帰る前に、
叶くんと共有しているカレンダーアプリを確認する。
あとは、配信してるかどうかを確認しよう。
楽しそうに配信をしている叶くんが脳裏に浮かび、
思わず笑みが零れる。
メッセージを送信してから、帰路に着いた。
帰宅して、送ったメッセージを確認すると、
既読はついていた。
荷物を置き、ジャケットだけ脱ぎ、
叶くんの配信部屋にノックをしてから入った。
すぐに気づいてくれて、マイクをミュートにして、
ゲーミングチェアをくるりと回して立ち上がり、
両手を広げてくれた。
抱きつきながら、謝る。
頷いて答え、
抱きしめる力が強くなり、
ものすごく安心する。
顔を上げると、
優しく唇が触れた。
初めてした時に驚いた唇の熱さも、
今では当たり前になり、
そうでないと落ち着かないまでになっている。
離れてしまう唇が名残惜しいけれど、
当初の目的は果たせた。
上書きしてくれた。
……浮かない顔を、してしまっていたのだろうか。
とりあえずの納得をしたつもりになったけれど、
……まだ、……もっと、
と思ってしまったのがバレているようだ。
私がそう答えると、叶くんは座り直してパソコンに向かった。
そしてまた、イスをくるりと回し、
と、それはもう甘い声で言いながら抱きしめてくれる。
優しさが嬉しくて、抱き締め返しながら、名前を呼んだ。
ら
叶くんの背後で、
パソコンのディスプレイがすごい勢いで動いていた。
びっくりして、思わず叶くんの背中をバシバシと叩くと、
何事かと叶くんが私の顔を見たから、
私は一生懸命、無言でディスプレイを指差した。
振り向いた叶くんは、一言そう零すと、
てへっ、と笑って、
私の頭をぽんぽんと触り、
「待ってね」と口だけ動かして伝えてきた。
すごい勢いで流れるコメントの中から読み取れるのが凄い。
これも技術のひとつだよね。
私の声入っちゃったの恥ずかしいな、なんて、
珍しい叶くんの失敗に和んだ。













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。