ダ・カーポ平野を出発して二日後。
六人は、ヘトヘトの状態でピアニッシモ街に着いた。
何があったのか、というと。
まぁ、端的に言えば道に迷ったのである。
いるまが近道だと通った森がすちの家があるラルゴ森林と似たような呪いがかけられた森であり、さらには魔物まで襲い来る始末。
本来一週間近く迷う森を二日で脱出できたのは、暇72とすちがやや強引に森を開いたからである。
強引に、というのは、風や炎で薙ぎ払ったのだ。
LANが森と会話を試みたが、向こうが会話を拒んだ。
なので、仕方なく、あくまで仕方なくの武力行使だ。
六人は街を歩きながらそんな話を繰り広げる。
ふと、みことが街の人の視線に気づいた。
言われてみれば、確かに街の人達がじろじろと少し嫌な視線で見てくる。
背中に担いだ大剣をこさめが撫でる。
武器の大きさを固定しているこさめの大剣は平和そうな街では嫌でも目立つ。
暇72は自分の服をつまむ。
六人が引き返そうとした瞬間。
しゃがれた声に、全員が同時に振り返る。
そこには、杖をついた背の低い老爺がいた。
LANが困ったように頬をかく。
勇者や救世主と言っても、信じてもらえないだろう。
老爺はそういうと、老人とは思えない動きでガバッと勢いよく頭を下げた。
いきなりの言葉に、全員がポカンと口を開ける。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。