その日の夜更け。
僕は共有棟の屋上で涼んでいた。
ここは、星がとても綺麗に見える。
星を眺めていると、何故か心が和む。
なので、屋上で星を眺めてから寝る、というのがここ最近は続いている。
とても静かな、1人の時間。
このような時間は大切にすべきだと思う。
こうやってまったりしていると、気になるのは...現実世界のこと。
いつも魚をくれたやさしい漁師の人が、僕のことを探してるかもしれない。
いつも話しかけてくれた小さな女の子が、僕がいなくなって泣いてるかも...
そう思いながら、星空をぼーっと眺めていた矢先...
ニコニコしながら穏やかな瞳で星空を眺めている紗苑を見ると、不思議な気分になった。
そういえば、僕は紗苑のこと、何も知らない。
何処に居て、何をしていたのかも、どんな生活を送っていたのかも。
時折見せる寂しそうな表情が、まるで...触れないでほしいと言っているかのようで。
知りたいとは思っているけれど、どうしても聞けない。
それを聞いて、僕は黙り込んでしまった。
もし、元いた世界に戻れるなら。
そうしたらまた、あの温かい人々がいる街で、猫として暮らせる。
それは、願ってもないことだ。
...元いた世界に戻るということは、2人との別れを意味する。
僕にとってはこの世界も、元いた世界も、同じくらい大切な存在だ。
どちらかを選べと言われても、ただ思い悩むばかりで決めきれない。
それでも、どうしても、2人と過ごしていると、この時間が永遠に続くような気がしてならない。
紗苑の気遣わしげな視線が、揺れている心に突き刺さる。
ずっと考え込んでいる僕を見かねてか、紗苑は言った。
動揺から、言葉が見つからない。
気まずくなった空気から逃げるかのように、紗苑は去っていった。
暫くの間、僕は動けずにいた。
もやもやした気分のまま、もう一度夜空を見上げると、恨めしい程に美しく燦めく星々が目についた。
なんかいい感じになった気がする。
紗苑が意味深なこと言ってましたねー
この後のお話にどう響いてくるんでしょうかねぇ?













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。