隣人の幼馴染への恋。
それが、俺の初恋だった。
「…てっちゃん、また来てたの?」
あなたがベランダの鍵をかけないのは、俺がこの部屋に来るのを拒んでいない証拠なのか。
それとも、ただ気にしていないだけなのか。
…あなたのことだから、後者だろうな。
「おう。おかえり」
「…もう、今日も学校サボったでしょ」
「だってめんどくさいし」
彼女の手には、大きな紙袋。
そこからは色々なラッピング袋が覗いている。
そう、今日はバレンタインなのだ。
「…なぁ、俺には?」
「なにが?」
「チョコ」
手を差し出した俺の姿を見て、彼女は一度 ため息をつき、カバンの中から小さな箱を取り出した。
「ありがと…」
「あ、ちょ…ちょっと待って!」
「…なに?」
「今…食べないでよ」
「なんで?」
「だって…てっちゃんの方が料理上手なんだもん」
苦笑いを浮かべた彼女は、荷物を置いて 俺の隣に座る。
ふわりと香る彼女の匂いに、ドキッとしてしまう。
距離が近すぎるのも…色々と困ったものだ。
「あっ!もう、食べないでって言ったのに…」
「…うまい」
「本当に?…ありがとう」
嬉しそうな表情に 思わず見とれてしまうのは、仕方のないことだろう。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。