第15話

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2019/04/11 15:03 更新
谷崎 桜
ねーねー、瞳ー。
栗原 瞳
ん?何?
谷崎 桜
私さ、女王になったじゃん?
谷崎 桜
だからさ、私を忘れないで。
....え?
谷崎 桜
もしかしたら、性格が歪んじゃうかもしれない。上に立つって、そういうのも伴うかもって思ったから...
谷崎 桜
だから、今の私を忘れないで。
谷崎 桜
もし、私が間違った方向に行ったら、連れ戻して「違うよ」って言って。
桜は真面目な顔で私を見つめた。
栗原 瞳
...うん。分かった。
谷崎 桜
約束だよ?
栗原 瞳
うん。
谷崎 桜
ふふっ。瞳になら、任せられるね!
桜はいつもと変わらない、綺麗な笑顔を見せた。























「約束」

それを、私は守らなかった。





変わってしまった桜を、連れ戻すどころか復讐心で押し潰した。



裏切られたんじゃない。


裏切ったんだ。




栗原 瞳
ははっ...私、最低だな。
笑い事ではないのに、何故か口角が歪んで笑ってしまう。


桜を裏切ってしまったことへの絶望よりも、最低最悪な私に失望したことの方が大きかった。



もう、あの時には戻れない。

全てが変わってしまった。



「もう一度」


なんて、そんなこと二度と思わない。







私は、この絶望と失望を抱えたまま暗闇で生きて不幸に死ぬ。


うん。それが良い。








─────────そう、思った時だった。



伏見さんが、私に抱き付いた。
栗原 瞳
...え?
伏見 由希
もう、戻ることもやり直すことも出来ないよ。
伏見 由希
でも、これから先はまだまだ長いんだ。
伏見 由希
前の道に戻れないんだったら、新しい道を切り開けば良いんだよ。
伏見 由希
だから、強く生きて?
伏見 由希
平穏に生きろとか、幸せに死ぬとか、そんなこと言わない。
伏見 由希
ただ、その時その時を大事に、卵を育てるように、過ごしていけば良いんだよ。
何故か、その言葉が心に「すとん」と入った。

偽善でも、綺麗事でも、凄い言葉でも、心打たれる言葉でも、何でもない、ただの言葉が、妙にしっくりきた。


それから、何故か急に、涙が溢れ始めた。
栗原 瞳
あ..れ...?
栗原 瞳
どう..して...
すると、伏見さんが私の肩をぽん、と叩いた。
伏見 由希
泣いちゃえ。思いっ切り。
伏見 由希
思いっ切り、すっきりしちゃえ。
伏見 由希
そうしたら、新しい道をたくさん切り開いちゃえ!
伏見さんは、笑った。

─────その笑顔はどこか、桜に似ていた。





















それから私が泣き崩れたことは、伏見さん以外誰も知らない。


泣き崩れたなんて、かっこ悪いから。

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