第16話

私なりの善処
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2026/02/07 11:00 更新
アラスター
貴女は何故そう私の嫌がることをするんですかねぇ?

ホテルに戻ってきてから、テレビ番組に参加することにしたことをアラスターに話したところ、案の定みるみる機嫌が悪くなり、目元をピクピク動かしながらテーブルを爪で叩いている。
あなた
…それが私の娯楽でしてねぇ

いつか似たような問答をヴァギーとアラスターがしていたのを思い出し、その時のアラスターの回答を返してみる。
それを聞いて、アラスターはこちらを睨みながらジジッとノイズを鳴らした。
アラスター
ふざけてるんですか
あなた
そんなに怒らなくても良いでしょ?ちょっと1回出るだけ
アラスター
あの低俗で凡庸な箱には "2度と" 関わるなと言ったはずだが?
あなた
善処はした
アラスター
Ha!善処?結果が伴わなければ無意味ですね

姿が変わるほどの圧は無いけれど、全く認めてくれそうにないアラスターに私は手を合わせる。
あなた
お願い、1回だけ!代わりに何か……何でも1つ言うこと聞くから!

その言葉にも少しの間不満そうにこちらを見ていたけれど、やがてアラスターは肩を竦めて片手を軽く振った。
アラスター
良いでしょう。取引成立です
あなた
契約する?
アラスター
貴女にそこまで求めませんよ

呆れた顔を向けられたけれど、何とか承諾を得ることには成功した。引き換えに後で何を言われるか、考えると怖くもあるけれど……100万ドルには代えられない。


アラスターは足を組み直し、テーブルに頬杖をつきながら反対の手の爪を弄っている。
アラスター
大体何なんですか、そのくだらない番組は
あなた
ゲームに勝ち残ったらお金が貰える番組だよ
アラスター
金に困るようなことでも?
あなた
まあ……ちょっと入り用で
アラスター
そんなものに出なくても、必要なものがあるなら私に言えば良いでしょう

まだ少し不機嫌そうにこちらへ視線を向けてくるアラスターに、首を横に振って応える。
あなた
これは私の問題なの
アラスター
……全くどうして貴女みたいな人なのか、我ながら疑いますね
あなた
はは、私も何でよりによってアラスターかなと思うよ

溜息混じりに返された言葉の意味を察して苦笑する。
私だって散々頭の中では「間違ってる」と思ったことだ、それでもどうにもならないのだから仕方ない。

アラスターは立ち上がり、こちらへ近付いてくる。
アラスターの影が、さっと彼が座っていた椅子を私の隣へ運んだ。
アラスターはそれに座り直してから私のすぐ隣で指を鳴らし、その手には小さな赤い鍵が握られた。
アラスター
こちらを渡しておきます
あなた
何の鍵?

アラスターに手渡されたそれを受け取りながら、私は尋ねる。真っ赤な鍵は、凝った装飾があるわけでもなく至ってシンプルだ。
アラスター
この部屋の鍵ですよ
あなた
え、この部屋?
アラスター
いちいちノックに応答するのも面倒ですから
アラスター
これからは好きに入って構いません

私はまじまじと赤い鍵を見る。
アラスターは人に触られるのも好きではないし、他人の領分は好き勝手侵すけれど、他人に自分の領分を侵されるのは好まない。
そのアラスターが好きに出入りして良いと言うのは、それだけ気を許されたようで嬉しい。

私は鍵を握ってアラスターを見上げた。
あなた
ありがとう、嬉しい

アラスターはいつもの笑みで私の肩に手を乗せる。
アラスター
入るのは好きにして構いませんが…
アラスター
あまり調子に乗ると、2度と出られないようにしますよ
あなた
………善処します

やっぱりまだちょっと怒っている。
暫くは別のことで怒らせないよう、気を付けようと思った。





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