目の前に立ちはだかる草を手でかき分け、やっと2つのお墓が見えた。
何かないかと、お墓の周りをぐるぐる見ていると、古そうな紙が落ちていた。
○月▲日
なんか、不思議な体験だったなぁ……
未来から来たと言う少女に会った。
何故か、僕のことを知ってるらしい。
すぐに帰っちゃったけど、こんな不思議なことはあるものなんだなぁ……
日記の1ページがあった。
私は、恭介兄ちゃんと数年もかけてここに帰ってきた。
すぐに帰っちゃったとは言えない気がする……
他に何か無いかと探したが、なにも見つからなかった。
このお墓……恭介兄ちゃんが亡くなってから誰もお参りに来ていないのかな……
数十分後
ずりっ!!
なにかに滑って、私はどこかへと落ちていった。
ここって……
蘇る記憶……
私は、すぐに身を隠した。
恭介兄ちゃん……私のこと覚えていない…?
恭介兄ちゃんにはずっとタメだったから、丁寧語だと違和感を感じる……
恭介の屋敷にて
せっかくここに来れたんだから最後に伝えなきゃ…
夢にあったようなことが起きないように……
恭介兄ちゃんのような自分の意見をしっかり持っている人が理不尽に脅かされないように
今、私の目の前にいる人は、私のために私の人生に寄り添ってくれた人。
自分が持ってる意見で、自分を傷つけないでほしい。
相手の意見に傷つけられないでほしい。
未来でも今でも恭介兄ちゃんが優しい人であって欲しい。
恭介兄ちゃんは唖然としていたが、すぐに
池に入り、またお墓のところに戻ってきた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。