🐥side
俺が絵画教室を辞めるまでの間、俺達は週1回の絵画教室で仲を深めていった。
泥だらけのクソガキと、いいとこのお坊ちゃまの 凸凹コンビ。
育つ環境は違えど、なぜか俺達は馬が合った。
俺のクソガキ武勇伝を面白おかしく聞かせると、テヒョンは腹を抱えて笑い転げ、口を動かさないで筆を動かしなさい!って先生に怒られたりした。
幼かった俺は、絵画教室を辞めてもテヒョンに会えると思っていたんだ。
学区が違うだけで、こんなにも遠い存在になるなんて、幼かった俺には想像すら付かなかったんだ。
テヒョンから連絡が入ったのは
街で数年振りに再開してから数日経った頃…。
翌週の火曜日。
放課後になって早速テヒョンに連絡を入れた。
暫く経ってテヒョンから返信が来た。
は?一人暮らしって何?
だってまだ中学生だろ?
なんで…?
テヒョンが様変わりしてたのと何か関係があるのか?
そんな事に慣れるなよ…。
どうなってるんだ、あいつは…。
それからすぐにテヒョンから住所が送られてきた。
俺はスーパーに寄って、適当に食料や飲み物を買い込んで、その住所に向かった。
中学生が一人暮らしするには、あまりにも不自然な佇まいの一軒家。
高い塀に囲まれた家は、外からは様子が全くと言っていい程見えない。
テレビでよく見る芸能人の家のようだった。
インターホンを鳴らすと、すぐにテヒョンが対応してくれて玄関までの石畳みを歩いて進む。
庭は手入れされずに雑草が生い茂り、人の気配がせず、違和感しか感じられなかった。
玄関のドアが少しだけ開き、中からテヒョンが顔を出す。
来客用のスリッパを俺の足元に置き、自分は薄暗い家の中を裸足でペタペタと奥へ進んでいく。
スーパーで買ってきた物をテヒョンに渡すと「ありがとう」と受け取りニコリと笑った。
その笑顔には力がなく顔色も優れない。
テヒョンの頬や首元を触る。
触った所で「熱いな」って思うだけで、今テヒョンがどのくらい熱があるかなんて、俺にはわかるはずもなかった。
テヒョンは、少しずつゆっくりと自分の事を話し出した。
穏やかに優しく話すテヒョンとは裏腹に、話してる内容は耳を塞ぎたくなるような内容だった。
俺にはあまりにも非現実過ぎて、どこまで本当の話なのかわからなくなってしまって…。
でも、この前再会した時にテヒョンから感じた「闇」を思うと、納得せざるを得なかった。
テヒョンは、まるで他人事のように自分の事を話している。
客観的に捉えないと、自分の置かれている状況を受け入れられないんだろうか。
淡々と抑揚もなく話す姿に
俺は胸が苦しくなったんだ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。