「…おい、聞いてんのか?」
どちらも同じ見た目に見えたが、
私に話しかけた方は髪を切りそろえたおかっぱで
その後ろに隠れている方はざんばらな髪だ
だがどちらも知らない顔だった
「…私?」
「やっと喋ったな
何回聞いても応しないくせに、なんかボソボソ言ってるからヤバいやつかとおもったぜ」
もしかしたら私が蟻を見ている時にも何回も話しかけていたのかもしれない
何かに夢中になると周りが見えなくなるのは私の悪い癖だ
「…誰?」
「人に名前聞く時は自分から言えよ」
「あなた」
少し間を置いて、首を傾げた後
「苗字は?」
と聞いてきた
後ろの隠れている子は全く口を開かない
おかっぱの子とは違って気が弱い性格なのかもしれない
「禪院」
「禪院家か、にしては珍しい茶髪だな
それに髪も短くて切りそろえられてない
最初は男かと思っちまったよ」
「よく言われる、でもこの髪色好きじゃない」
「へえ、親の遺伝か?誰の子供だ?」
「誰の、って」
「親は誰かっつーことだよ」
「親、親…は」
私が黙っていると
「分かんねえのか?」
と言われたので、こくりと頷いた
「死んだから」












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!