放課後の教室は、昼間の喧騒が嘘のように静かだった
窓の外には夕陽が射し込み、紙の白さに柔らかな橙色を映している。私は机に積まれた書類を前に、黙々と作業をしていた。
慣れない事務仕事に肩は重く、頭も少しぼんやりしていたけれど、やり切らなければという思いが手を止めさせなかった。
不意に声がして顔を上げると、教室の入口に尾浜勘右衛門、その後ろに兵助、三郎、雷蔵、八左ヱ門の姿が並んでいた
私は思わず目を瞬いた。
まさか五人そろって来るなんて。
勘右衛門が笑顔で覗き込む
私は笑って返した。
__正直言って、最近先輩が私に仕事を全て押付けている気がする。勘違いかもしれないけどね、だけど、最近は家にまで仕事を持って帰って、夜遅くまでしてるの!
さすがにおかしくない?
おかげでクマまでできちゃってさ、コンシーラーで隠してはみたんだけど、せっかくならビジュ良い時に会いたいじゃん?
心の中で不満を吐きながら、表情管理を徹底する
すると、
と八左ヱ門が気軽に言う
と三郎も続ける
その優しさが嬉しかったけれど、私はすぐに首を横に
振った
__健気アピールチャーンス!!
できるだけ軽い調子で笑った。
だけど、彼らの視線が一瞬だけ揺らいだのを感じる。
兵助が私の顔をまじまじと見つめ、静かに目を細めた
……クマ。隠しきれていなかったらしい
ちょっと恥ずかしくなって目を伏せた
私は手を止めて書類をまとめた
鞄に詰め込み、ぱんと閉じる
__ここはこの場を立ち去るのが適策
そう言って、口角を上げたけど、最近寝不足なせいか、ぎこちない笑顔だったらしい。
彼らが心配そうな顔をしていてそう思った。
なんとなく、気まづくなって
わたしは「じゃあ、」と言って逃げるように立ち去った
彼らはそれ以上何も言わず、
ただ黙って私を見送ってくれた
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
翌日。
授業が終わり、廊下を歩いていたときだった。
先輩とすれ違った。
日常的に仕事を任せてくれる2年生の先輩
私は慌てて手に抱えていた書類を差し出した
二年生の先輩はそう言って小走りに去っていった
とも思ったがわたしはそれ以上気にしなかった
__その場に、実は五人がいたことを、その時の私は知らなかった
彼らは偶然同じ廊下にいて、先輩の行動を目にした
らしい。そして疑念を抱いた。
後から聞いた話によれば、その二年生の先輩は書類を抱えて会議室へ向かい、そこで「自分が全部やりました」と平然と報告していたのだという
私が何日もかけて処理してきた雑務を、まるで自分の功績のように
それを黙って見過ごせるような五人ではなかった。
彼らはすぐに動いた
雷蔵の冷静な言葉、
三郎の鋭い問いかけ、
八左ヱ門の真っ直ぐな視線。
兵助の理路整然とした追及。
そして勘右衛門の明るさの裏に潜む鋭さ__。
それらが合わさり、先輩の虚勢はあっという間に崩れたらしい。
「お前がやったって? 昨日、俺たち見てたけどな」
「運んでたのはあなたの名字さんだろう」
追い詰められた先輩は言葉を失い、やがて周囲に真実が知れ渡った
__その場面を、私は目撃していない。ただ後から耳にしただけ。
けれど、胸の奥がじんと熱くなった。
彼らの攻略が進んでると実感できたのはもちろん、私のために動いてくれたことが素直に嬉しかった。
__これからもっともっと頑張ろう、
そう前向きな気持ちになれた出来事だった。
スクロールお疲れ様です!
読んで下さりありがとうございました!!
お気づきですか?勘右衛門達がタメ口になってるの!!













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。