ホテルに戻ってきてから、テレビ番組に参加することにしたことをアラスターに話したところ、案の定みるみる機嫌が悪くなり、目元をピクピク動かしながらテーブルを爪で叩いている。
いつか似たような問答をヴァギーとアラスターがしていたのを思い出し、その時のアラスターの回答を返してみる。
それを聞いて、アラスターはこちらを睨みながらジジッとノイズを鳴らした。
姿が変わるほどの圧は無いけれど、全く認めてくれそうにないアラスターに私は手を合わせる。
その言葉にも少しの間不満そうにこちらを見ていたけれど、やがてアラスターは肩を竦めて片手を軽く振った。
呆れた顔を向けられたけれど、何とか承諾を得ることには成功した。引き換えに後で何を言われるか、考えると怖くもあるけれど……100万ドルには代えられない。
アラスターは足を組み直し、テーブルに頬杖をつきながら反対の手の爪を弄っている。
まだ少し不機嫌そうにこちらへ視線を向けてくるアラスターに、首を横に振って応える。
溜息混じりに返された言葉の意味を察して苦笑する。
私だって散々頭の中では「間違ってる」と思ったことだ、それでもどうにもならないのだから仕方ない。
アラスターは立ち上がり、こちらへ近付いてくる。
アラスターの影が、さっと彼が座っていた椅子を私の隣へ運んだ。
アラスターはそれに座り直してから私のすぐ隣で指を鳴らし、その手には小さな赤い鍵が握られた。
アラスターに手渡されたそれを受け取りながら、私は尋ねる。真っ赤な鍵は、凝った装飾があるわけでもなく至ってシンプルだ。
私はまじまじと赤い鍵を見る。
アラスターは人に触られるのも好きではないし、他人の領分は好き勝手侵すけれど、他人に自分の領分を侵されるのは好まない。
そのアラスターが好きに出入りして良いと言うのは、それだけ気を許されたようで嬉しい。
私は鍵を握ってアラスターを見上げた。
アラスターはいつもの笑みで私の肩に手を乗せる。
やっぱりまだちょっと怒っている。
暫くは別のことで怒らせないよう、気を付けようと思った。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。