わかってはいたけど、
すでにカップルにしか見えないような2人を直接見るのは、心に来るものがある。
借り人は、あまりで決まったもの。
別にやりたかったわけでもないし、やりたくないわけでもない。
どうせなら、「幼馴染」とかがいいな。
そんなお題、あるかわからないけど。
けど、彼が他の女の子に連れて行かれたりしたら嫌だから…。
彼は、"私の"幼馴染なんだから。
あわよくば、今ここで私を攫っていって欲しいなんて、少女漫画のようなことを考えてしまう。
それとも、これが恋する乙女の性というものなのか。
俺が障害物競争をゴールしたとき、幼馴染の方を見れば、奏斗の隣に座っていた。
何も、思わなかった。
いや、それは嘘かもしれない。
ただ、激しい怒りや嫉妬はなかった。
もちろん、俺だって彼女の側にいたい。
けど、あの日、奏斗が言っていた言葉が、そういう意味だったら…。
奏斗が、彼女に恋をしているというならば、俺はきっと、それを応援するだろう。
優しくて、面白くて、常識も礼節もしっかりしている奏斗。
次期生徒会長候補だとも言われている。
そんな彼になら、彼女を預けられると思ったから。
でも、やっぱりまだ子供な俺は彼女の横という立ち位置を手放せなかった。
隣にいる奏斗が、借り人で招集された俺の幼馴染を見て言う。
奏斗には冗談と捉えられるかも知れないが、俺は彼女が他人にかっこいいと言っている姿を見たことがないからこそ、こう言っている。
たとえテレビに映る超人気俳優でも、アイドルでも。
そうこう言っているうちに、彼女の番が来た。
奏斗に言われてテントの位置を確認すると、確かに2年1組の場所だ。
彼女が1組で仲がいいのは雲雀だけだったと思う。
だったら、お題は雲雀に該当するようなもの?
それとも、1組というお題?
案の定、彼女は雲雀の手を引いてゴールへ向かう。
雲雀が連れて行かれた様子を見て、1組の女子たちが声を上がる。
その中には、俺の幼馴染を羨ましいと言う人や、妬む人、2人を恋仲だと勝手に推測する人など様々だ。
しかし、そのどれもが俺は気に食わなかった。
雲雀と共にゴールをした後、別れて俺たちの元に彼女が戻ってきた。
すかさず、奏斗が気になっていたことを聞く。
歯切れの悪い彼女の返事に、心臓がどくどくと音を立てる。
その瞬間、なにかが割れる音がした。
心か、頭か、わからないけれど。
所謂、絶望ってやつだろうか。
今まで、彼女から人に対するそう言った言葉を聞いたことがなかったからこそ、辛い。
本当は、ずっと雲雀のことかっこいいって思ってたのかな。
本当は、先輩やクラスの奴らのこともそう思ってたりしたのかな。
そんなどうしようもない考えに脳が支配される。
雲雀の凄さはわかってる。
わかってるからこそ、悔しかった。











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。