仁人と別れてから、3日が経った。
あなたは、何度もあの日のことを思い返していた。
「俺は、今もあなたが好き」
「これからの俺たちを作っていきたい」
「あなたが自分の気持ちで、俺の隣にいたいって思ってくれるまで待ってる」
何度思い返しても、胸がいっぱいになった。
仁人は、答えを急かさなかった。
怖い気持ちがあることも、簡単には踏み出せないことも、全部受け止めてくれた。
だからこそ、今度は自分が勇気を出したかった。
あなた:「……もう、決まってるんだよね」
小さく呟いて、スマートフォンを手に取る。
本当は、ずっとわかっていた。
仁人のことが好き。
もう一度、一緒にいたい。
これから先の嬉しいことも、悲しいことも、隣で分かち合いたい。
ただ、また傷つくのが怖かっただけ。
でも、怖いからという理由で、好きな人を諦めたくなかった。
あなたは仁人とのトーク画面を開いた。
そして、ゆっくりと文字を打ち込んだ。
あなた:『仁人、今日少し会える?』
送信してから、心臓が大きく鳴り始めた。
数秒後、返信が届く。
仁人:『会えるよ!どうした?』
あなた:『直接、伝えたいことがあるの』
既読がついた。
少しして、返事が届く。
仁人:『……わかった。どこで会おうか』
あなたは、約束の場所を伝えた。
今度は、自分から。
今度こそ、自分の気持ちを伝えるために。
────
待ち合わせ場所に着くと、仁人はすでにそこにいた。
あなたの姿を見つけると、いつものように小さく手を振ってくれる。
仁人:「……あなた!」
あなた:「仁人!」
駆け寄ると、仁人は少しだけ不思議そうに笑った。
仁人:「どうしたの?なんか、いつもより緊張してない?」
あなた:「……してる」
仁人:「え、何それ。俺まで緊張するじゃん」
あなた:「ごめんね笑」
仁人:「いや、謝らなくていいけど……」
そう言いながら、仁人はあなたの顔を覗き込んだ。
仁人:「……大丈夫?」
その一言に、あなたは少しだけ泣きそうになった。
会うたびに、仁人は自分の気持ちを確かめてくれる。
無理をしていないか。
嫌な思いをしていないか。
自分の言葉で、ちゃんと話せているか。
その優しさに、何度も救われてきた。
あなた:「……うん。大丈夫」
仁人:「そっか」
あなた:「今日はね、仁人に伝えたいことがあって来たの」
仁人の表情が、少しだけ真剣になった。
仁人:「……うん。聞くよ」
────
2人は、近くの静かな公園へ向かった。
ベンチに座っても、あなたはすぐに話し始めることができなかった。
手のひらが少し汗ばんでいる。
何度も頭の中で練習した言葉なのに、いざ仁人を目の前にすると、うまく出てこなかった。
仁人:「……ゆっくりでいいよ」
あなた:「……うん」
仁人は、それ以上何も聞かなかった。
ただ、あなたが話し始めるのを待っていた。
その横顔を見て、あなたは思った。
この人となら、きっと大丈夫。
これから先、何もかもがうまくいくとは限らない。
忙しくて会えない日もあるかもしれない。
すれ違って、喧嘩をすることもあるかもしれない。
それでも、ちゃんと話し合いたい。
何も言わずに離れるのではなく、一緒に答えを探したい。
あなたは、ゆっくりと顔を上げた。
あなた:「……仁人」
仁人:「うん」
あなた:「私ね、ずっと考えてたの。仁人ともう一度付き合って、本当に大丈夫なのかなって」
仁人は静かに頷いた。
あなた:「また好きになって、また傷つくのが怖かった。前みたいに、仁人の気持ちがわからなくなったらどうしようって思った」
あなた:「でも、仁人と離れていた時間に気づいたの。私が本当に怖かったのは、傷つくことだけじゃなかった」
仁人:「……うん?」
あなた:「仁人の隣にいられなくなることが、嫌だったの」
声が少し震えた。
あなた:「何でもないことで笑ったり、今日あったことを話したり、疲れた日にお互いを気遣ったり……そういう普通の時間が、私は大好きだった」
あなた:「契約が終わってからも、ずっと仁人のことを考えてた。もう会えないってわかってたのに、また会いたいって何度も思った」
仁人の目が、少しずつ潤んでいく。
あなた:「……だから、もう逃げたくない」
あなたは、仁人の目をまっすぐ見つめた。
あなた:「仁人。私、もう一度、仁人の恋人になりたい」
一瞬、時間が止まったような気がした。
仁人:「……え?」
あなた:「……もう一度、付き合いたい」
仁人は口を開いたまま、しばらく何も言えなかった。
あなた:「……仁人?」
仁人:「……ごめん、ちょっと待って」
片手で顔を覆い、深く俯く。
あなた:「えっ、どうしたの……?」
仁人:「いや……嬉しくて、やばい」
その声が少し震えていた。
仁人:「……本当に?」
あなた:「うん。本当だよ」
仁人:「……俺でいいの?」
あなたは、思わず笑ってしまった。
あなた:「何それ。仁人がいいんだよ」
その瞬間、仁人の目から涙がこぼれた。
あなた:「……っ、仁人!」
仁人:「ごめん……いや、ほんとにごめん。泣くつもりなかったんだけど」
あなた:「……泣かないでよ、私まで泣いちゃうじゃん」
仁人:「……だって、ずっと聞きたかったから」
仁人は涙を拭いながら、あなたを見つめた。
仁人:「……ありがとう。もう一回、俺を選んでくれて」
あなた:「……ううん」
あなた:「私こそ、待っててくれてありがとう」
────
少し落ち着いてから、仁人はそっとあなたの手を取った。
仁人:「……じゃあ、俺たち、もう一回恋人ってことでいいの?」
あなた:「……ふふ、そうだよ」
仁人:「……やばい」
あなた:「さっきからそればっかり笑」
仁人:「だって、嬉しいんだもん」
あなた:「……私も、嬉しいよ」
仁人は、繋いだ手を優しく握り直した。
仁人:「……あなた」
あなた:「なに?」
仁人:「もう一回、ちゃんと言ってもいい?」
あなた:「……うん」
仁人は、少し照れくさそうに笑った。
仁人:「あなた。俺と付き合ってください」
あなたの目に、また涙が浮かんだ。
今度の言葉には、契約も、期限も、誰かに見せるための理由もなかった。
ただ、仁人自身の気持ちだけが込められていた。
あなた:「……はい。よろしくお願いします」
仁人:「……っ、よかった」
2人は顔を見合わせて笑った。
そして、仁人が少しだけ腕を広げた。
仁人:「……抱きしめてもいい?」
あなたは頷いて、彼の胸に飛び込んだ。
仁人の腕が、優しく背中に回る。
久しぶりの温もり。
ずっと恋しかった、大好きな人の匂い。
あなた:「……会いたかった」
仁人:「……うん。俺も」
あなた:「……ずっと、好きだった」
仁人:「……俺も、ずっと好きだったよ」
仁人は、あなたを抱きしめる腕に少しだけ力を込めた。
仁人:「……もう、恋人役じゃないんだね」
あなたは彼の胸元で、小さく笑った。
あなた:「……うん。もう、恋人役じゃないよ」
仁人:「……そっか」
少し間を置いて、仁人が囁いた。
仁人:「……俺の、本当の彼女だ」
その言葉に、あなたの涙がまた溢れた。
何度も願った未来。
もう一度、この人の恋人になりたいという願い。
それが今、ようやく現実になった。
────
帰り道。
2人は手を繋いで歩いていた。
仁人:「……なんか、まだ信じられない」
あなた:「私も笑」
仁人:「明日になったら、夢だったとかないよね?」
あなた:「ないよ笑。ちゃんと付き合ってるよ」
仁人:「……よかった」
あなた:「ふふっ」
仁人は、何度もあなたの顔を見ては嬉しそうに笑っていた。
あなた:「……そんなに見ないでよ、恥ずかしい」
仁人:「だって、彼女になったんだよ?」
あなた:「……そうだけど」
仁人:「……嬉しいんだもん」
あなたは繋いだ手を握り返した。
あなた:「……私も、嬉しい」
仁人:「……ねえ、あなた」
あなた:「ん?」
仁人:「これから、いっぱい思い出作ろうね」
あなたは、まっすぐ彼を見つめた。
あなた:「……うん。今度こそ、2人で」
仁人:「約束」
あなた:「約束」
2人は笑い合い、もう一度手を繋ぎ直した。
契約から始まった恋。
終わったと思っていた恋。
それでも、2人の気持ちは消えなかった。
そして今、誰かに決められた期限のない、本当の恋が始まった。











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。