第17話

蝶々
15
2025/12/12 12:13 更新
蝶雨がいない。

私の知っている場所、全て探した。
段々焦る気持ちを無視して、必死にたった一人の少女を探した。
なのに、どこにもいない。

スマホを強く握りしめる。
連絡先は、知らない。家も、知らない、行きつけの店とかも.....あっ......私、蝶雨のこと、何も....知らないんだ。

立ち止まる。
肩で息をする。
私は、蝶雨のことを何も知らない。
知ろうとも、しなかった。

蘭天ランア
.......
蘭天ランア
「違う。
 私が今考えるのは、蝶雨の居場所だ。」
蘭天ランア
「謝るのは、あとでいい。
 直接この口で、謝ればいい。」

考えろ。
何の為にこの学力を磨いてきたんだ?
ただの成績?違うだろ....!
大切な、お友達。

失いたくない、友達なんだ。
......!!
蘭天ランア
羽裏!!!
蝶雨の居場所は!?
蘭天ランア
何か、知ってることは!?
蘭天ランア
教えて!羽裏!!!

スマホの電源を立ち上げて、叫ぶようにメッセージを送る。
そういえば、羽裏は、私が高校生になったときから隣りにいた気がする。
ただの隣の席のクラスメイトだったのに、ほんと、それだけだったのに。

一番馬鹿なのは、私らしい。
羽裏 涉兎はねうら しょうと
ごめん。
分からない。
羽裏 涉兎はねうら しょうと
だが、予想はできる。
そこに向かえ。蘭天。
蘭天ランア
あ、ああ、!
羽裏 涉兎はねうら しょうと
......ww。
羽裏 涉兎はねうら しょうと
ま、いっか。
蘭天ランア
....え?

指定された場所を見つめて、愕然とする。

私だって、蝶雨に全てを教えたわけじゃない。
教える暇など、教えられる強さなど、何も持ってなかったから。

......


また、走る。

あぁ、何度目だろうか....ww。
でもまだ、頭の中の霧は晴れない。
私は、君に、会いたい。

許してほしい。
それくらい。
蝶雨。会いたいんだ。

次の角を曲がったら、もうすぐその場所だ。
一番知ってる。
でも、話すことなんてなかったその場所。

フラっと訪れた、"とあるカフェ"だ。


あと、数十メートル。
もう店の姿は捉えている。
だけど、何も見えないのだ。

焦る。
過去一番に、焦っている。
なんでだろう....ほんと、なんでだろう.....。

走った。
息を切らすことなんて、何一つ気にすることなくて。
ただ目の前のカフェへと、走った。
やけに気温は高かった。
人通りも少なくて、

そして、扉の前まで辿り着くと思ったその時。
蘭天ランア
.......えっ

鈍い痛みよりもはるか先に、私の視界はカフェから遠く離れていた。

あぁ、苦しい。
地面の冷たさを頬に感じて、私は少し泣いていた。
車.....ひき逃げだろうか。
あぁ....あぁ!
あと少し.....あと少しだけなのに!
なんで.....指先に力を込めるが、動かない。
全身に力を込めてみるが、何もならない。

私は、人間だ。
駄目だよ。なんでひくんだよ。なんで....こんな、タイミング。

.......ww。

あぁ。

本当に、あと少し。

手を伸ばしてみるけれど。

私の手には届かない。

あぁ、いい匂い。それに....あのカフェ....変なメニューが、あるんだよなぁ...!

青い蝶々。とてもきれいだ。

光ってる。......ほんと.....光ってるッ。
蘭天ランア
遅いよぉ......なに、してんだよ....
ファンア
......ww。



そっと、目の前には見知った靴が広がった。

安堵感。
それと同時に込み上げてくるこの感情は、きっと君だからなのだろう。
見慣れた顔。
いつもどおりの、蝶雨の顔。
私は、死ぬほど嬉しかった。
ファンア
警察が来るよ。
ファンア
もうすぐ、この場所も見つかってしまうだろう。

そう言いながら、優しい手つきで怪我の具合を確認してくる。
ファンア
まぁ、私は人を殺したからね。
ファンア
何人も殺してるよ。
君も知ってるだろう?
蘭天ランア
.....私、は、一人しか、蝶雨が殺したことを、知らないんだ

呂律が回らなくとも、必死だった。

やがて、蝶雨は少し爪を立てて首筋に当てる。
痛くなんて、なかった。
ドロドロかもわからないその匂いとともに、私は目を瞑る。
瞬きぐらいの一瞬だったのに、なぜだか、体は軽かった。
ファンア
君が来た目的も分かるけどさぁ。
無茶しちゃだめだよ。
ファンア
ここは道が狭いからね。
車から歩行者は見えないんだよ。
ファンア
安心しろ。蘭天。
ひき逃げ犯なんて、すぐに捕まる....。
蘭天ランア
どうでもいい。
蘭天ランア
伝えたいことがある。蝶雨。

今は、2094年....そんな、年だったのを、覚えているだろうか。
私は、今すぐにでも忘れそうだ。

微笑みながら、立っている。
その姿を見つめながらも、私もすぐに立ち上がる。
珈琲の匂いは感じないし、前よりも景色は遥かに悪い。

ファンア
.....ww。
ファンア
なーに?
蘭天ランア
私も、一緒に逃げてもいいか?
ファンア
......ッッ。
ファンア
まぁ、いっかなぁ。
ファンア
羽裏怒るよ?
蘭天ランア
構わない。
ファンア
んー。
ファンア
それじゃ、この手紙を。

「お土産よろしく。」
蘭天ランア
え?これだけ?
ファンア
そうみたいだね。
蘭天ランア
なにこれ。意味ないじゃん。
ファンア
いや、よく見て見るといいよ。
ファンア
....w。

丸い雫が、そこには残ってた。
蘭天ランア
あ、ほんとだ。
ファンア
じゃあ、一緒に逃げてくれるかい?
ファンア
蘭天ちゃん。
ファンア
私と一緒に、命を捨ててくれるの?
やめたほうがいいと思うよ。まだ人生長いんだから。
蘭天ランア
 .....あはは。

迷いなんて、何もない。

このために、生きてきたのかもしれない。

その運命、君は知っていたのかもしれない。

私のために、生きててくれてるかもしれない。

なんてね。冗談だ。


....ww。


迷いなんて、何もないんだよ!
蘭天ランア
早く選んで!!!
時間ないからぁ!!!!!

























座って息を整えた。
空を見上げた。曇り空が不安を募る。

でも後悔はしていなかった。




目の前には散らかった自由帳。
私の大好きな物語が、家しか存在できなくなってしまったから、とっさに取りに戻ったのだ。
鉛筆は、君のもの。
蝶雨って金色で彫られた、使われた形跡がない鉛筆。
使ってしまうのは、気が引けた。

最終回は、大嫌いだ。
大好きなものが、終わってしまう感覚だから。
だから、私は鉛筆をその場に置いて立つ。




















サイレンの音が、煩すぎた。







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