第44話

Clearecology
11
2022/01/28 10:51
知ってた?
クラゲってね感情が無いんだよ
脳も血管も心臓も何も無いの。
それなのに睡眠はとっちゃう
不思議だよね
そして最期は溶けて消えちゃうんだって。
「海月」って名前は母さんが付けんだ。
海みたいに広くって月みたいに常に輝いている。
自分独りでは無く、支えてくれる人がいるように。
柏木 幸
……………みつ兄
202号室に手をかけた。
病室のドアが開く音だけが聞こえる
そこには赤いバラの飾られた花瓶に
光の無い紅い瞳で遠くを見ている海月の姿があった。
柏木 幸
……また奈椎に一本取られた………
幸はその花瓶に合わせるように白いバラを入れる。
紅いバラが7本、白いバラも7本。
少しふっくらと纏まったそのバラを海月は見ることはなかった。
柏木 海月
…………
空っぽになった兄は恐ろしい程、美しい造形をしていた。
母親の顔立ちが濃かったのだろう
海月を初め、兄妹の造形は全て母親をコピーしたようだ。
だけれど……表情ばかりは海月は父親に似ていた。
楽しそうに笑うその笑顔も。
何かに必死になる直向きなその顔も。
健康的だった肌の色も不健康な白色になっていた。
今、明るい父親の部分がぽっかり取り除かれて、妹以外知ることの無い母親の部分だけが剥き出しになった彼を見ていると、心底ぞっとした。
柏木 幸
……………兄ちゃん。……兄ちゃんの分まで家族と一緒に過ごしちゃうじゃんか俺…。
柏木 海月
……………
柏木 幸
さっき、奈椎も来てたんだろ。
……アイツ、あんなんでもう高校生になった。……反発ばっかで全然可愛くねーけどさ…
柏木 海月
………
幸の話に返答は無い。
植物状態になってしまった兄は動くことも出来なかった。
全てを失った。
ただ、ここで生きているだけ。
柏木 幸
…ずっとお見舞い行けなくてごめん…。
兄ちゃんが居なくなってからさ、大変なんだぜ?………父さんは朝早くに家出てくしさ。
柏木 海月
……………
柏木 幸
………………認められたかったよ。…俺だって生きてていいんだってさ。簡単なことでもいい。いつも褒めて、評価してくれるのは兄ちゃんだけなんだよ…
柏木 海月
……………
柏木 幸
なんで…………兄ちゃんがこんな目に合うんだよ…。…毎回ここに来るなんて俺には不可能だ。………何度空っぽの兄ちゃん見ればいいんだよ…!!
??さん(?)
そーやって、自己完結しようと必死なのね。
澄んだような少女の声が病室に静かに響いた。
涙目になりながら、後ろを振り向くと、奈椎が毅然とした様子で立っている
柏木 幸
……………奈椎。
柏木奈椎
カッコ悪いね。
幸兄は。
あの日と変わらない声。
あの日より美しく伸びた髪の毛。
あの日と変わらない紅い瞳。
柏木 幸
……………お前に何が分かんのさ…
柏木奈椎
分かる訳ないわよ。
だって、ウチは、幸じゃないもん。
柏木 幸
……………奈椎さ…。みつ兄がこんなになっちゃって…毎日お見舞いとか苦しくないの…?
柏木奈椎
苦しいのはウチじゃない。
柏木 幸
みつ兄は空っぽになっちゃったんだから苦しくないよ。
柏木奈椎
……ウチが皆を拒絶したから。
みつ兄は苦しい思いして、事故に遭ってこうなった。
柏木 幸
それは俺だって…
柏木奈椎
ごめんなさい
深々と奈椎は頭を下げた
柏木 幸
はっ………!?…えっ…!?…ちょ、やめろって!!
柏木奈椎
今更遅いなんて分かってる。…でも、もう皆を苦しめるようなことしないから。
柏木 幸
…………
柏木奈椎
何度も叱ってくれたのに逆上したのもウチに代わり無い。……お願い。ここで兄妹揃ったこの状態で話がしたいの。
長い髪の毛が靡く。
幼い子供のようなその声は幸の耳の奥に残っている。
そんな彼女の頭を優しく撫でると幸は笑顔を向けた
柏木 幸
うん……うん……。
柏木奈椎
…………幸兄?
柏木 幸
話す………ちゃんと話す………
涙が止まらなかった。
柏木奈椎
…………泣き虫ね。…そんな泣かないでよ。ウチが泣かしたみたいじゃないの。
柏木 幸
そうだろぅょ………っ……うぐっ……えぐっ…
柏木奈椎
………ほんと馬鹿。……もう独りで抱えこんだりしたら許さないんだからってことよ。…やっぱり幸は嫌いだけど。
柏木 幸
はあ!?おかしい!!今の展開でそれはない!!
柏木奈椎
ウチがアリって決めたからアリだし
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物騒な世の中になってしまった。
「5日連続園崎高校の生徒が殺害される事件が起きました。死亡したのは、田中佑斗さん含め、曽良義音さん、幾田秀哉さんと身元不明の三人。園崎高校の制服を着ていた為、この高校生の生徒と確認。今回、殺害計画を手助けした疑いで現場にいた少年二人を逮捕。逮捕された少年二人は黙秘しています」
鹿目 麗花
…………まただ……
音羽 奏
まだ学校は再開されそうもないね…
鹿目 麗花
うん………
一体誰が何の目的でこんなことをしているのだろうか…
学校でも園崎高校の生徒だということは内密にすることと、学校には近づかないこと。制服を着る機会なんてないのに…
音羽 奏
田中先輩はとにかく。残りの人たちは多分遊び半分で来ちゃったのかもね…。
学校の対策しても、自爆テロみたいなのとか起きてかなり危険になっちゃったし…。
鹿目 麗花
奏と同級生の子も多いね。
2年も多いけど…。
音羽 奏
気をつけなきゃだね…
奏が不安そうに目を伏せる
にゃ~
音羽 奏
あっ…!!ごめん!!ほたて!!
もうご飯の時間だね。
鹿目 麗花
もうこんな時間かぁ…。
時計を見る。
丁度6時。
鹿目 麗花
7時からは2年のオンライン集会があるみたい。1年は明日だっけ?
キャットフードを探す奏にそれを渡して、水を変えながら、麗花は話し出す
音羽 奏
ああ、うん。
明日の…5時くらいだったかな。授業ははやめに終わるって。
鹿目 麗花
そう
水を置く。
少し器から零れてしまった水をほたてはペロペロと舐めた。
音羽 奏
授業が終わったらさ…一緒に春近先生の家に行かない?…梶山くんにもなかなか会えてないし…
鹿目 麗花
あまり長居は出来ないよ?
音羽 奏
もちろん。わかってるよ。
ほたてを撫でながら、奏はにこりと笑った。
………にゃっ!!
と、いきなりほたてが短い悲鳴を上げる
音羽 奏
あっ…!!ごめんね…?…痛かった!?
シャアアアっ…!!
鹿目 麗花
………なんか…いつもより怒ってる…。
音羽 奏
ほ…ほら、落ちついて…ごめんって…
ほたてを宥める奏を見つめながら、麗花は事件の整理を始めた。
真生がいなくなってから何かがおかしくなっている…
でも、改心した今、真生が犯罪を犯す確率は極めて少ない…。違ったとしても病院にいるし絶対に違う…
じゃあ犬鳶くんか…?
彼は真生に異常な執着を見せていた。
でも少年院にいる今、そんな反抗に及ぶことは可能なのだろうか…
鹿目 麗花
……………
音羽 奏
あんまり重く考えない方がいいよ。
お兄ちゃんは大丈夫だよ。絶対
鹿目 麗花
…………うん…。ありがとう…
不安だった。
果たして誰がユダなのだろうか…
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初!!『僕と私の裏話っ!!』
このコーナーは作中の裏設定を紹介するよ~っ!!
実はね、創くんの名前の由来はね……
想像する時間をあげちゃいます!!
3、2、1…
正解は~!!
麗花、聞いてきて~っ!!
鹿目 麗花
ええ…………
はやく!!
鹿目 麗花
………………
やる気のない主人公降臨
鹿目 麗花
…………ん
麗花氏、創氏の肩を掴みました。
梶山 創
…………なに
くるりと振り向く創氏
鹿目 麗花
由来は……?創の由来
梶山 創
んなこと聞かれても……
創くんの本名は日向七音。
真生くんと政宗くんとの出会いで「梶山創」と改名しましたね。
下の名前を平仮名にしてみましょう。
創→そう
さて逆に読むと…?
「うそ」
漢字にすると「嘘」と書けますね。
創の名前は「嘘を創ったから」
そんな意味があるのです。
鹿目 麗花
……じゃあ梶山は…?
梶山 創
それはあれ。…父親の苗字の梶と母親の苗字の山からとっただけ
鹿目 麗花
これも創くんの適当さですね
後設定とか言ったら怒る
梶山 創
……なぜ俺が最初
鹿目 麗花
俺の名前の由来は鹿のぬいぐるみと目があったからとかだし。
梶山 創
おい作者

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