校庭の桜が風に揺れる。
花びらが舞い、朝日を受けて淡く光る。
その光景は、文化祭の帰り道も、あの日も、全部同じだった。
でも、今年は違う。
キミはもう、この街にはいない。
卒業式の式典が進む中、
俺は胸の奥がぎゅっとなるのを感じていた。
周りの友達は笑い、涙を流す者もいる。
俺も、涙が出そうになる。
でも、出せない。
涙を流したら、きっと止まらなくなるから。
この街で生まれて、キミと出会った。
たくさんの想いを抱えて、一緒に時を過ごした。
笑って、怒って、泣いて、全部、ここで重なった。
今日、俺はこの街を離れる。
キミのいない街を、あの思い出の残る景色を、胸に抱えて旅立つ。
校門をくぐる瞬間、空を見上げる。
遠い場所でも、きっとキミも同じ空を見ているはずだ。
「またね」がない事を知った3年前の今日。
それでも、心の奥で、キミの笑顔は小さく輝き続けている。
思い出が、押し寄せる。
あの日見た夕日、あの日見た花火。
自転車で一緒に行った海の記憶は、鮮やかに胸を染める群青色。
あれから3年。
中学を卒業したてだった俺たちは、もう大学生になる。
でも、キミを想う気持ちは、全く変わっていない。
式典が終わり、校庭を歩く。
桜の花びらがひらひら舞い、風に乗って遠くへ流れる。
胸の奥で、ぐしゃっと痛む思い出が、押し寄せる。
あの日の声、あの景色、全部が心に染みる。
自転車で駆け抜けた道、笑い合った花火、夕日の帰り道
全部、俺の胸の中に残っている。
涙がこぼれる。
だけど、それは悲しみだけじゃない。
ここで生きた日々、キミと過ごした時間
全てを抱えて歩き出す勇気になる。
キミのいない春。
それでも、歩く今日。
また会える日を信じて。
この街で、きっとまた会おう。
あの日の約束は、消えない。













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。