『もう帰っちゃうの?』
「うん、授業終わったし…」
『そっかあ、』
「授業終わったら連絡して、またカトクしよ」
『うん!』
あくまで前髪を崩さないように後髪を撫でて、
もう一度僕の腕に閉じ込めて額にキスを落とした。
昨日は自分からしたくせに、
僕からされると照れてしまうところもかわいい。
またね、と言葉を交わして大学を後にする。
ヨンジュン、帰ってきてるだろうか。
ヨンジュンと飲もうと思って詰め込んだビールが
袋の中でガサゴソと音を立てた。
「ただいま〜」
“Hi♡”
「帰ってきてんだ、今日はどこ行ってたの?」
“Top secret♡”
「は、だる笑」
“What's those?”
「あー、ヨンジュンと飲もうと思って。」
「ビール飲む?」
“Yes!!!”
ビール好きなんだ…と思いながらリュックを寝室に置いて、
ついでにラフな私服に着替える。
こんな昼から酒なんて、僕も酒好きだなあ、なんて思いながら
リビングのソファで缶を開ける。
ドカッと横に座ったヨンジュンと缶を近づけて、
“Cheers!!!”
「…〜っぷはぁ!!」
“Awesome…”
「お前ビール好きなんだね、いい飲み仲間になれそうじゃん」
“I'm telling you, I'm a stronger drinker.”
「へえ、飲める口なんだ」
うん、やっぱりなんだかんだこいつの存在、いいかも。
こうやって、じんわりじんわりと僕の心は埋まっていく。
それからは、ビールを片手に、
さけちーやジャーキーを片手に、
面白くもない番組やドラマや映画のチャンネルを
くるくる回しながらどうでもいい話をヨンジュンとした。
この女優さん演技上手い、とかこの歌手表現力やばくね?!とか、
あの芸人さん俺会ったことあるんだよ、とか。
ほんとにどうでもいい、くだらない話。
この年になるとそんなことを共有する友達は
だんだん減ってきてしまって、
…ああ、そういやこの部屋に誰かがこんなに長時間いるのも
初めてに近いかもしれない。
「…あ、授業終わったって」
“?”
「あなたからカトク来た、今から坂の方行けば会えるかな」
“Your girlfriend?”
「そう、会ってみる?」
そうだ、この前結局あなたはヨンジュンと会えなかったんだし。
そうと決まったら、と2人で靴を履いて扉を開けた。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。