窓から見える景色は、学校で送るはずの青春が映されている。
そう感じるほど、楽しいものではなかった。
でも、嫌いだと思っていても、案外、思ってるほど辛くなかったりする。
目にわかるいじめをされているわけじゃないし、かと言って、嫌なことがないのかと言われたら首を横に振るけれど....
それでも、理解してくれない人が多いから、仕方ないと腹を括る。
鞄を掴んでさぁ教室を出ようとした時に、ふと軽やかな音楽が聞こえた。
後ろから、規則的な歩き方になにか重い物を持っているような感じ。
風を感じるたびに影が揺れる事実から、きっとクラスメイトだろう。
そう思ったところで、関わりがないから話しかけることはない。
それは向こうも同じことだ。
振り返らずに鞄を勢いよく掴む。
横目で見るそのクラスメイトは、どことなく似ている雰囲気だ。
言葉を発する必要性を考えろ。
無論、勝手に頼まれただけ、反応することは無いだろう。
断る余地も与えず教室からさっさと出ていってしまう教師には、流石の僕も虫唾が走る。
っと....そんなことより、蝶雨さんは.....
夢中になって本の整理をしている彼女。
たった今、なぜ彼女が学校内で裏人気投票第2位なのかよく分かった。
でも、僕も一応頭はいい。
彼女の欠点を一つ上げるのだとしたら、それはきっと"目的"という到達点を感じさせないもどかしさだ。
本を一冊一冊丁寧に整理しているさなかでも、違うことを考えているように思えてしまう。
彼女は、きっと我々と別の境地にいるのだろう。
そして、もしかしたら、その境地を目指して調べまくってるお友達が存在するんじゃないかな。
君のようなおかしな人は、絶対に何か抱えてる。
それを見つけてやろうと、必死になって探す者が......
少し目を見開いたのを見逃さなかった。
本の整理を一旦やめて、そしてこちらに顔を向ける。
目を合わせたくはなかったから、本に視線をやりながら、そっと近づく。
その過程で、鞄を投げた。
そんな声で、思わずニヤついた。
僕は、本から視線を離して、初めて彼女の顔を見た。
瞳は綺麗だし、声も透き通ってるし、スラッとしてる。
そんな問いの答えはすぐ出た。
"目的"を探させるような、性格の悪いやつ、僕は少なくともそう考えたんだ。
思わず、本の整理している手を止めてしまった。
本の動作、映る歩幅の規則的な歩き方。
更には、私の手元。
物的証拠もないただの勘なんだろうけど、それを私に言わないことも、しまい込んで勝手に理解してしまう頭の良さも、今まで出会ってきた中で一番たちが悪いね。
あーあ。
目的を一緒に探ってくれるのならそれで良かったのに....
私はユーヴァ。
ただの普通の学生だ。
この時代の人間に、本来の"私"というものを見せる必要性は無い。
私としたことが.....やらかしたよ。
初めてのことが多いこの世の中。
私の目的よりも、なぜそれを隠しているのか...
最初、自分でもよく分からなかった。
ユーヴァになって、蘭天を見つけて、さぁどうしようと考えたときに浮かんだ答えは、時代のままに。
ファンアという謎多き鬼の子は、この世界に現れなくてもいいんじゃないかなって思った。
蘭天と関わるのは、少し違うんじゃないかなって。
だけど、会いたくなってしまった。
いわば"会った目的"を言うと私の純粋な欲になってしまう。
それほどまでに、やり残したことが多すぎた。
後悔してるよ。物凄く。
人と深く関わることをしないで過ごしていたから、私は人との関係というのを忘れてしまった。
別れたあとは?残したものは?人生は?
そんな問題を、見捨てて私は死んでしまった。
カーテンが揺れる音だけが聞こえる。
二人は、お互いに目を合わせていない。
同じクラスメイトなのに、ただの普通の友達なのに。
全く、見ようとなんてしなかった。
だけど、それでも不器用に、沈黙を打ち破ったのはユーヴァだった。
手は、また本の整理に戻っていた。
意味ありげに、微笑した。
視線が交差する。
とっくに本の整理は終わっていて、お互いに時間を余すだけだった。
教師からの頼まれ事すらやる気になくて、少しの時間、余韻に浸る。
その時、廊下からとある足音が聞こえた。
鞄を持ってテストが終わった開放感から浮かれてゆっくりと歩いている者が。
そして、その教室の前を歩いたとき、ふと声が聞こえていた。
黒髪から、群青髪に。
猫目から、透き通るような淡い瞳に。
幼い声に、白い肌。
優しく微笑み牙を向ける、自分の正体、数多くの小説に描かれてしまっているのだった。
鞄を強く握るどころか、落として口を開けていた。
その時、声にはならなくて、ただただ目を見開いていたのだ。











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。