教室の静寂の中で、黒板に書かれるチョークの音だけが響いている。
ハルカは机の下で、そっと自分のお腹のあたりに手を当てた。制服の生地越しに、そこには確かに「熱」がある。
アカリの一族、甘露寺家には代々守り継いできた「秘密の祠」がある。それは古代都市へと繋がる唯一の門であり、その扉を開く鍵こそが、アカリの身体に宿る「聖なる宝石」なのだ。
ふと、隣の席のユウタがアカリの視線に気づいたのか、ちらりと彼女の方を見た。ユウタは勘が鋭い。アカリが時折、無意識にお腹を押さえて苦しそうにするのを、彼は気づいているのかもしれない。
授業中、アカリの宝石が微かに鼓動を打つ。
ドクン、ドクン……と、心臓とは別のリズムで。
それは、校舎のどこか、あるいは昨日の隠し扉の先で、何かが彼女を呼んでいる合図だった。
その時、アカリの視界の端に、窓の外を横切る「黒い影」が見えた。
ケンジだ。彼はまだ学園の中にいる。しかも、彼の手にある黒い紋章の欠片と、アカリの宝石が今、共鳴し始めている。
アカリは思わず立ち上がりそうになるのを必死でこらえる。
その様子を見ていたレンが、背後から小さく囁いた。
レンは包帯の下で眉をひそめ、懐の中の蛇をなだめている。
ハルカは驚いてレンを見た。彼にはバレていたのだ。一族の秘密が、今、学園の深淵を目覚めさせようとしていることに。
ホームルームが終わった瞬間、ハルカの宝石が耐えられないほどの熱を帯びた。
教室の床が、まるで古い遺跡の石畳のように、かすかに震え始めたのだ。
















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!