段まであと一歩という所で動けなくなる。
暗澹あんたん
貴方に色々なものを奪われた。私の部下や同僚…そして夫。
暗澹あんたん
危うく娘まで奪われそうになった。
暗澹あんたん
次は私が貴方の命を奪う番よ。
暗澹はそう言って猛毒のような殺気でヴァイルを睨む。
ヴァイル(vile)
ッッ!!!
ヴァイルが生きてきて今までに感じたことの無い殺意。ヴァイルは思わず後ずさりした。暗澹はそんなヴァイルに目を向けず月夜を見る。
暗澹あんたん
唯一の心残りは若葉ね…
暗澹あんたん
でもあの子なら大丈夫。信頼出来る仲間に出会えて、確実に成長している…。私がもういなくても──なんて言ったら怒られるかしら?
暗澹は幸せそうに目を細めて微笑む。
暗澹あんたん
さて、そろそろね。
暗澹はそう言いながら恐怖でうずくまるヴァイルを見る。
ヴァイル(vile)
死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない
暗澹あんたん
はぁ…なんて惨めなの?こんな奴に私たちは…いや、やめましょう。
暗澹あんたん
これから死ぬというのにこんなに清々しい私の方がおかしいのかもしれないもの。
暗澹あんたん
"死ぬ"…か。最期なのよね。これが。
暗澹はそう呟いて俯く。
暗澹あんたん
私もあなたの元へいけるのね…、朧…
暗澹はスイッチを取り出した。
ヴァイル(vile)
お願いだ!!助けてくれ!!死にたくないんだ!!い、今までのことは謝るから!それで許してくれよ!!!死にたくた無い!!死にたく゛
暗澹あんたん
はぁ…許すわけねぇだろ、くたばれ悪魔め
暗澹は満面の笑みを浮かべてスイッチを押した。
ありがとう、そしてごめんなさい。
ずっと愛しているわ、若葉───
投稿が遅れてしまって申し訳ございません。
そしてこの度この小説は1周年を迎えました㊗️
本当にありがとうございます。皆様のおかげでここまで続けることができました。
これからも頑張りますのでいいねとコメントよろしくお願いします。

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