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第9話

9話
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2025/04/27 11:00 更新
 雑多のうごめく都会の空気は、相変わらず汚らしい。幼いころから抱えていた黒い穴は日に日に大きくなっている気がする。一度は埋まったと思ったのに、やっぱりダメだった。
 ふと、隣に男が立つ。やっと来たか。

 話す内容は、恵のこと。あいつの居ない今、俺は恵に名前の通りの人生を歩ませてやる自信がなかった。金も人間性も無い、人との繋がりなんてなお無い俺に取れる最前の策のはずだった。といるよりよっぽど幸せなはずだ。恵まれたお前には、素晴らしい居場所のばすだ。
 なにも分からないまま、いや、分からないフリをしたまま恵を売った。

 そうして離れていく背中に、ふと彼のことを思い出した。彼は今頃なにをしているのだろう。あの、家で、恵まれた者は幸福になれるはずのあの家で……
伏黒甚爾
おい
 声がもれた。振り向いた直毘人に、口が絡まる。あいつのことを、聞いたとして、こいつは答えるだろうか?
伏黒甚爾
あいつは……あなたは、どうしてる?
禪院直毘人
あなた、あなた……あぁ、アレか。さぁな、生きてはいるぞ
 まるで興味のない声だった。
伏黒甚爾
……そうか
 昔はあいつのこともよく思い出したが、最近は存在すら忘れていた。与えられた温度も優しさも思い出せない。ただ一つ気がついたことがある。それは、あいつは、あいつも、自分のことしか考えていなかったということだ。
 どこまでも献身的な彼の実態は人間だったのだ。ガキの頃は思いもしなかったが、成長するについて分かっていった。あの日、俺に言った言葉は俺のためではなくて自分のためだったのだろう。それで構わない。今思えばあいつだってガキだったんだ。ガキとガキが肌を寄せて、暖まっていた、だけなんだ。

 そういや、あいつにお前が羨ましいと言われたことがある。自由に外を走れるお前が羨ましい、と。その時は毎日いいもん食ってるお前が何を言うのかと思ったが、実際に今俺は自由だ。あの家を出て、好きなように生きた。あいつがそう思うのも当然だ。きっとあいつは、まだ、あの暗くしめった部屋の真ん中でナニカを眺めているのだろう。

 まぁ俺には、もうどうでもいいことだ。
あとがき
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お終い!!!

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