扉をコンコンとノックする。
扉越しに聞こえてくる照の声。
自然と扉に額をくっ付ける。
額でコンと音を立てる。
照の言葉は不思議と私の中に流れていた何か冷たいものを温かくしてくれた気がした。
力が湧いて来る。
ありがとう、照。
そして大会当日。
その言葉と共に照に肩を組まれる。
照と反対側の肩をラウール君が立つ。
そう言いながら私の顔を見てニッと笑いながら
ラウール君の手が照と反対側の肩を掴んだ。
まずい、緊張してきた。
その言葉で顔を上げると私を見ている皆の顔が目に入る。
皆の顔を見渡すと不思議と緊張して
強張っていた体から力が抜けてゆっくりと息が出来た。
私の肩を掴む照の手に力が入る。
照の手が肩から頭に触れて、撫でた後また肩を掴んだ。
掛け声と共に全員の足で地面を踏みしめる音が響く。
そのまま全員でステージに向かいそれぞれの位置に立つ。
目を閉じると皆と過ごした日々が走馬灯のように思い出される。
胸の前で拳を握り締める。
フッとラウール君は笑って正面を向くとライトが私達を照らした。
その後のことはもう覚えていない。
ただ音楽に合わせて体が勝手に動いた。
気付いた時には体中から不足した酸素を吸収するように息をしながら
会場が揺れるような拍手と歓声を浴びていた。
その後の優勝の言葉を聞いて嬉しさが込み上がって照の顔を見ると
照はすごい笑顔で私に向かってガッツポーズをした。
私は走って照に近づいてそのまま抱き着いた。
照が私の頭を撫でてくれた。
その手の温かさを感じると緊張の糸が切れた音して
一気に涙が溢れて止まらなくなった。
ずっと怖かった。
認めてもらえなかったらどうしよう。
私には全然才能も何もなくて幼少期に優勝していたのは
ただの偶然だったんじゃないかとか
また誰かが傷ついたらどうしようとか
色んな不安が渦巻いてた。
でも言葉にすると崩れてしまいそうだった。
だから強い言葉に変えた。
そして何より1人じゃなかったから前だけ向いてられた。
照が私に希望と憧れをくれた。
皆が私を支えて自信をくれた。輝かせてくれた。
色んな感情が溢れて止まらず照の胸で泣き続けた。
そう言いながら皆がこっちに向かって走ってきた。
手を広げて向かってくるラウール君に近づく。
間に照が両手を広げて入って来てラウール君と抱き合う。
ラウール君から差し出された手をぎゅっと握った。
皆で優勝の喜びを分かち合って握手やハイタッチをした。
その後は帰るまで私は色んな人に声をかけられた。
取材も受けたり、その日のトレンドに自分の名前が入るなど
一気に私の名前は世界に広がっていった。
周りから人がいなくなって一息ついた時、照が声をかけてくれた。
そう言いながら照は車の鍵を見せた。
照の車に乗り、運転している照の横顔を眺める。
照は車を停めて、私の方を見た。
照は照れたように一瞬、顔を赤くして目をそらした後すぐに私をぎゅっと抱き締めた。
照の唇がゆっくりと近づいて触れた。
目を閉じるといつでも照の踊ってる姿が浮かぶ。
照が踊ってると照から聞こえてくる音が好き。
照と踊ると足音が重なる。
同じリズムの音を足で奏でてる感じが好き。
これから私は色んな人と色んなリズムを刻む。
色んな音を知って表現していく。
でも照と紡いでる音が何よりも好きなことはきっと変わらない、永遠に。
- Fin -











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。