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第4話

マスキングテープさん リク (完結です)
16
2019/08/07 15:45
私が勇気を出して花火大会に誘うと、遼くんは二つ返事でOKしてくれた。

しかも

遼「初デートだね。せっかくだからお互い浴衣着て行こうよ。」

と、浴衣着て行くことに決定。

どうしよう...初デート、緊張しちゃう...!
でも遼くんの浴衣姿見れるなんて嬉しすぎる!

そうして私は母にお願いして新しい浴衣を買って貰った。

7月の下旬から夏休みに入ったけれど、私は8月10日の花火大会が待ち遠しくて、楽しみでたまらなかった。



────── 花火大会 当日 8月10日 ──────



待ち合わせは18時。

花火は19時〜21時までの2時間打ち上げられる。

母に浴衣を着付けてもらい、髪もバッチリ整えて髪飾りを付けて準備を終えた。

少し早いけど...もう早めに行こう!

待ちに待っていた花火大会。楽しみで早く行きたい気持ちが抑えられず、家を出てしまった。

このまま向かえば、待ち合わせの時間の20分前には集合場所に着いてしまう程だった。




遼「あ...!」

えっ?

歩いていると正面から声がして、見上げるとそこには歩いて来る遼くんがいた。

うそ...!私の方が早いと思っていたのに...。
しかも私が来る方に歩いてきてたの?

突然の事で驚いていたけれどよく見ると

遼くん浴衣似合ってる...すごくかっこいい!


私「遼くん早い!もう来てたの?」

遼「まぁ。」


あれ?なんか冷たい...?

遼「じゃあ...行く?」

私「う、うん...!」


そして2人で歩き出したけれど...


沈黙。


私たち2人の間にはただただ、下駄のカラン、コロン、という歩く時の音が響いているだけだった。

あぁ!緊張してまた喋れなくなっちゃった。
どうしよう!何か話したいけど話題が!!


しばらく2人で歩いていると、だんだんと道の脇に屋台が並ぶようになってきて、人通りも多くなり賑やかになっていった。


なんでもいいから話したいのに...。これじゃ全然話せてない学校と変わらない!!


とにかく遼くんと話したいけど話題が思いつかなくて、ずっとぐるぐると頭の中で考えいた。

そんな時

私「あっっ!!」


履きなれない下駄で歩いていたせいか。
つまづいて、前につんのめってしまい私の体は地面から離れ、顔から倒れ込む ───────











ことは無かった。

遼くんがとっさに私の腕を掴み、もう片方の腕で体を前から抱きかかえるように、支えてくれたおかげで私は転ばずにすんだ。

遼「っと。大丈夫?」

私「あ、ありがとう...!」

遼くんの方を見上げてると

すぐ目の前に遼くんの顔があった。

2人の顔は両方とも真っ赤に。


どうしてこんな近くに顔があるの!?

いや、当たり前か!転ばないように助けてくれたんだから。

にしても近すぎて...!!


とっさにお互い顔を離した。

私の心臓はバクバク言っている。

恥ずかしい!
ただでさえ隣を歩いていて話すことも出来ないくらい緊張していたのに
急に至近距離に遼くんが来て、顔を合わせてしまって...

もうキャパオーバーだよ...!

2人は隣にいながらも目を伏せてしばらく顔を合わせられずに、どちらからとでもなく、再び、ゆっくりと、歩き出した。

遼「あ、あと15分で花火始まる。」

私「あ、もうそんな時間?」

待ち合わせが予定より早かったのに、もう1時間以上も経ってしまっていたのだと気づいた。


遼「俺、みんな知らない花火が見える秘密の場所知ってるんだ。そこで見よ!」

そう言って遼くんは私の手を握って歩き出した。

わ...!手繋いじゃった.....。

さりげなく握られた手には、どんどん熱がこもっていった。

たどり着いた場所は緩やかな斜面になっていて、屋台のある広い道からは少し離れているため明るくなく、とても空が見やすかった。

そして私たちは斜面に沿って腰掛けた。

私「どうしてこんな場所知ってたの?」

遼「小さい時、おじいちゃんがよく連れて来てくれてこの場から見てたんだ。」

私「そっか。遼くんのおじいさん詳しいんだね。」

遼「うん。若い時よくおばあちゃんと見に来てたんだって。」

私「へぇ〜。デートだったのかな?」

遼「うん。らしいよ。だから『お前もいつか大きくなったら大切な人と来るといい』とかなんとか言っt.....。」

言いかけて遼くんは途中で話を切った。

私も遼くんも2人して赤面した。

それって、私が大切な人ってことだよね...?

不本意だったと思うけれど、遼くんが私のことをちゃんと好きだと思っていることを知ることが出来て本当に嬉しかった。

私ばっかり遼くんを好きなんじゃないか、とたまに不安になる時があった。

今日も、会った時も返答が少しぶっきらぼうで機嫌が悪いのかな、とちょっと不安になっていたけれど...。

あれ?そう言えばあの時はどうしてあんな風に冷たかったんだろう?

私「あの、さっき、今日初めて会った時、どうしてちょっと冷たい反応だったの?」

ちょっと直球過ぎたかな?そんなつもり無かったかもしれないのに...。

遼「あ、あれは.......。」

冷たい態度だったのは確かなんだ...。なんだったのかな?

遼「え、言わなきゃだめ?ちょっと言い方が優しく無かったのは謝るから!」

私「えー!そこまで言われたら気になる!というか、私悪いことしちゃったのかな?って思う!!」

遼「あーまぁ確かに。あなたに原因があると言っても間違いじゃないかな。」

私「えっ!それどういうこと!?」

遼「えーっと、だから...その!あなたの浴衣姿が思ってた以上に可愛かったからっ!!」

遼くんは顔を赤くして叫ぶように言った。

!!?


想定外の答えで私の頭はパニックになるよりも、フリーズしてしまった。

今の遼くんの言葉が頭の中で何度もリフレインしている。

だが、私がとっさに思いついた返答は

私「そんなの、私だって!遼くんの浴衣すごく似合っててカッコイイと思ったよっ!!」

そう言われて、私も遼くんも一層頬を赤くした。

まるで対抗するかのように私も遼くんの浴衣姿を見て思った事を口走っていた。

違う方向に話が行ったような。そう思ったけど時すでに遅し。

お互いの浴衣姿を褒め合って赤面して、周りの人に見られていたらどれ程恥ずかしかっただろうか。

私から受けた言葉を聞いてさらに顔を赤くしていた遼くんは、私を見つめていた目を突然ぎゅっと閉じて顔を伏せ、そして ──────

遼「あぁ!もう!!ーーーっ!」










遼くんは顔をあげると、私が考える間も無く...














遼くんと私の距離はゼロになった ────。









私たちの上の方ではちょうど、大きな花火の音が鳴り響いていた。










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