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第30話

30
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2026/02/28 15:00 更新
扉をコンコンとノックする。
岩本照
はい。
あなた
照、そのまま開けないで。
岩本照
どうした?
扉越しに聞こえてくる照の声。

自然と扉に額をくっ付ける。
あなた
寝る前に照に会いたくて…
岩本照
じゃあドアを…
あなた
ダメ。
岩本照
なんで?
あなた
照の顔を見ると弱音吐いちゃいそうだから…
明日の大会が終わるまで弱い言葉吐きたくないの。
それに…
岩本照
それに?
あなた
明日が終わるまで私達は仲間だって言ったのは私だから…
甘えたりしたくないの。
岩本照
じゃあなんで今ここに来たの?
あなた
だよね。
矛盾してる。
岩本照
…抱き締めちゃダメ?
あなた
ダメ。
額でコンと音を立てる。
あなた
照、明日頑張ろね。
岩本照
おう。
あなた
終わったらいっぱい抱き締めて。
岩本照
骨が砕けるほど抱き締めてやるよ。
あなた
え~それはやだな。
…ごめんね。もう寝るね。
岩本照
あなた。
あなた
ん?
岩本照
大丈夫だから。
自分に負けるな。恐れるな。
明日の主役はお前で誰よりも光ってる。
後は明日俺らと一緒に掴み取りに行くだけだ。
あなた
うん…
岩本照
だから頑張らなくてもいいんだ。
お前がお前のまま明日踊ればそれでいいんだから。
あなた
うん…ありがとう。
岩本照
おやすみ。
あなた
おやすみ。
照の言葉は不思議と私の中に流れていた何か冷たいものを温かくしてくれた気がした。


力が湧いて来る。

ありがとう、照。

そして大会当日。
渡辺翔太
やべ、トイレ行きたくなってきた。
阿部亮平
さっきも行ってなかった?
宮舘涼太
康二、少しはじっとしてろよ。
向井康二
だって~
深澤辰哉
なぁ、俺の今日の前髪良い感じじゃね?
佐久間大介
お、確かに。
ラウール
どうせ汗だくになるから意味ないんじゃない?
岩本照
よーっし!円陣組むぞ!
その言葉と共に照に肩を組まれる。

照と反対側の肩をラウール君が立つ。
ラウール
岩本くん、こういう場合あなたに触るのはOK?
岩本照
まぁ良しとしよう。
もう二度と触れないだろうし。
ラウール
岩本くんの許可も下りたことなので失礼しまーす。
そう言いながら私の顔を見てニッと笑いながら
ラウール君の手が照と反対側の肩を掴んだ。


まずい、緊張してきた。
ラウール
あなた、顔を上げて。
その言葉で顔を上げると私を見ている皆の顔が目に入る。
目黒蓮
あなたの夢は?
あなた
…今日この大会で皆で優勝して、また毎日踊って生きていく。
宮舘涼太
踊れない日々は辛かったよね?
あなた
うん…
向井康二
それでもあなたはまたここまで戻ってきた。
あなた
うん。
阿部亮平
踊りたいって気持ちもう二度と捨てちゃダメだよ?
あなた
うん…捨てない。
佐久間大介
今日は誰よりも昨日の自分よりも高く飛んでやろうぜ。
あなた
うん。
渡辺翔太
覚悟はいいか?
あなた
うんっ
深澤辰哉
一緒に掴みに行こう。
あなたは1人じゃない。
俺がいるから。

皆の顔を見渡すと不思議と緊張して
強張っていた体から力が抜けてゆっくりと息が出来た。


私の肩を掴む照の手に力が入る。
岩本照
あなたは誰よりも輝いている。
誰よりも光ってる。
自分を信じて、俺らを信じて踊ればいいんだよ。
あなた
うん。私は1人じゃない。
照の手が肩から頭に触れて、撫でた後また肩を掴んだ。
岩本照
絶対優勝するぞ!
お前ら全力で踊れよ!
メンバー
おう!
岩本照
いくぞ!
メンバー
おう!

掛け声と共に全員の足で地面を踏みしめる音が響く。

そのまま全員でステージに向かいそれぞれの位置に立つ。


目を閉じると皆と過ごした日々が走馬灯のように思い出される。
ラウール
あなた、大丈夫?
あなた
うん。大丈夫。
皆がいてくれて本当に良かった…ありがとう。
胸の前で拳を握り締める。
あなた
今の私最強だから。
フッとラウール君は笑って正面を向くとライトが私達を照らした。


その後のことはもう覚えていない。

ただ音楽に合わせて体が勝手に動いた。


気付いた時には体中から不足した酸素を吸収するように息をしながら
会場が揺れるような拍手と歓声を浴びていた。




その後の優勝の言葉を聞いて嬉しさが込み上がって照の顔を見ると
照はすごい笑顔で私に向かってガッツポーズをした。


私は走って照に近づいてそのまま抱き着いた。
あなた
やった!やったよ!照!
岩本照
うんうん。
まぁ俺らとあなただから当然だけどな?

照が私の頭を撫でてくれた。

その手の温かさを感じると緊張の糸が切れた音して
一気に涙が溢れて止まらなくなった。
岩本照
頑張ったな。
最高だったよ。
あなた
怖かったよぉ…っ
ずっと怖かった。


認めてもらえなかったらどうしよう。

私には全然才能も何もなくて幼少期に優勝していたのは
ただの偶然だったんじゃないかとか
また誰かが傷ついたらどうしようとか
色んな不安が渦巻いてた。


でも言葉にすると崩れてしまいそうだった。


だから強い言葉に変えた。


そして何より1人じゃなかったから前だけ向いてられた。


照が私に希望と憧れをくれた。

皆が私を支えて自信をくれた。輝かせてくれた。


色んな感情が溢れて止まらず照の胸で泣き続けた。
ラウール
ずるい…なんだよ、彼氏だからなんだってんだ…
俺も一緒に頑張ったんだから俺に抱き着いてくれても…
目黒蓮
ラウ…諦めることも大切だぞ。
ラウール
分かってるよ!
あぁもう!
やっぱりあなたのダンス最高!
向井康二
良かった…良かったなぁ!
優勝出来たなぁ!
宮舘涼太
あぁ、当然だとは思ってるけど嬉しいな。
渡辺翔太
でも泣き過ぎな?
阿部亮平
そう言いながら翔太だってさっき隠れて泣いてただろ?
渡辺翔太
な、泣いてねぇし!
佐久間大介
頑張ったもんな俺達!
深澤辰哉
今日は今まで1番最高だった。
ラウール
特にあなたは最高だったね。
目黒蓮
あぁ。間違いなく主役だった。
向井康二
俺、あなたが出す音が好きやな。
佐久間大介
あ、なんかわかるかも。
向井康二
わかる!?
別に楽器使ってるわけやないんやけど…
宮舘涼太
ステップ踏んだ時の音とかだろ?
向井康二
そうそう。
渡辺翔太
何か確かに上がる音出すよな。
阿部亮平
不思議な子だよね。
深澤辰哉
本当。
目でも耳でも周りにいる人、見てる人を虜にする。
ラウール
俺はずっと虜だよ。
目黒蓮
そんなあなたを虜にする岩本くんってすごいね。
阿部亮平
本当。さすがうちのリーダーだよ。
ラウール
もうそろそろ邪魔しに行ってやろ。
向井康二
せやな。
今日ぐらいは俺らのあなたでおってくれやんと。
宮舘涼太
同感。
渡辺翔太
あなたー!!
佐久間大介
照ー!!
俺らとも感動のハグしようぜー!
そう言いながら皆がこっちに向かって走ってきた。
あなた
皆ー!ありがとうー!
ラウール
あなたー!
手を広げて向かってくるラウール君に近づく。

間に照が両手を広げて入って来てラウール君と抱き合う。
岩本照
おーよしよし。
ラウールやったな!
ラウール
ちょっと岩本くん!
俺はあなたと…
岩本照
ダメ。抱き着くのはダメ。
あなた
照はこんな時でもヤキモチ妬くんだから…
ラウール君ハイタッチにしよ?
照、それならいいでしょ?
岩本照
うん。
ラウール
握手がいい。
あなた
え?
ラウール
握手してもらえませんか?
あなた
いいけど…
ラウール君から差し出された手をぎゅっと握った。
ラウール
やっぱり俺の憧れはずっとあなた。
あなたのダンスを目指していつか越えたいと思ってるからこれからも踊ってて。
そしていつかまた一緒に踊ってくれる?
あなた
もちろん!
ラウール
今度は俺と2人で踊ろうね?
岩本照
おい。
ラウール
何ー?
仕事の話ですよ?
ビジネス。
岩本照
本当かよ…
皆で優勝の喜びを分かち合って握手やハイタッチをした。


その後は帰るまで私は色んな人に声をかけられた。

取材も受けたり、その日のトレンドに自分の名前が入るなど
一気に私の名前は世界に広がっていった。
岩本照
落ち着いた?
周りから人がいなくなって一息ついた時、照が声をかけてくれた。
あなた
うん…さすがに疲れちゃった。
皆は?
岩本照
先に打ち上げ行ってる。
あなたは行ける?
あなた
もちろん!
岩本照
じゃあ一緒に行こう。
ちょっとドライブでもしながら。
そう言いながら照は車の鍵を見せた。


照の車に乗り、運転している照の横顔を眺める。
岩本照
何~?
あなた
ん?かっこいいなって思って。
岩本照
ちょ、何?本当に。
あなた
照はいつでもかっこいい。
初めて見た時からずっと私の中で1番かっこよくて輝いてる。
照は車を停めて、私の方を見た。
岩本照
嬉しいんだけど…
ドキドキし過ぎて事故りそうになるからちょっと待ってくれる?
あなた
ありがとう。
私が踊れるのはいつも照がいたから。
照の音を聞いて照の踊っている姿を見ると力が湧くの。
岩本照
それは俺もだよ。
あなた
照。
岩本照
ん?
あなた
好き。
小さい頃に初めて見たあの時からダンスだけじゃなくて照のこともずっと好きだった。
これからもずっと好きよ。
照は照れたように一瞬、顔を赤くして目をそらした後すぐに私をぎゅっと抱き締めた。
岩本照
ありがとう。俺も好きだよ。
だからずっと一緒にいよう。
ずっと一緒にこれからも踊ろ。
あなた
うん…ねぇ、頑張ったご褒美ちょーだい?
岩本照
俺も欲しいと思ってたとこ。
照の唇がゆっくりと近づいて触れた。
岩本照
やっと触れられた…
我慢するの辛かった。
あなた
私も辛かったんだよ?
ねぇ、もう一回。
岩本照
これ以上したら止まんなくなるから…
続きは打ち上げ終わったら、な?
今日は俺ん家帰ろう。
あなた
うんっ!
岩本照
我慢してた分、今日は寝かせないから。
あなた
え~私もう疲れて眠いよ。
岩本照
なんで!?今いい雰囲気だったじゃん!
私も、とか言うとこじゃないの?
あなた
ふふっ、まだ照の彼女な私に慣れてないのかもね?
ほら、早く大好きな皆のとこ行こ?
岩本照
…打ち上げに行かずにこのまま連れて帰りたい…
目を閉じるといつでも照の踊ってる姿が浮かぶ。


照が踊ってると照から聞こえてくる音が好き。


照と踊ると足音が重なる。

同じリズムの音を足で奏でてる感じが好き。


これから私は色んな人と色んなリズムを刻む。

色んな音を知って表現していく。



でも照と紡いでる音が何よりも好きなことはきっと変わらない、永遠に。



- Fin -

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